ノックスの物語 - 01

01.少年

私の住む街には、身寄りのない子供を引き取り成人するまで面倒を見る施設がある。
この街に住む人たちは皆優しくて、そんな子供たちを世話する施設への寄付や食べ物の支援にとても協力的だ。
引き取られそこで育てられた子供たちも成人を迎えるとそれぞれ自分の道を歩み出し、また恩返しと言って施設への支援を惜しまない者が多い。
悪事がない、という訳ではないが大半を締める人が親切で皆が支え合って生きている街だ。

それに反して、魔物や獣人に対する風当たりは非常…いや、異常とも言えるほど強かった。
そんな傾向もあって魔物討伐に対する意識は高くより確かに仕留める為の知識も豊富だった。
ハンターの街、と外の人々からは呼ばれているとも聞いた。

そういう経緯もあって、施設に引き取られる子供の多くは魔物の被害にあった子が多く、魔物に対する恨みを持つ子が大半でこれまた上手いこと歯車が回るのだ。そうしてこの街は形成されている。
そういう街だった。

私はその施設に常駐し子供の世話をしている1人で、私もまた…魔物に親を殺された身だ。でも、街の人程魔物への恨みはない。結果として私は悪魔の様な両親から救われたのだから。
しかし、そんな事は口が裂けても言葉にはできない。魔物恨んで然るべし。魔物を擁護しようものなら途端に掌を返し異端者として扱われる。そういう街なのだ。

「今日、1人新しい子が入る。君に任せていいかな。」
「ええ、もちろんです。到着したら私の部屋までお願いします」

今日討伐へと出かけた男性が帰ってきて開口一番伝えてきた言葉だ。
今度はどんな子が来るのか楽しみと同時に多少の不安を覚えた。

しばらくしてやってきた子は平然を装っていた。着ている衣類はボロボロで見窄らしい姿ではあったが、自ら名乗り挨拶をし、一刻も早く男たちから離れたいという意志さえ見えた。

ノックス、そう名乗った少年の目には底知れぬ怒りの色が見えた。




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