お茶子ちゃんと話し終わった後、私は家路についた。
(楽しかったなぁ…)
最初はどうなるかと思ったけれど、お茶子ちゃんときちんと話せてよかった。
(これもみんな爆豪さんのおかげだよね)
ムスっとした隣人の顔を思い出してくすりと笑顔をこぼす。
エレベーターで目的の階まで昇って、自分の部屋に入ろうとした、その時。
ドアノブに手をかける明るい金髪の彼と目があった。
お隣の爆豪さんも今帰宅したらしい。
『あっ爆豪さん!』
「チッ…」
私の存在に気がついた爆豪さん舌打ちをする。
それにしてもこの人とはよく会うなぁ…
「テメこんな時間までどこ行ってたんだよ」
『この間話した友達の所です』
"こんな時間まで"、って言ってもまだ九時前。
なんだか爆豪さんはうちのお父さんみたいだ。
「友達だぁ?」
『誤解も解けて、サッパリしました!爆豪さんありがとう!』
がばっと頭を下げれば少し迷惑そうな顔をする彼。
それでも私はこのタイミングで彼に会えてよかった。
(そうだ…お茶碗!)
『爆豪さん、ちょっと待ってて!』
「あ?」
そう言って、一旦家に入る。
そして爆豪さんからお借りしていたお茶碗を携えてもう一度彼の前に出た。
『これ、ありがとうございました!お茶漬け美味しかったです』
「そーかよ」
そう言って両手でそっと差し出せば、お茶碗はするりと攫われる。
感謝の意を込めて笑顔でお礼を言えば粗雑な返事が返ってきた。
(うん、普通に話せてる。)
見た目とか、言葉遣いは怖いけどやっぱり普通の人なんだな、なんて。
そんな失礼なことを頭の中で考えていたらこちらをじ、と見つめる爆豪さんの視線に気がついた。
『?』
「…………」
何か言いたそうな顔をしながらずっと黙ってる。
私はどうしたらいいか分からなくて、口を閉じていることにした。
「お前の…」
『はい?』
「お前の言ってた、好きな奴ってーーー」
「何してるんだ?」
すると、そこへ第三者の声が降ってきた。
(この、声はーーー)
声の主を確かめるように、くるりと振り返る。
『とどろき、さん…』
「お前…」
そこには眉間にしわを寄せ、怒気を漂わせた轟さんがいた。