心配性のあの人は

あのとき離れることとなった土地に、6年後戻ってくるのはとても不思議な感覚だった。


県こそ同じものの、生まれ育った場所からは少し離れているその場所で新しい制服に身を包み込む。
もう慣れてしまった転校もこれが最後だ。

一年半後からこの土地で教師を務めることになった家族と、来年高校受験する私の都合も重なりすぐに引っ越しを決めた。

まだ他の場所での仕事が終わらない家族の段ボールは残っているものの、綺麗になった部屋に1人で朝を迎えるのは少しだけ寂しさを感じた。

それと同時にたまに顔を出すからと、泣きはしないものの寂しがる様子を思い出してクスリとしてしまう。


まさかNo.1ヒーローのあんな姿、誰が想像するんだろう。
チャーミングな一面は周知だが心配性のイメージは少ないはずだ。

幼馴染2人がとても憧れていたヒーローと自分が家族になっているということに、はじめは実感がなかったものの、5年も一緒に暮らせばお互いの考えていることくらいはわかるようになってきた。



あの日私の手を取って、一緒に暮らそうと言ってくれた。私の夢を手助けすると言ってくれた。
その言葉に私がどれだけ救われたか。
まだ伝えることができていないけれど、必ず期待に応えたい。だからこそ、受験に集中するために早めに越してきたのだ。


登校する準備が整い、最初に向かう場所は決まっている。


準備を済ませて、仏壇に手を合わせる。
仲睦まじく写された父と母、そして優しそうに笑う祖母の写真に自然と笑みがこぼれた。



今日から新しい中学校に通うこと、今日の目標(友だちをつくること!)をしっかり心の中で唱えて、伝えて、立ちあがる。



『行ってきます!』



誰もいない家に大きな声で挨拶をして、家を出た。



新しいスタートに大きな期待と少しの不安を抱えて、学校へ向けて歩き出した。









シャローム