「はぁー…それにしても…咲子ちゃんの好きな男の子が轟くんやったなんて…」
『…っ、』
注文したカフェオレを口にしてふぅ、と幸せそうにため息を吐くお茶子ちゃん。
私はいたたまれなくなって誤魔化すようにカップに口を付けた。
(………バラしちゃった。)
私の一番大事な秘密。
一番大切で、奥にしまっておきたかった秘密。
けれどこうしてお茶子ちゃんに打ち明けたことで幸せな気持ちにもなっているのはどうしてだろう…。
注文したココアは思ってた以上に本格的なもので、少しだけほろ苦かった。
けれどどこか甘いと感じてしまう。
(幸せ、だなぁ…)
ふわふわしてあったかくてドキドキした気持ち。
決して熱に浮かされているわけではないけれど、今ならなんだって出来ちゃいそうなくらい。
それくらい今の私は嬉しさと多幸感に包まれていた。
「ーーねね、どういうとこが好きなん?」
『えぇっ…!?』
ちょいちょい、と手招きするような仕草をするお茶子ちゃんに思わずびっくりしてしまう。
どういうところが好き、なんて。
口にするのも恥ずかしいのに…。
私は大学でのことを思い出していた。
『ちょ、ちょっと天然だけど…私の言う話を優しい目で聞いてくれたりする…安心感?みたいなのがあるところかなぁ…』
「ほほぉ〜…」
好きになった瞬間は間違いなく仲直りしたあの時。
けれど、それからというものの轟さんの何から何まで素敵に見えてしまって。
顔や、声や仕草。話していた時の内容を思い出すだけでも火が出そうなくらいに熱い。
最近は私がバイトを始めたり轟さんの夜勤があったりしてなかなか会えなくて。
そう言う寂しさみたいなものもこの思いに拍車をかけているのだろうか。
『なんか、恥ずかしい…』
(恋って、こういうものなんだなぁ…)
恥ずかしくて、熱くて、最高に幸せだけどどこか切ない…。
全部、全部轟さんへの私の気持ちなんだ。
「分かるわ…私も好きな人おるもん!」
『あっ!そうだよ…お茶子ちゃんの好きな人って誰…!?』
持っていたカップが揺れる。
(そうだよ…私てっきり轟さんかと…)
そう言いたいのが伝わったのか、お茶子ちゃんはごそごそとポケットからスマートフォンを取り出した。
「ちょっと待っててね」と言いながらとすとすと指で操作するお茶子ちゃん。
「この人が一応私の好きな人なんやけど…」
『へぇ…なんだかお茶子ちゃんに似てるかも!』
「ほんと?!」
緑色に近い黒髪の人。
大きな目とか、笑った顔のくしゃっと具合が似てるかもしれない。
そう言えば本人はとても嬉しそうにスマホをぎゅっと抱きしめて。
「そんなん初めて言われたわ…」
『うふふ、』
お茶子ちゃん嬉しそう。
私もなんだか嬉しくなって笑いをこぼした。
『その人もヒーローなんだ?』
「うん…"デク"っていうんやけど…」
『"デク"…!?』
その名前を聞いて、思わずガタンと立ち上がる。
(確か、その人は…!)
「んふふ…デクくんも轟くんと仲良しなんよ。轟くんから聞いてた?」
『…うん。』
恥ずかしい…。
こんなに過剰に反応して…。
にやにやとこちらを楽しそうにみるお茶子ちゃんの視線に更に羞恥が募る。
私は残ったカップを一気に煽り顔の火照りを誤魔化した。