五条悟が帰ってくるまでの間

「遅いぞ、悟。怒るほどでもない遅刻をする癖、直せと言っているだろう」

「怒るほどのことでもないなら言わないで下さいって言ってるじゃないですか」

夜蛾学長の居る部屋の襖を開けば開口一番にお小言が飛んでくるのもいつものことなのでそれを軽く流して夜蛾学長の正面に腰を下ろす

「で?今日はどんな内容なんですか?学長も知ってるでしょ僕、こう見えても忙しいんですけど」

「手短に終わらせるつもりだ」

「そりゃ良かった」

軽口を叩けば睨み返されるも僕と夜蛾学長の仲なので特に怒られることもない

「ところで悟、今日は機嫌が良さそうだな」

「あ、わかります?運命の出会いをしましてね。もう二度と会えないと思ってたんで、なんなら今も夢だとも思ってますよ。いや〜、こんな奇跡みたいな事ホントにあるんですね。あ、今度夜蛾学長にも紹介しますよ」

「ほぅ、ついに悟も身を固めることにしたのか。どこのお嬢さんなんだ」

「ヤダな〜、夜蛾学長ってば。僕にそんな人居るわけないじゃないですか」

「身を固めるんじゃないのか?」

「なんで?」

「運命の出会いと言っていたじゃないか、違うのか」

「違いますけど」

話が噛み合ってないなと思っていたら案の定、夜蛾学長は僕に将来の伴侶が出来たと勘違いしていたらしい。僕は声を最大限落として呟く

「夜蛾学長、すみれって名前に記憶はありませんか?」

「すみれだと?」

僕がすみれの名前を出すと夜蛾学長の眉がピクリと動いた。その行動から察するに夜蛾学長もすみれのことを憶えてるということ

「あの娘がこの世界こっち側に帰ってきたんですよ。この意味が夜蛾学長ならわかりますよね?」

…あの時の学長の顔、傑作だったなぁ

伊地知が運転する車の中で一人思い出して笑ってしまう

高専に戻ってきた僕はアイマスクを外してすみれの呪力を探す。すみれの呪力は通常の呪術師が出力できる赤や青、呪霊が放つ黄色のどれにも当てはまらない。特殊な色でその容姿に倣った様に真っ白で穢れがなく清廉だ

高専をグルっと見渡せばある一点でキラキラと光輝くすみれの呪力。探し者は此処に在りますよと言わんばかりにその存在を見せつけてくる

「ホントに相変わらず綺麗で惚れ惚れしちゃうよ、まったく。この呪力に短い間とはいえ中てられてたからあの時傑は…堕ちずに済んだのかもしれない。傑が敵とか考えたくもないけど…ありえない未来じゃなかったのかもしれない」

ゾワゾワと普段感じもしない悪寒に身体を震わせる

「ヤダヤダ、こんな事考えるなんて僕も年取ったかな」

アイマスクを元に戻して、僕はすみれや悠仁たちが居るであろう稽古場へと向かうことにした

†‥虎杖side‥†

お腹がすいたと言い出したすみれと伏黒や釘崎にチャーハンをご馳走し、食べ終えた俺たちの足は自然と高専内の稽古場に向かっていた

「ゆーじー、チャーハン美味しかった!また作って!」

「任せときな!他にも色々作ってやんよ」

「っていうか、私は虎杖の料理のスキルに驚いたわ」

「同感」

「えー、そうかなぁ。伏黒も釘崎もちょっとやればパパッと作れるようになるって」

そんなに難しいことか?と思い釘崎と伏黒を見ればこの世の終わりみたいな顔で俺を見ていた

…なんで?

「ゆーじ!ゆーじ!すみれは?すみれも作れる?作ったらさとる喜ぶ?」

俺の腕の中に居るすみれはその宝石のように赤い瞳で俺を見あげてくる

「五条先生なら泣いて喜ぶかもな。今度、すみれでも作れるやつ一緒に作んべ」

「うん!」

「すみれが作ったものなんて勿体なさすぎて食べれな〜い、まで想像してしまった私って」

「普通だろ、俺も思った」

稽古場について俺たちは自然と和になって座り込んだ

「なんとなく稽古場ここに来ちゃったけどさ、食ったばっかで動いたらヤバくね?」

「そうよね、流石に少し休んでからにしましょ。それに身体を動かすならジャージに着替えたい」

隣に腰を下ろしている伏黒を見ると手を組んで影絵を作っていた

「そうだ!伏黒、身体動かすのはまだちとアレだけど玉犬は出せたりすんの??」

「は?」

「ぎょっけん?」

「俺の式神」

「すみれ、見たい!めぐみ、出して!」

キラキラとした瞳ですみれが伏黒を見ると仕方ないなという顔で伏黒が玉犬の印を組んで二体の式神を呼び出した

「わんちゃん!」

「いや、わんちゃんじゃなくて白と黒って言うんだ」

「しろ?」

「ワフ」

「くろ?」

「ワフ」

すみれの呼びかけに一匹ずつ返事をするように声をあげる伏黒の式神たち

そのうちの一匹、白にすみれはしがみついた。真っ白なすみれと体毛が白い玉犬白

どっちも白くて境目がわからん、あっでもすみれの方が若干青みがかった銀色だからほんのり分かるかも

じゃれ合うすみれと白に気に入らなかったのがもう一匹の玉犬、黒

己も撫でんかといわんばかりに白とすみれの間に鼻先を潜り込ませている

「癒やされるわ」

「なっ」

俺はそっとすみれの側に近づいてすみれを抱き上げると黒の背中に乗せる

「ゆーじ?」

「すげ、玉犬ってすみれが乗っても潰れないのな」

「そんなに玉犬は弱くねぇよ」

「おおおお!すご〜い!」

すみれが楽しそうに声を上げた時だった

「すみれ〜!パパが帰ってきたよ〜」

すみれの保護者、五条先生が帰ってきた

†‥虎杖side‥


稽古場に顔を出すとすみれが恵の玉犬に乗っかっていた

「すみれ〜!パパが帰ってきたよ〜」

僕のその声にすみれより先に稽古場の入口付近に座っていた僕の可愛い生徒たちが反応した

「お!五条先生お帰り!」

「まだそのネタ引っ張ってんのね」

「…」

…三者三様のお出迎えをされた

「さとる!」

玉犬の上からぴょんとすみれが飛びおりて僕の方へと駆け出すと同時に恵の玉犬が影へと還って行く

「さとるっ!おかえりっ!」

「ただいま、良い子にしてた?」

「うん!ゆーじものばらもめぐみもみんなすみれのオトモダチ!」

僕は駆け寄ってきたすみれを片腕でひょいっと抱き上げるとさも当たり前のように僕の首に腕を回してくるすみれの頭を撫でる

「さ、すみれ今度こそ硝子に会いに行こっか」

「うん!しょーこにすみれも会うっ」

「じゃ、悠仁、恵、野薔薇、すみれのことありがとね。また遊んでやってね。僕もずっと一緒に居られるとは限らないからさ」

「ゆーじ、のばら、めぐみ!バイバイ!」

五条悟が帰ってくるまでの間
虎杖、伏黒、みた?すみれの顔
すっげぇ嬉しそうだったな
あんな顔されたら勝てないわよね〜
そりゃ五条先生だし
意味分かんないわよ

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