06
『別れよう、電気…。』
放課後。オレンジ色の教室。
それってもっとロマンチックなもんだと思っていたけどやっぱり現実は違うらしい。
俺は彼女である名前から別れ話を切り出された。
「はっ?な、なんで…」
『いつまで経っても浮気癖が治らないんだもん…。それに…。』
『いるんでしょ。新しい彼女。』
「……………は?」
『…っ、とぼけないでよ…っ!』
そう言う名前の目は薄く水膜が張っていて。
冗談やからかいで言っている風にはとても見えなかった。
けれど名前の言葉に俺は思い当たる節なんで全くなくて。
「C組のあの子に告白したんでしょう!? だったらもう…っ私とこういう関係にあるのっておかしい事じゃん!」
ぷるぷると震えながら涙を落とす名前。
小さくて柔らかい俺の大好きな手は固く拳を作りスカートの裾の近くで小刻みに震えていた。
けれど俺はそんな彼女の姿を見て何も言えなかった。
(違う…そんなの…ちげぇよ…。)
違う、って。それは間違いだ、って。
そんなことを言っても余計名前を傷つけてしまう気がしたから。
俺は黙って俯いていることしか出来ずにいた。
『ふっ…うっ、』
「…………………」
長い冷戦が続く中、名前の涙ぐむ嗚咽と部活に精を出す生徒の声が俺たち二人を包む。
俺は視線を彷徨わせながら静かに思考を巡らした。
(なんだよそれ…つか、誰だよそいつ…。)
C組っつーことは普通科か。それで俺が告白した子…?そんなもんいねぇーって…。
ぐるぐると頭を巡らしても心当たりが全く無い。
上鳴はたらりと汗を頬に垂らした。
『何も言わないってことはそうなんだね…』
「…ッ!ちが…っ」
『もういい。私も、好きな人出来たとこだったし。』
「……は?」
『…だから…っ私も好きな人出来たんだってば!』
名前の言葉に、俺は絶句した。
(好きな…やつ…?)
なんで、とか。どうして、とか。
そんな疑問の言葉しか出てこない。
けれど名前の目には強い意志がある気がして。
「はは、そんな…ジョーダン…」
乾いた笑い声は空しく教室に響く。
けれど名前はそれに何も答えなかった。
「本当に別れんの?」
『そうだよ。』
「俺と別れて後悔とかーー」
『しない。』
名前の頬はもう乾いていた。
ぴしゃりと言った名前の声は今まで聞いた中でも一番冷たかった。
『さようなら、電気。浮気癖は治したほうがいいよ。』
そう言って名前は俺を一瞥して妙に広く感じる教室に置き去りにしたんだ。
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