甘い口づけ

『ふ…っう、…んン…ッ』

ちゅ、ちゅとキスの雨が降ってくる。

仄かにお酒の香りが漂う寝室はサイドテーブルの照明しかついていないせいかひどく朧気だ。

淡くオレンジ色に染まった視界に天井と焦凍のうっとりとした顔が映る。

『ふふ、ご機嫌だね。』
「そうか?」
『うん。』

こてん、と首をかしげる焦凍の目元はほんのり朱に染まってる。

やっぱお酒弱いなぁ、なんて思いながらクスクスと笑っていたら少し不満げな焦凍と目があった。

「随分余裕だな。」
『そりゃあ焦凍よりも強いもん。』

今日は焦凍の誕生日。

焦凍の好きなご馳走を作って、普段使いが出来そうなプレゼントを渡して。

それと年代物、とはいかないけれど少し良いワインも飲んだ。

私も焦凍もお酒は嫌いじゃない方だけど、仕事柄二日酔いとかが怖くてなかなかこういう機会は少ない。

だからこうやって酔っている焦凍を見るのは結構レアだ。

熱に浮かされてぼぅっとした彼はどこか子どもみたいですごく可愛い。

なんだか普段とのギャップが面白くてにやにやと笑っていれば焦凍はまた小さくため息をついた。

「また何か変な事考えてるだろ」
『別に?』

わざとらしく視線を逸らせば仕返しとばかりにちゅ、ちゅとまた唇を落とされる。

拗ねた顔も可愛い、なんて言ったら怒られちゃうかな。

これ以上は機嫌を損ねてしまいかねない。

私は二色の丸い頭を撫で繰り回したいのをなんとか自粛した。

『ご飯美味しかった?』
「あぁ。ケーキも美味かった。プレゼントも大事にする。」
『気に入ってくれた?』
「ああ。」

「また作ってくれ、ケーキ。」なんて台詞に嬉しい気持ちが広がる。練習しておいてよかったなぁ。



「なぁ、今日いいか?」
『いいよ。』

シーツに投げ出していた手が焦凍の指に絡まれる。

きゅ、と力を籠められ恋人つなぎのまま拘束されれば鼻筋にふに、と柔らかい感触がして。

ちら、とこちらの様子を見る瞳にとくりと胸が高鳴る。

ねだるような甘い声に了承の返事をして瞳を伏せれば口唇の間を割って熱い舌が入ってきた。

焦凍って酔うとすぐ手を繋ぎたがるよね。それにキス魔にもなるし。

"他の人にしたら嫌だよ、"って言ったら「そんな風になるのはお前だけだ」って大真面目な顔で言われちゃったっけ。


『ン…あ、ゃ…』

(だめ…私も酔いそ…)

考え事をしていたら、舌をかぷりと甘噛みされて。

一瞬走った甘い刺激に声を漏らせばどこか楽しそうな焦凍の顔。

普段見せることのない少し悪そうな微笑みに、変にドキドキしてしまう。

(焦凍の舌、いつもより甘い…)

口内を甘く浸食するアルコールの味にくらくらする。

焦凍の舌や吐息に充てられて、こっちまで酔いが本格的に回ってきてしまった。

そのせいかさっきから心臓がとくとくとうるさい。

蕩けてしまいそうな舌が心地よくて、もっともっとと要求すれば焦凍は角度を変えて労わるようにキスをしてくれた。

誕生日なのは焦凍の方なのに。これじゃ私ばっかり良い思いをしている気がしていたたまれない。

『ねぇ、焦凍の好きにしていいんだよ…?』
「…お前どこでそんな台詞覚えてくるんだよ」
『えっなになに嬉しかった?』

ぷい、と顔を逸らされて思わず顔がにやける。

照れてる時、焦凍はすぐに顔を逸らして瞬きをする癖があるから。それを見た私はすっかり得意気になってしまって。

『男の人ってこういう台詞に弱いのか…へぇ』
「上鳴とか峰田の前で言うなよ。」
『こんなこと言うの焦凍にだけだよ。』

ふふ、と笑って顔を近づけキスをする。

普段だったら恥ずかしくてこんなこと出来ないけれど、全てお酒のせいにしてしまおう。

『改めて誕生日おめでとう、焦凍。』
「祝ってくれてありがとな。」
『ふふ、来年は皆に協力して貰ってサプライズにしてあげる!』
「本人に言ったら意味ねぇだろ。」
『焦凍の事だから自分の誕生日なんてきっと忘れちゃうでしょ。』
「馬鹿だな、楽しみで忘れねぇよ。」

私はそう言って悪戯っぽく笑う焦凍を見て、またゆっくりと目を閉じた。


………………

轟焦凍くん、お誕生日おめでとうございます!(2018/01/11)