ラッキーカラーは赤!

※女の子の日ネタです!ご注意ください



お腹が……いだ、い…

なんでこんなにも痛いんだろう。こういう時ばっかりは女に生まれてきたことを恨まずにはいられない。ズキズキと不規則に痛む下腹部を押さえて私はうずくまっていた。

どうしよう、朝からこんなに痛むのも久しぶりだ。朝部屋から出るときにカイロだって貼ったし、生理痛に効くお茶だって飲んできたのに…。うう…痛い…動けない、辛い…。

「どうしたんだ名字」
『き、切島くん!』

声をかけてきたのは隣の席の切島くん。がばりと勢いよく起き上がったらまた鋭い痛みが下腹部に走った。

「?腹でも痛いのか?」
『えっ!?…あ、うん、まぁ…』

どうしよう、うんうん唸っているところをみられてしまったらしい。正解を言い当てられて思わず動揺してしまう。まぁお腹を押さえて突っ伏していればばれるのも仕方がないか。

多分切島くんのことだからこれが所謂"月のもの"だということは分かってないんだろうけど、バレてしまわないかひやひやする。なんだかいたたまれないな…。

「どうした?」
『ううん、別に』

「なんでもないよ」と返せば切島くんは少し不思議そうな顔をしたけど納得してくれたようで話が終わった。

どうしよう…。

痛みはまだ続いている。また机に突っ伏すのもアレだし、かと言って平静を装えるかと聞かれたら答えはNOだ。今にも痛みで声が出てしまいそう。

でも切島くんの前で醜態をさらすのは死んでも嫌だ。

どうしてこんな時に限って薬持って来るのを忘れちゃったんだろう。本当に最悪…。

心なしか頭も痛くなってきたし今日は本格的に駄目な日だ。自己嫌悪に苛まれ暗い気持ちになりかけていた時、「あっ」と明るい声が隣から聞こえてきた。

「今日のお前確か占い一位だったぞ」
『えっ…そうなの?』

切島くんって占いとか見るんだ。いつも漢気がどうとか言ってたからなんだか意外だ。ちょっとかわいい。…でもあれ、なんで私の誕生日知ってるんだろう。

『私切島くんに誕生日言ったことあったっけ?』
「…あっ悪ぃ、この間名字と芦戸が話してるの聞いちまって…」
『えっ!』

それは先週の金曜日のことだったと思う。三奈ちゃんと雑誌の相性占いのコーナーを見ていた時の話だ。三奈ちゃんに誕生日を聞かれて私が誕生日を答えたんだった。

私の気持ちを知っている三奈ちゃんが「切島と相性良いみたいだよ」なんて悪戯っぽく微笑むものだから。私が分かりやすく赤くなってしまって、それを冷かされたんだった。

嘘、あのときの事聞かれてたの?

ばくばくと暴れ始める心臓。急に黙りこくってしまった私に対して切島くんは「怒ってるのか?」と少し的外れな事を言ってきた。

シュンと笑顔が曇る切島くん。それを見て慌てて「全然怒ってなんかないよ!」と否定すれば「本当か?焦った…」と豪快に笑った。

なんか…"しおれていた向日葵にお水をあげたら元気になった"みたいな…そんな感じ。ウッ…………眩しすぎる。本当にこういうところずるいよなぁ…。

「今日のお前は"気になる相手と一歩前進?ラッキーカラーは赤!"だってよ」
『へぇ…』

確かに当たっているかも。切島くんに朝心配して貰えて、こんな風に気さくに話しかけて貰えて…。一歩前進か、って聞かれればちょっと違うかもしれないけれど。でもラッキーカラーが赤なのはこの状況ではちょっと…。


「なんか赤いもん持ってる?」
『うーん、持ってないや。』

赤ペンくらいしかないかも。と申し訳ない気持ちでそう微笑めば切島くんは「ちょっと待ってろ」と鞄に手を差し込んだ。どうしたんだろう。ガサゴソとビニールの音が聞こえてきて私は首をかしげる。

少しして切島くんは目的の物が見つかったのか「あったあった」と嬉しそうに声をあげた。

「はいこれ!」
『えっ……飴玉?』

差し出されたのは可愛い包装に包まれた飴玉。両サイドがねじられてある少し懐かしい形のものだ。包装のプリントから見ていちご味みたいだけど…。

『貰っちゃってもいいの?』
「あぁ。その為に買って来たようなもんだし。」
『えっ!』

平然と、なんでもないと言った顔をしてさらりと嬉しいことを言ってくれる切島くん。どうしよう、そんなこと言われたら勘違いしてしまいそうになる。

「結構種類あったから探すの手間取っちまって…いちご味だったら赤だし。あ、あと言い忘れてたけどラッキーアイテムも"アメ"だったしな!」
『ありがとう…。』

快活な笑顔で「これ舐めて元気になれ!」と親指を立てる切島くん。本当に優しいなぁ…。嬉しい気持ちが隠し切れなくて思わず笑顔がこぼれる。

お言葉に甘え、可愛い包装を解いて口に入れれば甘い風味が口いっぱいに広がる。うん、美味しい。ころころと舌で転がして味を楽しむ。どうしよう、にやにやが止まらない。

「でもマジでキツイようだったら今日はもう休んだほうがいいんじゃねぇのか?」
『本当に無理そうだったら保健室に行くよ』

生理痛で保健室って行ってもいいのかな…と心配になりつつそう返す。でも、これで一日無的になった気分。何だって出来ちゃいそうだ。

『ありがとね、切島くん。』

いつの間にか、私を悩ませていた下腹部の痛みは気にならない程和らいでいて。私は今日のラッキーカラーである赤い髪を見つめてこっそりと微笑んだ。