実技試験
大きな講堂で受験者全員が集められ、実技試験の説明が行われた。
内容は仮想敵を倒してポイントを稼ぐといったシンプルなものだった。
筆記試験も問題なく終えることができたのが良かったのか、落ち着いた気持ちでプレゼント・マイクの話を聞くことができた。
途中、元気な受験生が試験内容について質問したと思えば、その受験生が他の受験生に注意したり・・・
他の学校の受験では見ることができないであろう様子に、思わず頬が緩む。
『(いけないいけない、集中、集中!っと・・・)』
緩んだ頬に手を当てて、何回か軽く叩けば身がシュッと引き締まるようだった。
説明も終わり着替えを済ませて、指定された会場へと進めば気合の入った受験生たちで入口は溢れている。
特別に必要な人以外、サポートアイテムは禁止されているから、ほとんどの人がジャージだ。
個性の性質上、布が多い格好は不利になってしまうので、紺色のタンクトップ・ショートパンツに、怪我防止のサポータを両肘両膝に。
準備運動もしっかり行い、あとはスタートの合図を待・・・
<<はい!スタートォォ!!!>>
突然響いたプレゼント・マイクの声に反射的に走り出す。
さすがはヒーロー志望。周りを見れば、突拍子も無いスタートのはずなのににほとんどの受験生が走り出していた。
『(まずは、ロボがどこにいるのか把握しなきゃ)』
選んだのはあたりが見渡せそうな高いビル。少し距離はあるけれどまずは先手必勝。
他の受験生の邪魔にならないように集団から少し外れたところで、ビルに素早く移動するための準備を始める。
幅跳びする時の要領でに、腕を前後に振り、膝を曲げる動きを何回か繰り返す。
腕と膝の動きを活かしながら思いっきり地面を蹴り上げた。
そして、足を地面から離すと同時に足裏から水を噴射する。
風を切るように上へ上へ、見た目も派手だし人間ミサイルみたいで、空を飛ぶこの感覚がとても好きだった。
最初に狙いを定めたビルの真上にたどり着くと、今度は前方方向に手を大きく振って水を噴射した。
もちろん同時に足裏からの噴射を止めることは忘れない。
手を大きく振りながら水を噴射したことで、それは移動する体のブレーキへと変わる。
空中を自由に移動できるわけじゃないから、最初の角度設定やブレーキのための個性使用は意外とコントロールが難しいのだ。
落ちていく体は、ビルの上にあらかじめ用意されていたかのように広がる水のベットに優しく沈んでいった。
藤本ひかり
個性:水を操る個性
父から受け継いだ大切な個性。
水のベットを大気に散らせれば、日光に反射された小さな水の粒がキラキラと光る。
それらの小さな粒は一時的に虹を作り出していた。
『さーてと!ロボちゃんはどこかな!』
練習してきたことが、思うようにできることはとても気持ちがいい。
今朝お父さんに不安を漏らしたことが嘘みたいに、今はただ自分の力を試せることが楽しみだった。