めんどくさい出会い
じいさんの買い物という名のめんどくせえ任務を終え、将棋の約束をしていたアスマと家に向かうと前からよく知っているやつが小走りでやってきた。
「よお、リナ。そんなに急いでどこいくんだ?」
『シカマル!アスマさん!』
声を掛ければ明るくなる表情になんとなく安心した。
なんせこいつはいかにも面倒くさそうな7班に配属され、さらに本人が苦手だと言っていたサスケと同じ班。
いつもつるんでいた俺やチョウジと別れ、ましてや後見人的存在のアスマたちの担当になった時の顔は何かを訴えるようにショックを受けた顔だったのを今でも覚えている。
それから何日か一緒に夕飯を食べる機会もあり話を聞いたが、サスケとの仲も特別進展していないように思えた。
同じ班なのに大丈夫かコイツらとは思うものの、リナの事情を知っているから、サスケがどんな気持ちなのかをなんとなく察することもできるから、助言もすることもできなかった。
『これから任務なの!2人は任務終わり?』
「あぁ、これからシカマルの家で将棋をな…」
「そんな大荷物必要な荷物なのかよ、めんどくせぇな…」
『ナルトくんの主張が通ってね、ちょっと里の外まで!』
「里の外か…、まぁカカシがいれば大丈夫だと思うが気をつけろよ」
アスマの手がリナの頭の上に乗せられる。
擽ったそうに微笑むリナを見て、
大きな問題は発生していなさそうでまた少し安心する。
『うん、帰ってきたら一緒にご飯食べようね!シカマルも!』
「おー、親父たちにも言っておくわ」
『じゃあ行ってきます!』
ぱたぱたと走り出す様子があまりに忍者らしくない。
「騒がしいやつだな、めんどくせえ」
「なんだー?シカマル、心配そうな顔しやがって」
「…………別に心配なんてしてねえよ」
にやにやと意味のありそうな顔で見てくるアスマに思わず嘘をついた。
そんな嘘はもちろん上忍のアスマにはお見通しだろう。
「そーかい」とまたにやにやしながら俺の頭をリナと違った乱暴な手つきでガシガシと撫でててくる。
ガキ扱いするなと手を払い自宅の方向へ歩き出す。
心配なんてするに決まっている。
あいつの記憶がなくなってから、一番長くいたのは自分なのだから。
-------------
うちはの事件を噂に聞いて少しした頃、親父が任務で怪我をして入院した。
確か。遣いを頼まれて病院を訪ねた俺は目の前の病室から飛び出してきた黒い影とぶつかったのを今でも鮮明に覚えている。
「いってぇな……、ってもういねえのかよ。めんどくせえ……」
同じくらいの大きさの影だった。
すぐそこに階段があるとはいえ、この速さでその場を離れることができるならもしかしたら同じアカデミーの生徒かもしれない。
そんな奴が見舞いにくる相手が気になり病室のプレートを覗き込む。
海鳴リナ
知っている名前だった。
アカデミーで同じクラスだけど、あまり喋ったことのない背の小さい女だ。
めんどくせえと思ったが、先程飛び出してきた奴のことも気になり、開きっぱなしになっていた扉から少しだけ中を覗くことにした。
中を覗くと、ぱっちりと目を開いたままこちらを見つめている海鳴リナの姿があった。
そして焦点がこちらにあっていたなったのか、俺の存在を認識するや否や肩をビクッと振るわせた。
明らかに怯えている様子だった。
アカデミーでの印象と違う様子に、俺は疑問を持った。
「よお……」
声をかけるとまた、ビクッと肩を揺らす。
おかしい。
あまり喋ったことはないといえ、同じクラスで挨拶くらいはする仲だった。
それなのにこんなに怯えられるのは、認めたくはないが幼い俺は少し傷ついた。
同じアカデミーの生徒として認識されてない?
それもとも、話しかけられただけで怯えるような怖いことがあったのか?
「俺、アカデミーで一緒の奈良シカマルって言うんだけどよ。入院ってどこか怪我でもしたのか?」
たくさん考えたはずなのに、結局考えるのがめんどくさくなって直接聞くことにした。
認識されていなければ自己紹介すればいい。怯えてる理由なら入院してる理由から聞いてみればいい。そんな単純な思考だったのに。
『あ、あかでみーって何?』
発せられた言葉に余計に混乱した。
「……俺とお前が通ってる忍者の学校のこと」
『忍者の学校………』
「そうだよ、何寝ぼけたこと言ってんだよ」
『……………』
「入院してる間に寝ぼけて忘れちまったのか?めんどくせえ奴だな……」
冗談を言ったつもりだった。
でもその冗談が、記憶に残る1番最初の後悔になるとはこの時は思いもしなかった。
放った言葉の後に、ぽろぽろと大粒の涙を流す目の前の女に空いた口が塞がらなくなる。
声を出すのは我慢しているものの、ヒックヒックと肩を揺らす様子に、強烈な罪悪感を覚えた。
「な、泣くことのこと言ったかよ……」
素直なんて言葉はこん時からなかった俺はもちろんすぐに謝罪の言葉なんて出て気やしない。
めんどくさくて今すぐここを去りたいところだったが、先ほど感じた強烈な罪悪感がそれを許さなかった。
『ごっ、ごめんなさいっ……』
まだ呼吸の整わない状態で、告げられた謝罪の言葉にまたズキリと胸が痛んだ。
こんな時どうしたら泣き止んでもらえるのか必死で考える。
ふと思い出したのは、昔母親にしてもらったことだった。
恐る恐る泣き止まないままのそれに近寄って、今思えばとても辿々しい手つきには違いないが、ポンッポンッとできる限り優しく頭を撫でた。
「わ、悪かったから……もう泣くなよな」
一瞬キョトンとした顔して、今度は大声でピーピー泣き出したこいつに俺は慌てふためき、声を聞きつけた親父に盛大なゲンコツを食らったのは今ではもういい思い出だ。