「咲子ちゃん、元気でね。」
『はい、お世話になりました!』
入院からニ週間後。
私は今日を以ってここの病院を退院することになった。
(治癒系の個性ってやっぱすごいなー…傷跡は残っちゃったけど。)
鎖骨からお臍あたりにまであった大きな切り傷は先生の個性で回復し、元通りとなった。
ちょいちょい、と服の上からつついてみても全然痛みはない。
私は"面白いなぁ…"なんて思っていたんだけど、そんな様子を見ていた看護師さんは少し悲し気に目を伏せた。
「傷跡…残っちゃったわね。」
『はは…まぁでも見せる相手もいないので、大丈夫ですよ!』
病室内の空気を明るくしようと、そんな冗談を言ってみる。
すると看護師さんは少しだけ目を丸くさせて「あら、」と声を漏らした。
「あの人、咲子ちゃんの彼氏さんじゃないの?髪がさらさらしてる…」
『…あー。』
すでに同じ質問を何人かの看護師さんたちにされたことがある。
なので私は目の前の看護師さんの言わんとしている人物が誰のことなのか分かってしまった。
看護師さん達の言う"あの人"とは轟くんのことなんだろう。
(違う看護師さんは、轟くんと同じように何度かお見舞いに来てくれた爆豪さんを"そう"だと思っていたらしいけどね。)
そんなことを思い出し、思わず苦笑してしまう。
私は苦笑いを浮かべたまま、轟くんのことを簡単に説明しようと試みた。
『彼は借りている部屋がお隣で…事件の時、一緒にいたから心配してくれてるだけなんです。』
「そうだったの?…でも迎えに来てくれるなんて優しい人よね。」
『えっ…?』
看護師さんの言葉に思わず反応する。
"迎え"…?何の事だろう。
「彼、昨日"園生咲子はいつ頃退院ですか"って聞きに来てたから、きっと迎えに来てくれるわよ。……あ、噂をすれば、ほら。」
『えっ…!』
私から視線を少しだけずらすと、看護師さんの顔つきがにやにやとしたものに変わった。
それにつられて振り向けばーーー。
「咲子、」
『と、轟くん…!』
まさに"噂をすれば影が差す"とはよく言ったもので。
そこにはいつもと表情の変わらない轟くんの姿があった。
***
『…まさかお迎えに来てもらえるとは…思ってもみませんでした。』
「内緒で行ったら咲子が喜ぶ、って麗日が言ってたんだ。」
『えぇっ?もう…お茶子ちゃんってば。』
病院から自宅までへの帰り道。
私と轟くんはあの日のように二人並んでたわいもない話をしていた。
(なんか暑いなぁ…)
じりじりとアスファルトに照り付ける日差しが強い。
段々日も長くなってきたし夏がすぐそこまで来てるのかもしれない。
『もうすぐ夏ですね…。』
「………そうだな。」
『…?』
(轟くん……?)
なんか、変だ。
前から…爆豪さんがお見舞いに来た頃から、轟くんはどことなく元気がない。
(なんか…もやもやする…)
私は轟くんに対する違和感を拭えないまま少し前を歩く彼の背中を見つめていた。