Dream in Dream

03Encounter

「……ちゃん!かのこちゃん!」

「……!ふーちゃん!」

見ると、ふーちゃんが花畑の中を走ってきていた。
ふーちゃんは真紅の薔薇のようなドレスに身を包み、ドレスと靴以外何も着けていない私とは違い、二の腕まであるシルクの手袋、頭には薔薇のコサージュをあしらっていた。
トレードマークのツインテールは普段より高めの位置で結ばれ、毛先がくるんと巻かれている。

「……なんか、ふーちゃん、似合ってる」

「そう?かのこちゃんも、なんだかお姫様みたいだよ」

「ええっ、そうかな?ドレスに着られてる気がするんだけど……」

「そんなことないよ。自信もって、ほらしゃきっと!」

折角綺麗なドレスを着ているんだから、と背筋を伸ばされる。

「そういえば、ふーちゃん大丈夫だった?」

「うん。気がついたらここにいて、そしたら、その……」

「ん?」

「……めちゃくちゃかっこいい人が来て、その……」

……まさか、ふーちゃんもあの人に会ったのかな。

「……それって、金髪の人?」

「えっ?違う違う、なんか……深ーい青?ていうか、紺?の髪だったよ」

「あれっ?」

「かのこちゃんは、その金髪のかっこいい人と会ったの?」

「うぇ!?……う、うん」

『僕の、お姫様』

あの甘い声と抱きしめられた感触が頭に蘇り、自然と顔に熱が集まる。

「ふーん……まあそれで、その人はお付の人?に連れ去られてたよ」

「……ふーちゃんなんでそんなにやにやしてるの」

「えー?してないしてない」



……そういえば相手がふーちゃんだからかいろいろ話してるけど、

……私たち、ピンチだよね?


「なんか夢みたいな状況だけど、……大丈夫かなぁ。食べ物とかいろいろ」

「確かに。……なんかここ、綺麗だけど、いつまでも夜にならなさそう、っていうか……」

そう、ふーちゃんの言うとおり、何だか時間が全く進まなそうなんだよね、あまりに綺麗すぎて……

と二人でいろいろ考えていると。

「……ふーちゃん、あれ」

「……うわぁ」

まるでシンデレラか誰かが乗っているような可愛らしい馬車が、こちらに向かって走ってくる。

私たちの前に止まると、誰かが降りてきた。

「お迎えに上がるのが遅くなって申し訳ありません。」

そう言ってその人は綺麗にお辞儀をした。

「あっ、いえ!全然大丈夫です、その、」

初対面の人にさっきからすごい丁寧な扱いを受けて、しどろもどろになってしまう。

「お気遣い病みいります。……詳しい説明は馬車の中で致します。どうぞ、お乗りください」

そう言われ、私たちは馬車に乗ることにした。
お姫様のように、ドレスの裾をふわりと持ち上げる。

ふかふかのクッションに感動していると、その人が口を開いた。

「申し遅れました。わたくし、お二人のご案内係兼使用人長、ステイシーです」

「あ、えと、かのこです」

「風香です」

ステイシーさんに倣い、私たちも名乗りぺこりとお辞儀をした。

ステイシーさんは、長い髪をきっちりお団子にまとめ、菫の飾りを着けている。
黒の眼鏡はきりっとして見えるけど、その奥の瞳は柔和な光を湛えている。

柔らかいスミレ色のドレスに、白い丸襟と白いカフス、白の長いフリルエプロン。なんか、

「メイドさんみたい、と思いましたか?」

「っ、どうしてわかったんですか!?」

「貴方がわかりやすいから……でもなければ声に出ていた訳でもありません。」

「また、」

まるで心を読まれているかのように、ぴたりと全てを言い当てられる。

「ふふ。……驚くかもしれませんが、私たちは貴方の―――正確には、あなた方の夢の中の住人、だからですよ」

「……夢の中の、住人……?」


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