平和に行きましょう。

いち


 珊瑚色の柔らかな髪の毛に鼻先を埋め、スンと鳴らす。弟たちとも誰とも異なる甘い香りがして、そのまま頬を擦り寄せれば温かくて心地よい体温に瞼が重くなっていく。
「なぁ主はん。今日一緒のお布団で寝ません?」
「明日が命日になる覚悟があるなら、いいんじゃない」
「ひどいわぁ」
 下から聞こえる無情な言葉に、心あたりが脳裏を過ぎって萎える。この小さくはないが幼い主に普段ぴったりくっ付いているへし切長谷部に現場を見られた日には、幾ばくかの資材にすらならない状態にされることはありありと想像できた。名前の通りにへし切られた挙句、刀解もされずに焼却炉でゴミクズ同然に溶かされるに違いない。
「庇ってくれへんのですか」
「庇ったら余計拗れるから」
 


 


































prev next
Back to main nobel