「ふ…う゛ぅっ!ん゛っっ!!」


「……岩ちゃん、気持ちいいよ。口の中あっついね」


「……んんっ!う゛、ふっ!ぅっ!」


「んー、熱は37度8分ってとこかな」


 そんなことまでわかるはずがないだろうと罵ってやりたくても、生憎口いっぱいに及川を咥えさせられた状態では、漏れてくるのは意味を成さない苦しげな音の羅列ばかりだった。

 結局、こうなる。岩泉が誰かに口説かれるなど、ましてやその相手が男だったなど、まかり間違っても許すはずのない及川に、さも岩泉の体調を心配する体で連れて帰られ、帰宅後頭が痛いのだといくら訴えてみても服を剥ぎ取られて、この有り様。こうなってしまえば岩泉の抵抗など無に帰するだけで、後で殺す、ぶっ殺すと呪いのように念じるしかもう残された手はなかった。

 喉の奥まで咥え込み、意識してモノを締め付ければ、及川の艶やかな吐息がふうっと髪にかかる。苦しくて、意図せずこぼれる涙を拭う指は、こんな行為をさせていることが信じられないほどに、どこまでもやさしかった。こうしているときには無理に唾液を飲み込もうとしないこと、そんな学習などしたくはなかったけれど、胃の中のものをぶちまけるわけにもいかず、唇の端からはみっともなく唾液やら先走りやらを垂れ流す。


「今日のあのチビちゃん、岩ちゃんに抱かれたかったのかな」


「ふっ、あ゛ぁっ!んん…っ!」


 及川は床へと糸を引く唾液を指で絡め取り、それを咥内へ戻すように、もう隙間などない唇から指を捩じ込むと、ぬるぬる頬の内側を撫でさすった。


「だとしたら、とんだ見込み違いだよね。岩ちゃんはこんなにも可愛く俺に抱かれてるっていうのにさ」


「か…はっ!ん゛っ…んんっ!」


 馬鹿だよねえと笑う及川に連動したモノに喉を軽く突かれ、思わず頭を後ろに引いてしまう。ぬるりと抜けた指は、更に多くの唾液を纏う結果となり、それはぬらぬらと鈍く煌めいていた。熱のせいなのか、及川のせいなのか、靄のかかる頭はガンガンと痛み、気分的にはこの馬鹿のせいにしたいのだけど、きっとそのどちらものせいであるのは明らかで。先端のやわらかな粘膜部分だけを咥え、だらだらと唾液をこぼす間抜けな姿で及川を見上げ、睨めつける。充血した猫目からはガラス玉のような涙が転げ落ちていて、どれだけ頑張って睨んでみたところで、いつもの迫力などあったものではなかったが。


「なあに?いつも言ってるでしょ、俺が岩ちゃんの気を引くの。逆は認めません。ほら、続けて。岩ちゃんも気持ちよくしてあげるから」


「……ふ、んぁぁっ!んっ、んっ!」


 ひとつ、よしよしと及川の大きな手が髪を撫でてから、それはそのまま後ろ頭に添えられる。手をぐっと引き寄せられると、咥内の先端がぬる、上顎をこすり、その瞬間既に痛いほど勃ち上がっている岩泉のモノからとぷりと透明な粘液があふれた。どうしてそこが感じるのか、いまだに自分でもよくわからない敏感な上顎を、及川は自身のモノでしつこいほどに撫で、辿り、時には押し付け、岩泉を追い込んでいく。


「上顎にも性感帯があるってほんとなんだね。気持ちいい?」


「んぁっ、ぅ…んんっ!っ!」


 もう、堪えられそうもなかった。ナカのいいところをモノで抉られるのとは少し違う、直接脳に響くような、蕩かすような快感に浮かされる。


「可愛い顔しちゃって。もう我慢できない?一緒にイこっか」


「んっ、んっ!んんっ!う゛ぅ、んっっ!」


 どの辺りに可愛い要素があるのかはさっぱりわからなかったが、一息に喉奥を突かれるのと同時に、及川の足の爪先が岩泉のモノを辿ったことで目の前がチカチカと煌めき、そしてすぐに真白に染まった。爪先は先走りでぬめる根元から先端へ、つうっと。息を詰め、びくりと身体を強張らせて、飛沫を上げる。呼吸を止めたことでモノを飲み込むようにぎゅっと強く締まった喉奥には、一寸遅れて及川の白濁が吐き出された。粘度を持って胸から腹へと垂れる自身の精液も、咥内を満たす及川のそれも、どうしてかやけにあつい。熱に火照る身体よりも熱く感じるなど、脳だか感覚だかがおかしくなってしまったのだろうか。


「岩ちゃん、あーんして」


 ずるりとモノを引き抜いた及川はまるで子供のような、けれど子供には到底出せない色やあまさをない交ぜにした笑みを浮かべながら、長い指で岩泉の濡れた唇を撫でる。子供体温の岩泉に比べると幾分低い及川の指が、不本意ながらひんやりと心地よく、つうっとやさしく触れるそれに、腹のあたりがとろりと甘だるく溶かされるようだった。






 


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