最初の印象







カカシがスタートしてからの流れはとても速かった。
すぐにその場を離れた3人と違って、その場に残りカカシに勝負を挑むナルト。

アカデミーをトップで卒業したサスケさえもなすすべなく、カカシにやられていた。


『(サスケくんでも取れないスズを取る方法・・・)』


リナはカカシと他の3人の動きを観察し続けていた。
やはりカカシは上忍で、私たちは下忍になりたての子供達。


『(単体でカカシ先生に敵うはずないよね・・・)』


そう、敵うはずがないのだ。
でも毎年こんな試験を繰り返していたら、木の葉の忍びまでの道が遠すぎる。
もしそれが事実だとしても、本来ならこの試験ももっと有名であるべきだった。


『(だからきっと、攻略法があるはず。単体以外の、)』


そこでふっと、リナの思考が止まった。
ずっと、視界にカカシの姿を入れていたはずなのに、その姿が見えない。

『(あれ・・・・)』

きょろっとあたりを見わたそうとした瞬間、視界いっぱいに広がる覆面。



「君は挑んでこないの?」

『ひゃぁぁぁ!!!!』



突然目の前に現れたカカシの顔面に、リナは思わず後ずさりした。



「ナルトは丸太に縛っちゃったし、サスケもサクラもへばっちゃってさ〜リナだけずーっと見てるだけで仕掛けて来ないから、先生からきちゃった」

『・・・・・』

「観察してなにかわかったことあった?」

『(探られてる?それとも遊ばれてる?)』



言動からはカカシの真意はわからない。もちろん上忍なんだから当たり前だと言われてしまえばその通りだった。
しかし、実際リナの「探られている」という考え方は正解だった。

カカシは4人の中でリナのことが一番よくわからなかった。
あの海鳴一族の生き残りで、アスマがたまに面倒を見ている女の子。

緊張した様子で、話すことを戸惑っているかと思えば、緊張感もなくお昼寝をしたり、かと思えば鋭い目つきで人を観察する。
一貫性のない様子に、カカシはまだリナという人物を掴みきれていなかった。



『先生は・・・』

「(お、喋り出した・・・)」

『木の葉の忍を増やしたくないんですか・・・?』

「へ?」


ぷるぷると震えたように、喋りキッとこちらを頑張って睨みつける様子、そして質問された内容に、カカシはが拍子抜けてしまった。
まるで、小動物が怯えながら威嚇するようなそれに、ぽりぽりと頭をかく。


「なんで、そう思ったの?」

『だって、先生に単体で勝てるわけないじゃないですか・・・!しかもあんな風にみんなのこと煽ったりして・・・・』

「(着眼点はいいな)うんうん、それでリナはどうしたいの?」

『・・・・1人じゃ勝てないから、・・・・みんなで力を合わせて、』


カカシはなんとなくこの小さい少女が言いたいことを理解した。
忍びなりたい。スズを取るためにはみんなで戦わなきゃいけない。

すべきことは理解している。


『でも、みんな、向いている方向が違うから・・・』


「(なるほどね・・・)」


1人1人の感情や性格を観察して理解している。
それでいて、憶病なのだ。

合格への道がチームワークと理解しているが、それがメンバーの性格上難しいことを踏まえて、また別の方法を模索している。


「じゃあ、諦める?」


ふるふると頭を振るリナ。
先生、生徒の関係としては多少なりとも導いてやらなきゃいけない。


「でももう、時間もないからなー新しい方法探すのは無理なんじゃない?」

『・・・・・』

「どうする?」

『勇気を出して、みんなに伝えたい・・・!』


チームメイトだから、そう最後に付け足すリナにカカシは優しく目を細めて、頭をポンポンとなでてやった。


「正解だ。」


意味が伝わらなかったのか、少女はキョトンと目を丸めてこちらを不思議そうにカカシを見つめた。


「まあ、でも実力は見たいと思ってたし・・・思いっきりかかってきてごらん」

『え!』


-チリン、チリン

スズの音が小さく響く。二つの鈴を手元で揺らすカカシにリナはゴクリをつばを飲み込んだ。
そして不安そうに瞳を揺らしながら、地面を蹴り出した。



「(ほう・・・)」


繰り出される体術にカカシは目をみはる。
パワーもない。攻撃も単調。けれど・・・


「(スピードはサスケ以上・・・)」


スイスイと攻撃を避けながら、カカシはリナの動きを冷静に観察していく。


「(柔軟性もあるし、パワーがここについて経験を重ねたらもしかしたら・・・・)」


ふと必死に攻撃を繰り返すリナに視線を向ければ、先ほどまでの不安そうな表情は一切なくなっていた。
むしろ少し笑っているようにも見える。



「(なんだ・・・?)」


ふ、とそこで繰り返される攻撃が足技に集中していることにカカシは気がついた。
そして、足技を繰り出す際に体で隠されていた手が一瞬「寅」の印を結ぶ。



「(まさか・・・!!)」


『水陣結界』


突如視界に広がっていく結界に、カカシは目をみはる。
この小さな少女の一族が結界術に優れた一族であることは知っていたが、この歳でまさかここまでの結界術を展開できるとは思っていなかったからだ。
この結界式の中に閉じ込められたら、身動きが取れるようになるのはそう簡単ではない。
カカシは先ほどまで、少女に対して思っていた印象はすっかり変わっていた。



「(これは、面白くなりそうだ)」