09


(噂は彼女が流したものだったの…?じゃあ、電気は浮気なんてしていなかったの…?)

彼女の告白に、動揺を隠せない私。

そんな私を見て、彼女は口を一文字にして俯いてしまった。



『電気は…浮気なんてしてなかった…、ってこと?』
「そうです。」

今までに彼にしてきてしまった事がフラッシュバックする。

私の独り言に近い問いに、彼女がきっぱりとそう答えた。



「あなたと上鳴くんが別れちゃえばいい、って…そう思って、嘘をついちゃったの。…だから、私…上鳴くんとは付き合ってない。」
『そんな…そんなことって…』

いくら電気を好きだったからって、どうしてそんなことが出来るのか。

私には理解できなかった。

…でもそんなことより私にはもっと不可解なことがあった。

それは彼女の行動理由。

彼女が噂を流した張本人だと言うのなら、どうして私本人にバラしたりなんかしたのだろうか。

不思議に思う私。

訝しげな顔で彼女を見つめる私が"どうして"と尋ねる前に、「実は昨日ね、」と彼女は切り出した。



「私の噂のせいであなたが泣いてしまった、って上鳴くんから聞かされて…」

「私…なんとなくあなたに悪い気がしちゃって…それで謝ろうと思ってきたの。」

『……………電気が…そんなことを?』

「…そう。」

『そう、だったんだ…』



(電気、私のこと気にして噂の事どうにかしようとしてくれたんだ…。)

電気のそんな優しさにとくりと胸が高鳴る。

けれど途端に切なさで苦しくなって、私は電気のことで頭がいっぱいになってしまった。



(電気…。)

いっぱいいっぱいひどいこと言っちゃった。

いっぱいいっぱい嫌な態度とっちゃった。

(それでも…それでもまだ、私のこと好きでいてくれてるの…?)

じんわりと目の淵に涙が滲む。

私はきゅ、と目を瞑り指先で涙を払った。



そんな私を見て、彼女はフッ、と優しく笑い次の瞬間には悪戯っぽく微笑んだ。

「…上鳴くん、言ってたよ?"入学する前からアイツの事好きだった"…って。」
『え!?』

その言葉に、思わず涙が引っ込む。

(入学する前から…?そんな…いつの話なんだろう…。)

始めて聞くその話に、私はどくどくと胸の鼓動が速まっていくのを感じた。






(……行かなきゃ……。)

(……電気の所へ行かなきゃ!)



私は彼女を置いて昇降口へと走り出していた。



「………仲直り、出来るといいね。」
『…うん!』

走り際、彼女の言った小さな声に、私は笑って頷いた。