"いつまでもへこんでんじゃねーよ"
(そうだよね…落ち込むのは知った後からでも出来る。)
(今やるべきことは一つ。お茶子ちゃんに確かめなきゃ…)
爆豪さんのお茶づけを堪能した後。
私は彼の喝に後押しされて、スマートフォンの電源を入れた。
電話マークのアイコンをタッチする。
メッセージアプリを使ってもいいんだけど、なんとなく電話の方がこういうのはいいかな、って思って。
(もう、流石に終わってるよね…?)
時間を見れば夜の11時。
(これで電話に出なかったら流石に不安になるけれど…。)
私は変な緊張に支配されながらもコールボタンを押した。
PRRR...PRRR...PRRR....
ピッ!
"もしもし咲子ちゃん?どしたん?電話なんて初めてやね"
(よかった、出てくれた…。)
どうやらもう轟くんとのご飯は終わったらしい。
私は安堵に包まれながらお茶子ちゃんにばれないようこっそりとため息をついた。
"こんばんわ、お茶子ちゃん。ごめんね、遅い時間に…。"
"いいんよ!私も今咲子ちゃんに話したいことがあったから…"
"そうなんだ…"
お茶子ちゃんの明るい声に、何故だか胸がキュッと苦しくなる。
お茶子ちゃん、私のこと友達として本当に大事にしてくれてるのに…。
私ってば自分の事ばっかりだ。
"それで…あの、お茶子ちゃん、今度相談したいことがあるんだけどいつか空いてないかな"
"えっ相談?いいよいいよ!私も丁度咲子ちゃんに相談したことあったし!…はっ!もしかして、恋バナだったりする!?"
"……うん。"
膝にのせていた拳を少し強く握る。
もしかしたら、お茶子ちゃんとは恋の敵になっちゃうかもしれない。
…それでも、
"私、好きな人がいて…お茶子ちゃんに相談に乗ってもらいたいんだ。"
そう、静かに言い切った途端、私のモヤモヤしていた心に風が吹いたような。
そんなすっきりとした感覚に襲われた。
(言っちゃった……!)
ばくばくと暴れる心臓に手をやって、お茶子ちゃんの返事を待つ。
"えっそうなん!?うちも〜!じゃあ今度カフェ行かん?新しいとこ!"
"うん、分かった。駅前のあそこだよね?"
"そう!はぁ〜〜今からめっちゃ楽しみ!"
"…私も。ごめん、用件これだけなんだ。"
"はい!了解!じゃあ詳しい日程とかはまた相談するね"
プツッ!ツーツーツー…
お茶子ちゃんの声を最後に電話は終了した。
私はそのままベッドにごろりと横になる。
(言っちゃった。)
『…はぁ〜〜〜〜…』
ため息を吐けばほんのわずかに目元が熱くなる。
(やばい、泣いちゃいそう…。)
友だちを失いたくない。
けれど轟さんのこともあきらめたくない。
もしかしたら両方失うことにだってなるかも…。
『そんなの絶対やだよ…。』
そんな、そんな恐ろしいことを想像したらやっぱり涙が出てしまって。
私ははぁ、とため息をついてクッションに顔を埋める。
こんなとき…こんな時、どうしたら元気になれるんだろう…。
『あれっ、』
ふ、と何気なく机の上に置いた土鍋に目をやった時、それには目に入り込んできた。
土鍋の側面に小さなメモみたいなのが貼りついている。
私はなんだろう、と思いつつそれを開けてみることにした。
『……"泣くのは結果の後にしろ"?』
(………これ、もしかしなくても、爆豪さんが書いてくれたのかな。)
『……ありがとう…。ヒーロー。』
そう呟いて、小さなメモに顔を埋める。
私は、こういう爆豪さんの言葉が、少しずつ自分の勇気になっていく気がしたんだ。