Dream in Dream

15Blooming hill

「……着いた、っと」

軽やかにペガサスから降り、はい、と手を差し伸べてくれるアレクさま。いちいち格好良いなぁ。

「……っ!ここ、」

「お城の裏庭。綺麗でしょ?」

「……はいっ……」

まるで、私たちが初めて出逢ったあの花畑のように、そこにはパステルカラーの色が見渡す限り咲き誇っていた。


二人とも座り込んだところで、アレクさまがふいに口を開いた。

「……ここも、僕達が出逢ったあの丘も、最初は花なんて一輪すら咲いてなかったんだ」

「え……?」

「この世界は夢から出来てる、って聞いたでしょ?
……一時期、『悪夢』の影響が強かった時があったんだ。君たちの世界でいう異常気象、みたいなものかな。
それで、この世界は今とは比べ物にならないくらい荒廃していたんだ。

……そこに、君が現れた」

「……えっ、わ、私?」

申し訳ないけれど、……全く思い出せない……

アレクさまはそんな私を見て優しく頷くと、話を続けた。

「実はね、君のお父さんとお母さんは、同時にこの世界に来て出逢ったんだ。婚礼の儀の時にね。
それで、君が生まれて数年後に、お母さんと君がこの世界に来た。お母さんが、挨拶するためって。ただ、君が混乱するといけないから、記憶は消したらしいけどね」

「そうだったんだ……」

「うん。

当時、僕は暗い世界の中、毎日落ち込みながら過ごしてた。
……けど、父上に連れられて君のお母さんと君に会って、ここ、裏庭に来たんだ。僕達が遊んでいられるようにって。

……その時、落ち込んだ僕を見て、君が―――――




『……どうしてそんなにかなしそうなの?』

『……だって、こんなにくらいし、つまらないし……』

『じゃあ、わたしがおもしろいものみせてあげる!』

そう言ってその少女は、おもむろに地面に手をついた。

『おはなさーん、おはなさーん、あさですよー。』

次の瞬間、目を疑うような光景が目の前に広がった。

『……っわぁ……!』

何と、何も無かった大地から芽が出て、それがみるみる育ち、美しい花を咲かせたのだ。……しかも、辺り一面に。

『げんき、でた?』

『うん!』

『ふふー、よかった!』

そう無邪気に笑い駆けていく少女を、少年は呼び止め―――――






「……これ、」

そう話しながら、アレクさまに手渡されたそれは。

「……っ、ありがとう」

あの時のような花冠だった。


思い出した。

それから、アレクさまは、こう言ってくれたんだっけ。

「―――いつか迎えに来るよ、ってね。遅くなっちゃってごめんね。逢いたかった」

そう言って、花冠を頭に乗せられる。

「……やっぱり君は、僕のお姫様だ。

あの頃の僕は、ただ悲しむことしか出来なかった。
けどね、君を護れるように、……傍にいてもらえるように、強くなったんだ。ほら」

「!わぁっ」

またしても、ふわりと抱き上げられた。
急だったので落ちそうになってしまい、思わずアレクさまに抱きついてしまう。

「……カノンってば、大胆だなぁ」

「〜〜〜っ!!!ちが、違いますっ、これは、その、ふー、不可抗力!ですからっ!」

「!っ危ない」

顔を赤くしてじたばたして落ちそうになり―――

―――今度はぎゅっと抱きしめられた。


「……怪我は、無い?」

「………………は、い」

「……そう。よかった……」

「……あ、の……」

「もうちょっと、このままでいさせて」

「……」


返事は、出来なかった。

あまりに心臓が早鐘を打つから、息が詰まって、声なんか出やしなかった。
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