予測していたよりも早く大規模侵攻が始まった。通信によれば、何やら新しい型の兵器が投入されたことが原因で現場は混乱しているようだが、まあ大丈夫だろう。また、今回はC級隊員にもトリガーの使用が許可されている。それは市民の避難誘導目的という理由からだ。以前のメガネくんの功績が大きいなと思いながら、敵を斬ろうとすると、少し未来が動いたことが確認できた。あ、これ、予測より早めにこっちに来そうだなと思い、任務を切り上げて天羽の元へと向かった。
天羽が担当する西部地区へと行くと、そこにはまっさらな市街地が広がっていた。瓦礫の上に座る天羽にぼんち揚げを渡して話しかける。今は雑談ではなく頼みごとをしに来たのだ。
「悪いんだけどさ、おまえおれの担当もやってくんない?基地の西っかわ」
「ええー………なんで…………?」
「もうそろそろ敵さんが本格的に動き始める。おれも行ったほうが良さそうだ。それに、あと数分でなまえがここに来るんだよね」
おれはつい先程みた未来を天羽に伝える。なまえがもうすぐここに転送されてくること。その時の相手は、天羽よりもおれの方が良さそうなこと。それは、もし天羽が相手をしたら本部に叱られる未来がみえるからだということ。そして何より、以前のなまえとは少し様子が違うことを伝えた。
「ちょっとだけふたりで話したいからさ、お願いしていい?」
「うーん……いいよ。なまえさんのためだし」
「お、ありがとね」
無事に大規模侵攻が終わったら、ぼんち揚げを箱ごとあげるよと言うと、これだけでいいよと丁重に断られた。
ぼんち揚げの袋を手に天羽がここから立ち去る。そのまま一分位が過ぎた頃、バチバチと音がなって、門が発生した。そしてその中から出てきたのは、会話のトピックであった人物、みょうじなまえだった。ここまではおれの予測通りだ。
なまえは音を立てずに地面に着地する。その様子は、二年前のあの日から何も変わっていなかった。彼女の顔が上を向いて瞼を閉じる。肩を上下させていることから深呼吸したことがわかる。そのままゆっくりと瞼を開けて、視線をこちらへと向ける。おれを視認しても、何も動じることなく「こんにちは」と言ってのけた彼女におれは、やはり違和感を覚えるしかなかった。ここで未来が何本か増えた。きっと彼女と会ったからだろう。その先の未来をみたときに、この違和感の正体が分かった。ああ、なるほど。そういうことか。だったら尚更、向こうに帰しちゃいけないな。
「ひさしぶり、なまえ」