「咲子ちゃん平気?今日めっちゃ顔色悪そうやわー…」
『大丈夫大丈夫!"サキコちゃん"に手伝ってもらってるからちょっと疲れてるだけだよ。』
「サキコちゃん…?」
『"こんにちわ、お茶子さん"』
私はお客として来ていたお茶子ちゃんと話しながらバイトに勤しんでいた。
その日は何故か忙しくて。
急遽店長に私と同じ制服を用意してもらいサキコちゃんに手伝ってもらうことになった。
「はえー…咲子ちゃんが二人おる…」
『急にごめんね…』
『"いえ、こういう時こそ頼ってください!"』
えへん!と力こぶを見せる自分の姿はとてもシュールだけど、こういう時はありがたいな。
「咲子ちゃんとサキコちゃん、悪いけどちょっとこっち手伝ってくれないかい?」
『『"はーい!"』』
とてとてとカウンターに歩いていく自分の背中を見て、私は昨日のことを思い出していた。
(轟さんのこころが知りたい…。)
昨日の晩、私はまた何かしてしまったのだろうか…。
(昨日は爆豪さんとばったり会って…普通に話してたら一瞬変な空気になって…それから…)
そう、それからだ。轟さんがああなってしまったのは。
"悪い、今夜のことは忘れてくれ…"
轟さんのあんな顔、初めて見たかも…。
左側の顔に炎を纏った彼。あれが彼の個性なんだろうか。
怒りをむき出しにして、爆豪さんに詰め寄ろうとして。
私はそれで彼の背中に抱き着いてーーーー
『えっ』
「?どうかしたん?咲子ちゃん」
『べ、べべべべつに!!』
「?」
『はぁあぁぁぁ〜……』
そうだ。私忘れてたけどあの日轟さんに抱き着いちゃったんだ…!!!
(恥ずかしい…!!)
私はトレーで頭を隠しながら盛大な溜息を吐いた。
なんてことをしてしまったんだろう。
もしかして私が轟さんのこと好きだってバレちゃってないかな…?
と、というかあんなとこ見られちゃったし爆豪さんにもバレちゃってるかも…!!
(もう…今度二人にどんな顔して会えばいいんだろう…)
私は再び盛大な溜息をついた。
(だ、だってあの時の轟さん、どこかへ行っちゃうような気がしたから…!!)
(どこにも行ってほしくなくて、そばにいてほしくって…。)
(それで…。)
それであんなことをしてしまったのか…と、ふと我に返る。
なんていうか…後先を考えない性格してるよなぁ私って…。
『はぁ…』
『"元気出して下さい、何かあったんですか?"』
『あー…ううん、大丈夫!相談するまでもないよ』
『"…だったらいいんですけど"』
いけない。サキコちゃんに心配させてしまっている。
私は無理に笑顔を作ってホールへと戻った。
「咲子ちゃん大丈夫かい?何か心配事があるなら僕でも…」
『あーいえ!大丈夫です店長』
こんなに周りに心配かけてしまっておいて、「実は好きな人のことで悩んでるんです」なんて恥ずかしいこと言えない。
私はにへら、と笑って見せた。
「相談ならうちでよかったら聞くよ!」
『ありがとうお茶子ちゃん…』
(今度またお茶子ちゃんに相談してもらおうかな…)
任せて、と胸を張る友人にくすりと笑う。
こういう、ヒーローなのにヒーローっぽくないところ、お茶子ちゃんの長所だな。
そんなこと、本人に行ったら傷ついてしまいそうだから言えないけれど。
「ーーというかさ、咲子ちゃん気を付けないかんよ?」
『えっ?何に?』
「ス ト ー カ ー!最近女の子狙った事件めっちゃ多いんよ…」
『そうなんだ…』
お茶子ちゃんの声にへぇ、と答えれば「咲子ちゃんぽやぽやしとるから本当に心配やわ」とため息をつかれてしまって。
『大丈夫だよ。そんなの私みたいなのじゃなくて美人さんとかがなるやつでしょ?』
「だ か ら心配しとんの!」
『ふふ、ありがとうねお茶子ちゃん。』
私はそう言ってお茶子ちゃんに笑顔を見せた。
ーーー私はこの時のことを今でも後悔している。