平和に行きましょう。

いち


 顔のせいか、口調のせいか、幼い頃からサラは誤解されてきた。
 それなりにのんびり屋で、外で遊ぶのも好きだが本を読むのも好き。大抵は周りに合わしているけど時々は1人で過ごしたい。そんな風に、疎まれない程度にマイペースにいると、いつの間にか周囲からは「何を考えているか掴めない」「無口でちょっと無愛想」なんて不本意極まりないイメージを付けられていた。


 最近、ハモニカタウンの近くで牧場を経営していた爺さんが引退して息子夫婦の元へ引っ越したらしい。オセの記憶が正しければラクシャよりも高齢のはずだから、下手に体を壊すよりは引き際を察して引退して余生を過ごすのはある意味納得だった。1人でいるよりも家族で過ごす方が良いのは当たり前だ。だが豪快で酒好きの爺さんがいなくなるということは、酒場がまた少し寂しくなるんだろう。親交が深い訳ではなかったが、そう思うと残念ではあった。

「祖父の牧場を継ぐことになりました。これからよろしくお願いします」
 お辞儀をすると、小さな体がより小さくなる。赤いリボンが揺れて、纏まめられたポニーテールがするりと背中から肩へと零れていく。
 女性と呼ぶべきか、女の子と呼ぶべきか。挨拶にきた爺さんの跡継ぎはまさかの孫娘であった。前の牧場主だった頑健な爺さんが管理していたあの土地を、こんなか弱そうな子がどうこう出来るのかと不安が過ぎる。パッと見は、細っこ過ぎてハンマー1つに振り回されそうな雰囲気だ。いや、毎日ハンマーを振るっているオセが比べるべきではないが。

































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