迷子と案内人
夏休みが終わり、2学期の始業式。
いつもと変わらない通学路を通り、学校に到着する。いつもと変わらない教室までの通路を歩く予定だったが、あからさまに廊下の真ん中で迷った様子の女子生徒がいた。
上履きの色から同学年のようだが、見ない顔だ。
真新しい上履きに真新しい制服。おそらく転校生だろうとあたりをつけて、声をかけようとしたが女子生徒が突然こちらを振り返り、目があったかと思えば満面の笑みを浮かべた。
『あの!職員室ってどこですか??』
早くきすぎたせいで人が少なく、場所を聞くにも聞けず校内を迷っていたというその女子生徒は照れ臭そうにまた笑った。
たしかに、ラッシュよりも30分ほど早い時間だ。
「こっちだ」
職員室の方向を指差せばお礼とともにまた笑顔。
よく笑うやつだなと思いつつも、本来の目的を思い出し職員室まで送り届けることにした。
移動中特に話すこともなく、俺の斜め後ろについてくる。近づいてみると意外と小柄だ。距離が開かないようについてくる様子はなんだか小動物のようだった。
職員室までの距離は短くあっという間にたどり着く。開けっぱなしになっている扉に軽くお辞儀をして足を踏み入れた。
「失礼します」
「轟おはよう。この資料教室まで運んでいってくれないか?」
一瞬目があった担任の先生は軽くてをあげると、すぐに自分の机に向かってしまう。
始業式ということもあり準備で忙しいのかもしれない。
一方的に資料について説明してくる担任は、俺に隠れて転校生が見えていないのだろう。隣を見ると転校生は苦笑いしていた。仕方なく先生の座席まで近寄って話しかける。
「先生、転校生連れてきました」
『今日からお世話になります!藤本ひかりです!よろしくお願いします!』
「おー!藤本ひかりさん!」
やっと気がついた先生は、気がつかなかったことに謝りながらこの後の流れを転校生に伝え始める。
先生の話を一所懸命聞くその様子はやはり小動物のようだった。
「(つーか、同じクラスになんのか…)」
先生の反応や話の流れからも転校生が同じクラスにやってくることは明白だった。
「……失礼します」
転校生の話をそのまま聞くのもおかしなことだ。
その場を立ち去るために指定された荷物を持ち軽く会釈すれば、転校生が素早く反応してこちらを向いてくる。
『案内してくれてありがとう!』
その笑顔から、悪いやつではなさそうと感じさせられた。
始業式後にまた会うだろうし、これから話す機会はあるだろう。
今度はお礼をしてきた転校生へ向けて軽く会釈をして、今度こそ職員室を出た。
これから長い付き合いになるとは想像することもできなかった。