五条悟に捕獲された
「はぁ…まったく腐ったミカンのバーゲンセール共との会話は疲れるねっ。あーはならないように僕も気をつけよ。ネチネチネチネチ五月蠅くて敵わない」
上からの呼び出しを適当に流して、高専内の敷地を歩く。掛けていたサングラスを外していつもの黒い目隠しを目元まで引き上げようとした時だった
ほんの一瞬感じた違和感
五条自身も気を抜けば見逃してしまうほどの僅かな呪力の乱れ
しかしどこか記憶にあるような…
「…なんだ?」
ここ東京都立呪術高等専門学校は呪術界の要、天元様の結界で守られている。呪霊用の緊急アラートもなっていない。そう易易と部外者が侵入出来る様な場所ではないのだ。考えられるのは相当の手練か…
「調べてみるか」
違和感の正体を探るべく五条は高専内を歩き回る
五条の六眼を持ってしても正確に違和感の正体が正確に掴めないのだから気持ちが悪い
その時五条の視界をキラッと何かが横切った
「は?」
思わず声が出る
その光は極々微量な呪力の残穢
けどその呪力は現在高専に属している者たちのものではない
どうしてそんなものが高専内に漂っているのか
光の粒子はどうやらこの奥から風に乗って五条の元まで流れてきたようだった
五条がやってきたのは高専内でも人目につかないような場所
その場所に五条が感じた違和感がいた
そうあったのではなくいたのだ
「(違和感の正体はコイツか…一体どこから紛れ込んだんだ)」
真っ白な塊は丸まってピクリとも動かない
時折、すんすんと鼻をすする音が聞こえるのでどうやら泣いているらしい
「あー、君?なんで此処にいるのかな?返答次第じゃ君を捕まえなきゃいけないんだけど」
努めて優しく声をかけるとその白い塊はピクンと反応して五条の方に振り向くとスクッと立ち上がって五条に向かって突進してきた
ビタァンっ
オートで発動した無下限呪術により白い塊否、少女と思わしき者は五条に触れることはなく五条との間に出来た無限に阻まれた
「………」
「………イタい」
五条と少女の間に微妙な空気が流れた
「えっと…もしかしてなんだけどすみれだったりする?」
五条が名前を呼ぶと少女は顔を上げた
五条の青い眼と少女の紅い眼がかち合う
「さとるっ!」
今度は五条の無下限に阻まれることなく五条の長い脚にしっかりとしがみつくことができた
「…え?なにコレ?僕の都合のいい夢かなにか?それとも僕、知らないうちに誰かの術中にはまってたりする?」
「さとるぅ〜!会いたかったぁ」
わんわんと声をあげてなく少女を抱き上げると少女はしっかりと五条の首に腕を回してしがみついた
そして絶え間なく涙をポロポロと零す。その涙は少女の頬を伝って流れるが五条の服に染み込むことなくポトポトと地面に落ちて転がっていった
五条は地に落ちた涙の結晶を何個か拾い上げると顔を涙で濡らしている少女の目元を親指でグッと拭う
「あー、ほらすみれもう泣かないの」
「さとるっさとるっ」
「はいはい、さとるせんせーだよ〜」
五条が少女の頭を撫でると次第に少女の呼吸が安定してきているのがわかった。そして五条は自身に抱きついて離れない少女の正体を確かめるべく話しかけることにした
ことと次第によってはこの少女、すみれをジジイどもから隠さなければならない
「ねぇ…すみれ、君は本当にあの時のすみれなの?僕の眼が君のことをすみれだって認識はしているんだけど」
「うん…、すみれだよ。さとる、すみれのこと覚えてるんだね」
「そりゃあ覚えてるに決まってるでしょ。突然現れて俺たちの青春引っかき回して忽然と消えてくれちゃってさ。傑と硝子も夢を見てたんじゃないかって思ったくらいだよ」
…全く、心配したんだからな
五条の一際優しい声に少女の瞳から再び涙が零れ落ちる
「うっ、うー」
「ほらほら、そんなに泣いたら干からびちゃうよ。さ、行こっか。ちゃんと掴まっててね」
なかなか泣き止まない少女を抱きかかえたまま五条は自身の術式を使って飛んだ
ギュンっと何かに引っ張られるような感覚がしたあと少女が五条の腕の中で閉じていた目を恐る恐る開くと見覚えのある部屋が広がっていた
コツコツと足音を立てて部屋の中に進んだ五条は座り心地の良さそうなソファに少女を抱きかかえたまま深く腰を沈めた
「ここ…」
「覚えてる?」
「さとるとすぐるとしょーこの3人で遊んだところ…だけどちょっと違う」
「そ、すみれが消えてから10年経ったからね。それにしてもすみれはちっちゃいまんまだね、ウケる」
五条のその言葉に少女はムッとするとその顔をみた五条は少女の両頬を片手で掴んでムニュっと突き出された少女の口を見てまた笑った
「で?すみれはどうしてまたコッチに来た?」
真剣な声で五条に言われて少女はゴニョゴニョと口籠る
少女は自分の世界で見ていた悲しい情景を五条に伝えてもいいのかと悩む
…決別してしまったさとるとすぐる
…今、目の前にいるさとるはわたしのことを覚えているさとるだった
…ということは、すぐるはもう、此処にはいないのかもしれない
「すみれ?」
「あのね、さとるっ…すっすぐるは?」
「はぁ?傑?」
素っ頓狂な声を上げた五条にビックリして少女は五条を見上げる
五条は五条で何を言ってんだコイツはという顔で少女を見ていた
「うん、すぐるはいる?」
「居ねぇけど」
「いな…い?」
ピシャーーーンと雷が落ちたようなエフェクトが見えた気がしたあと明らかにしょんぼりとした表情を見せる少女の頭を五条は撫でた
…やっぱり、すぐるは居ないんだ。
「何を勘違いしてるのか知らないけど"今は"居ないよ。任務に行ってるからね」
「に…んむ?」
「そうだよ。アイツも僕と同じ特級呪術師が一人だからね〜忙しいのさ」
「すぐるっ、生きてるの?!」
「勝手に殺すなよ、可哀想だろ」
…生きてたっ!生きてたっ!すぐるっ!!
「なに?すみれってば傑がそこら辺の奴に殺られるような奴だと思ってたの」
…違う、さとるとすぐる喧嘩してバイバイしちゃってそれっきりだったんだよって言いたいけど言っちやいけない気がするの
ケラケラ笑ってる五条に夏油が生きていて五条の傍にいる事実に嬉しくなって少女はぎゅうぎゅうと五条に抱きついた
「さとるっ!すぐるに会いたい!」
「だ〜か〜ら〜、傑は任務!今日は帰って来ないよ。だからすみれ、今日は硝子に会いに行こっか」
夏油には会えないと言われてしょんぼりした少女だが家入に会いに行こうと五条が提案するとパッと笑顔を輝かせて五条の腕の中から飛び降りるとタッタッタッと駆け出して元気よく談話室のドアを開け放った
「しょーこ!行く!」
うおっ?!え?女の子?なんで?
あれ?悠仁どしたの?
どしたのって五条先生が俺を呼んだんじゃん
あれ?そうだっけ?
そうだよ、で?俺に用事ってなに?