平和に行きましょう。

よん


 クラリネット地区で牧場を営んでいたお爺さんが引退して、その孫にあたる人が跡を継ぐらしい。タオが聞いた噂はそんな風にちょっとあやふやで、「あぁあそこの」と家族や街の人との軽い世間話になるくらいの内容だった。気になるなら町長やその息子に聞けばもっと詳しく分かったのだろうが、直接その牧場主だった人と関わりがある訳でなかったタオにそこまで突っ込む気はなかったし、言葉にすると薄情だが、顔の知らぬ誰かよりも目の前で漁獲量の減る海や水量に変化が起こった川の方が余程重大だった。
 なので、ここ最近の日課となっていた水車の様子見兼釣りをしていた時、その人と出会ってやや驚いたものだった。
 思っていたよりも結構小柄で、更に言うと女性。記憶の中にいた前のお爺さんはどちらかというと牧場より鉱山にいそうな体格で、その孫というからにはてっきり屈強な男の人なのだろうと偏見があった。
 





































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