夢への一歩
雄英高校の入試試験が終わり数日過ぎたころ、自宅に結果を知らせるお手紙が届けられた。
一緒に住む人が、雄英の教師であっても結果は平等に、伝えられるようだ。
少しドキドキしながらも丁寧に封筒を開く。
中から出てきたのは小型のプロジェクターだった。
机のうえにプロジェクターを置くと同時に壁一面に広がるオールマイトの映像。
試験結果について、一つずつ講評が進められていく。
周りの目を気にしてか、“藤本少女”という呼び方が何だかくすぐったかった。
<<筆記試験は文句なしの合格さ!よく頑張ったね!>>
筆記試験については、自己採点をしていたので何となく合格圏内であることはわかっていた。
しかし、実技試験についてはポイントを数えることをすっかり忘れてしまい、正直わからなかった。
当然周りの人のポイントもわからず終わってしまったのだ。
<<実技試験の結果は、倒した仮想敵39P!!>>
『・・・・思ってた以上に低い』
雄英は筆記の点数より、実技の点数が優先される。
状況からみて、もしかしたら落ちてしまったかもしれないと不安がよぎった。
<<しかしそれだけにあらず!!!!>>
『え・・・・』
映し出された映像は、実技試験中に怪我をしてしまった子を移動させたり、傷口を水ですすいだりする自分の姿だった。
そうだ。試験中にそういった場面がいくつもあった。
困ってる姿を見たらどうするべきか、幼い頃からずっと両親を見てきた。
ヒーローを引退しても、道端で困っている人がいたらすぐに手を貸す母の姿。
第1戦で活躍していた父の姿。
そして、No.1ヒーローとして、私に道を示してくれたもう1人のお父さん。
ずっと近くで見ていたから、気がついたらそれが私の中の当たり前になっていた。
試験中であったとしても、意識しなくとも自然にそう行動してしまうようになっていたんだ。
<<レスキューポイント37P!!合計76P!!>>
<<合格だ。おめでとう藤本少女。>>
―パンッ!パンッ!
「おめでとう!!!!ひかり!!!」
『ひゃぁあああ!』
突然聞こえてきたスピーカー越してはない、リアルな音に思わず背中に電流が走るような衝撃を受け思わず叫んでしまった。
画面越しのオールマイトが合格を知らせるとともに、部屋でクラッカーを鳴らしたのはトゥルーフォームのお父さんだった。
『び、びっくりしたぁ!!!』
「HAHAHA!これもエンターテイナーの仕事さ!」
そしてボンっという音ともにマッスルフォームへ変化するお父さん。
びっくりすると同時に笑顔が止まらない私の両脇に手を添えて高く抱き上げる。
「さあ、今日は合格祝いだ!美味しい料理作っちゃうぞ〜!!!」
高い高いなんて、恥ずかしいっていう人もいるかもしれない。
でも笑いながらおめでとう!と繰り返し言ってくれるお父さんに、やっぱり嬉しいが勝って笑顔が止まらなかった。
――――――――――
――――――
――
グレーのブレザーに赤いネクタイ。
まだパリッとした感覚がくすぐったい。
合格発表の日からあっという間に卒業式を迎えて気がつけば今日は入学式だ。
ハンカチテッシュに、筆記用具や資料に書かれていた必要な道具と水の入ったペットボトルを買ってもらった新しい鞄に入れる。
お父さんは張り切って家をとても早く出ていった。
出発前に制服姿の私を見てなぜか涙ぐんでいた。そんな表情に私も思わず涙ぐんでしまったのは秘密だ。
鏡で身嗜みをチェックすると、自然と背筋が伸びる。
今日から、父と母が通った雄英高校の生徒だ。
2人がヒーローになるために色んなことを学んで、そして出会った場所。
お父さんから、そう聞いてからずっと雄英高校に入学すると決めていた。
『私も今日から雄英の生徒だよ』
父と母の写真に向かって制服を披露するようにくるりと回った。
大好きな2人は写真のなかで、優しく笑い合っている。
今だに夢にみるあの日の光景。
2人が見せてくれた最後の笑顔。
胸が締め付けられるのを誤魔化すように、拳に力を込める。
『絶対に、立派なヒーローになるからね!』
悲しい顔はしない。辛い時こそ、悲しい時こそ、不安な時こそ笑顔を絶やさない。
それがヒーローだと教えてもらったから。