気持ち悪いメモを貰ってしまった日の夜。
私はお茶子ちゃんを家に呼んで今までの事や、今日の事を説明した。
「それは…完全にストーカーやと思う。』
「だよね…。」
お茶子ちゃんの声に、思わずマグカップをきゅっと握りしめる。
私は下を俯いて琥珀色の紅茶に映る自分の顔を見つめていた。
誰かに帰り道を追いかけられたり、気持ちの悪いメモを貰ったり…。
(なんでこんなことになっちゃったんだろう…。)
『一体だれがこんなこと…私誰かに恨まれちゃうようなことしたかな…』
「それはちゃうと思うよ?メモに"好き"ってあったし…これは怨恨というより歪んだ恋愛感情のものやと思う」
『恋愛感情…?』
お茶子ちゃんの言葉をゆっくりと復唱すれば、彼女はコクリと頷いた。
『最近咲子ちゃんに声かけてきた人とかおらんかった?大学とか…』
「大学でそんな人はいないけれど…」
ふと思い出したのは今日声をかけてきたお客さん。
けれどきちんと(?)話したのは今日が初めてだったし、悪そうな人には見えなかったけれど…。
うーん、と考え込む私。するとお茶子ちゃんが「っちゅーか!」と声を荒げた。
「なんで私に頼ってくれなかったん…!?これでも私ヒーローやよ!?」
『ご、ごめんね…』
むぅ、と小さく頬を膨らませるお茶子ちゃんに私は小さく謝罪をする。
『最近はラストまでバイトは入れないようにしているし、それに遅い時は轟さんが迎えに来てくれることになったから…。』
今日はたまたま轟さんが撮影の仕事がある日だったからサキコちゃんと帰ったけれど、
私が誰かに追いかけられた、あの日以来。
轟さんは「仕事が早く終わった」とか「今日は日勤だった」とか言ってなんだかんだ毎回お迎えに来てくれて。
轟さんが撮影やヒーローのお仕事がない時は迎えに来てもらっている。
(私としては嬉しいけれど…なんか毎回申し訳ないって言うか…。)
そんなことをぼんやりと考えていたらお茶子ちゃんが何やら顔を真っ赤にしながらプルプルとしていた。
『?どうしたの?』
「と、轟くんてやっぱ不器用なんやな…って」
『えっなんで?』
お茶子ちゃんが照れている意味も「不器用」という意味も分からず、困っていると「鈍感さんなんやから…」と笑われてしまった。
「それにしても、本当最近こういう事件多いわ…敵…っていう訳でもないんやろうけど…」
ふぅ、と小さく溜息をつくお茶子ちゃん。その瞳はやるせなさそうな憂いを帯びていた。
『ほんまに気を付けてね…うち心配やわ…』
「ありがとう、お茶子ちゃん…。」
私は眉を下げるお茶子ちゃんにお礼を言って、ニコリと微笑んだ。
***
「ーーー園生、麗日。」
「あっ、轟くん。」
『あ…』
これから夜勤だと言うお茶子ちゃんと玄関で別れようとしたら。少し疲れた様子の轟さんとばったり遭遇した。
どうやら撮影のお仕事から帰ってきたみたいだ。
「久しぶりだな麗日。」
「うん。一か月ぶりくらいやね。」
「園生の家にいたのか?」
「うん…いまちょっと咲子ちゃんから…」
『わー!わー!!』
ひそひそ、と声を小さくして今日の事を話そうとするお茶子ちゃんを見て、思わず変な声が出てしまった。
そんな私を見て轟さんは不思議そうな顔を浮かべる。
私はちょっと来て!とお茶子ちゃんを呼び、ひそひそ声で小さく文句を言った。
『(駄目だよお茶子ちゃん、今日のことは内緒にして…?)』
「(ええっ!?なんで!?轟くんに話せば楽になるかもしれんよ…?)」
『(……で、でも駄目!)』
なんとなく、今日のことは轟さんにも爆豪さんにも知られたくない。
私はお願い!と両手を合わせて彼女にお願いした。
「(うーん…しょうないなぁ…)」
『(ありがとう!お茶子ちゃん…!)』
「(た だ し !)」
『(え…っ)』
ふっふっふー!と嫌な笑みを浮かべたお茶子ちゃんに呆気に取られていたら。
お茶子ちゃんはとんでもない事を言い出した。
「轟くん、今から咲子ちゃんコンビニ行くって言っとるんやけど…遅いし付いて行ってやってくれんかなぁ?」
「いいぞ。」
(ええーーーーーーーー!!!?)
『(な、な…!)』
「(夜の街をぷらぷら〜っとデートでもしてくれば?轟くんもおるし安心やん?)」
『(で、でも…)』
お茶子ちゃんの甘い誘惑とニヤニヤ顔に思わず私の顔に熱が集中する。
「園生?」
『ひゃい!』
「なんだ、いかないのか?」
こてん、と首を傾げる轟さんの顔に益々熱が集中する。
私は隣でお茶子ちゃんがニヤニヤとしているのを感じながらか細い小さな声で「い、きます…」と返事をするのだった。