「轟くん、なににする?」
「冷たい蕎麦。」
今日は緑谷とサシで飯を食いに来た。
俺としては園生の作った晩飯が食いたかったんだが、
園生曰く「ウラビティ…お茶子ちゃんとお茶しに行くんです!」とのことで。
(いつの間にあの二人は仲良くなったんだ…?)
気になることは多いが麗日なら口も堅いし、もし話の流れで園生の隣人が俺だとバレても変なことは言わないだろう。
この間話したことはあの場にいた三人だけの話だ。
「そう言えばさ、隣の人とはどこまでいったの?」
「どこまで?」
「いや、あの…進展、というか…最近こういう事を話した…とか!」
あくせくと慌てた様子の緑谷の問いにふと考える。
そう言えば最近は園生がバイトを始めたり俺が夜勤だったりして会えてないな…。
「最近は会えてないな…」
「そっかぁ寂しいね…」
「あぁ、寂しい。」
寂しい。
その一言で胸に穴が開いたような気分だった。
園生は今頃何をしているんだろう、と考え出すと少しだけ落ち着かなくなる。
ーーー前まではこんなことは無かったのに。
「その子に一度会ってみたいなぁ」
「今度会わせてやるよ、似てるんだ。お前に。」
誰かの為に一生懸命になるところとか、
俺を救ってくれたところとか。
挙げればキリがねぇくらい。本当に似てる。
そう言えば少しだけ緑谷は照れて「会うのが楽しみだなぁ」と笑った。
「じゃあ僕みたいに地元に勝っちゃんみたいな幼馴染がいるかもしれないね。」
「!!!」
(爆豪…か。)
緑谷の何気ない言葉に、爆豪の姿を思い出す。
そう言えば、あの時園生は爆豪に聞いたと言っていた。
あの時の俺はそれが衝撃的で。
爆豪に"園生には手を出すな"、と衝動的に言ってしまった。
"随分入れ込んでんだな、お前"
…あの時、否定も肯定もできなかったが今なら言える。
(俺は園生の事が……。)
笑った顔も、少し困ったように起こるところも、慌てると独り言が多くなるところも。
全部、全部ーーー。
「緑谷……」
「ん?」
「俺は…園生が好きだ。」
「……うん。」
俺の独り言に近い感情の吐露を、緑屋がゆったりと聞いてくれる。
それが、俺にとっては何よりもありがたくて。
「きっと、会った瞬間から好きだったんだと思う…。」
「そっか。」
"園生咲子って!言います!"
あの時から、園生の事が眩しくて。何気なく話す会話も楽しくて。
園生と初めて触れ合った時はすげぇ緊張したし、涙を見た時はひどく胸が切なかった。
きっと、あの時からもうーーー
(爆豪は、好きになったりなんかしねぇよな…?)
"なんもしねぇーわ。あんなモブ女なんか"
そう、アイツは言っていた。
(ーーーーだが、)
嫌な予感がして仕方がない。
(爆豪は、園生をどう思っているんだ…?)
「ーーー緑谷、お前隣に越してきたのがめちゃくちゃいい奴で、笑うと可愛くて、怒ったところも可愛くて、泣いたところを見ると切なくなるような女だったらどうする。」
「ど、どうって…」
「好きになるか?」
「す…!?う、うーん…分からないけれど…。」
「守ってあげたいな、とは!思うよね、ヒーローだし!」
(ヒーロー、か…)
爆豪にとって、園生もそんな存在なのだろうか。
もし、そうでない場合…はたまた自分と同じような感情を彼女に抱いていたら…。
(園生……。)
轟焦凍は胸に広がるどろりとした感情をやり過ごせないでいた。