家入硝子との再会
「やっほ〜硝子〜!」
「帰れ」
悠仁たちと別れて僕はすみれを連れて硝子のいる医務室のドアを思いっきり開けた
硝子とすみれの感動の再会!って思ったのに硝子の態度は僕のいつものそれと全く同じ
医務室のドアを開け放った僕に見向きもせずにひたすら書類にペンを走らせている
「えぇ〜、硝子ぉ〜。そんなこと言っていいの〜?せっかく硝子のためにプレゼント持ってきたのに」
「お前からのプレゼントなんて要らん。仕事の邪魔だ帰れ」
「…しょーこ」
すみれがポツリととても小さな声で硝子の名前を呼んだ
「しょーこ、すみれの事忘れちゃった?」
すみれの声に硝子がガバっと僕たちの方を向き、その表情はありえないという顔をしていた
…そうだよね、僕だって未だにこの腕の中にあるすみれの存在に戸惑ってる1人なんだから
「おい、五条。これは何の冗談だ?質の悪い悪戯ならただじゃ置かないからな」
「冗談じゃないってば。正真正銘、僕らのアオハル引っ掻き回した電波少女のすみれだよ」
「ホントにすみれなんだな?」
「しょーこ」
僕の腕の中から下りたすみれがテクテクと硝子に近づいていくがあと少しというところでピタリとその歩を止めてしまう
「…すみれ」
硝子が椅子から下りてその場に膝を折ってしゃがんだ
「おいで、すみれ」
腕を広げた硝子にすみれが飛び込む
「しょーこ!しょーこ!」
「はいはい、まったく急に消えて心配したんだからね。おかえり、すみれ」
小さなすみれの手が硝子の着る白衣を力いっぱい握りしめている
硝子がすみれの身体を抱きしめている様子に迷子になってしまっていた子どもが母親をやっとの思いで見つけ出して再会した場面に見えた
…この場合、迷子の子どもはすみれでしょ。で、母親は硝子。ってことはすみれは僕に似ているわけだから…
「え?僕と硝子とすみれって家族だった?!」
「は?何、バカな事言ってんの」
硝子に絶対零度の視線を受け、僕は視線で硝子に話があると伝えると硝子も1つ頷いた
すみれを医務室のソファに座らせて、すみれの前に僕が後で食べる予定だった喜久水庵の喜久福を箱から出して1つ置く
「すみれ、僕と硝子ちょっと大事な話するから
「うん」
僕は硝子を連れて医務室を出る
「で?五条、アレはなんだ?」
「すみれだよ」
腕を組んでいる硝子に僕の知りうる情報を全て硝子に話した
「仮にあの子が私達の知っているすみれだとしたら辻褄が合わないだろう。すみれは10年前に確かに私たちと同じ時代を過ごした。でも10年後の今もあの時と姿形が変わってないのは説明がつかない」
「硝子。そもそもすみれは人間じゃなかったんだよ。僕の六眼を持ってしても高専の時代には気づかなかった」
「人間じゃない?」
「そもそも呪力が真っ白っていうのがありえないんだよね」
「白い?」
「そ、すみれの呪力。真っ白なの。なんの穢れもない本当の白。その特異な呪力のせいなのかはまだよく掴めてないけどすみれのあの力は下手したら天元様より上位の存在かもしれない」
…すみれが現れたり消えたりしても天元様がなにも言ってこないということはすみれのことを黙認してるのか天元様でさえ手を出すことの許されていないかのどちらかだ…と僕は思ってる
…もちろんこのことは夜蛾学長には伝えてあるけど
「仮に上の連中がすみれの存在を知り得た場合、存在を認める理由がない…か」
「そゆこと。まぁ僕もすみれの存在をわざわざ公表するつもりはないよ。でもどこですみれの
「わかった」
「僕、硝子のそういうとこ好き」
「夏油には?もう言ったのか?」
「まだ。傑もタイミング悪いよねぇ。確か泊りがけの任務だって言ってたし今日は帰って来ないでしょ」
僕は今は任務でいない、もう一人の同級生を頭で思い浮かべた
「10年前のあの日、傑はもしかしたら僕たちの前から消えていたかもしれない。呪詛師となって」
「…。」
「そして呪詛師になればもちろん、処刑対象だ。ソレになった傑に手を下すのは恐らくこの僕だ。というか絶対に僕。他のヤツに殺らせてたまるか。そしてその
…すみれは僕の顔を見て泣き出したんだよ。傑は?傑はどこだって。いないよって言ったらこの世の終わりみたいな顔をしてたよ
「それの後にすみれ、傑が今も僕や硝子の元にいるよって言ったらなんて言ったと思う?」
…傑っ!生きてた!って
「そうか…」
きっと硝子も思っていたことだろう。傑が起こしたあの事件は一歩間違えたら…と。
一定期間の謹慎と術式封印で済んだのはラッキー以外の何ものでもない
その後は馬車馬の如く働かされてて、ウケるって硝子と二人で指さして笑ってやったんだ
「積もる話もあるけどさ、それは傑が帰ってきてからにしない?」
「五条、呑めないじゃないか」
「なんで酒が前提なの。すみれもいるんだから酒はナシでしょ?」
「は?下戸は知らん。私と夏油は呑むぞ」
硝子との話を終えてガラッと医務室のドアを開けるとその音に反応したすみれが顔を上げる
その顔は喜久福の周りについている粉やクリームまみれだった
「え…ちょっとすみれ食べんの下手くそじゃん」
「あっはっは!すみれ、最高!」
「んむ?」
僕は急いですみれの座るソファーに駆け寄るとすみれの小さな手や口まわりを拭ってやる
「あ〜こんなに汚して!!」
「五条、完全に父親じゃん」
「しょーこ!さとるはすみれのパパじゃないの!」
「あーはいはい、わかったわかった」
あ!すみれ!喜久福全部食べちゃったの
わかるぅ〜僕もずんだ生クリームが一番すき
すみれ、あーん
あー
あれ?!なんで硝子、喜久福持ってんの?!
箱、空っぽだったよね?!え?僕のは?!