雪うさぎと伊地知
「ゆーじたちどっこかなー」
家入と夏油、それから菜々子と美々子の連絡先を手に入れたすみれは虎杖たちを探して高専内を彷徨いていた
すみれの後を大人しく着いてきていた呪骸のオリヴァーはいつの間にか自分で歩くことを止めてすみれの背中にしがみついている
するとオリヴァーがその短い腕伸ばしている。すみれがその腕の先に視線を向けるとそこには黒いスーツを身にまとった補助監督の伊地知がいた
「いじちぃ〜」
すみれは声を上げて先を歩いている伊地知を呼んだ。自身の名前を呼ぶすみれの声に振り向いた伊地知は駆け寄ってくるすみれの姿を視界に捉えると歩みを止めてすみれが追いついてくるのを待っていてくれた
「どうかしましたか?すみれさん」
「いじち!ゆーじたち知らない?」
「虎杖くんたちですか?それなら…」
すみれに問われて伊地知はこれから虎杖たちを迎えに行くことをすみれに伝えた
「任務が無事に終わったとの報告がありましたのでこれから虎杖君たちを迎えに行くところですが、すみれさんも一緒に行きますか?」
「行く!」
伊地知の横をテコテコと歩くすみれはハッと思い出したのか伊地知のズボンを引っ張った
「え?」
「いじち!すみれとお友達になって!」
すみれにそう言われた伊地知はすみれと出会ってしばらく経つが自分が今まで友達ですらなかったのか、友達だと思っていたのは自分だけだったのかとショックを受けた
「すみれさんと友達だと思っていたのは…わ、私だけだったんですね。すみません、厚かましくて」
「ん?すみれといじちはオトモダチだよ?」
「え?でも、今すみれさん私と友達になりたいって」
「うん!」
どうしても噛み合わない話に二人して首を傾げているとすみれにしがみついていたオリヴァーがすみれのネックストラップを軽く引っ張った
「あ!いじち!すみれの言ってるお友達はコレのお友達!」
すみれはスマホを伊地知に見せる
「さとるからすみれ、スマホ貰ったの!それでねさとるがねお友達たくさん登録しておいでって。だからねいじち、すみれとお友達になって」
なるほどそういうことかと伊地知はホッと胸を撫で下ろした
「では、すみれさん。こちらのQRコードを読み取ってください」
スマホを持ったままなかなか動かないすみれに伊地知は首を傾げる
「どうかしましたか?すみれさん」
「あのね、いじち。すみれ、やり方わかんないの。あとでゆーじに教えて貰おって思ってて」
しゅんとしたすみれに伊地知は慌てた。何故ならすみれにしがみついたオリヴァーの眼がキラリと光り何すみれを泣かしとるんじゃという具合で腕をグルグルと回していたからだ
「ご、誤解です!オリヴァーさん。わ、私は決してすみれさんを害そうとしたわけではなくてですね…」
「え?ダ、ダメだよ、オリヴァー。いじちのことイジメちゃ」
すみれにそう言われてしまうとさすがにオリヴァーも分が悪いのかグルグルと回していた腕をスッとしまった
「えっと虎杖君たちに教えて貰う予定だったんですよね?どうしますか?僭越ながら私がお教えしましょうか?」
「教えてくれるの?」
「はい」
「じゃあ、すみれに教えて!いじちっ」
…これが癒やしというやつですかっ!
五条の無茶振りに普段から振り回されている伊地知はすみれの笑顔に心臓がきゅっと縮まった感覚がした
伊地知とすみれは車に移動すると運転席には伊地知、助手席にすみれが座りすみれは伊地知に友達登録の仕方を教わりながらスマホを操作する
「いじち、どうするの?」
「まず緑色のアイコンをタップします」
「うん」
すみれの指が緑色のアイコンをタップする
「その次に右上の…そうです。」
1つ1つを伊地知とすみれは確認しながら操作を続けるとすみれの友達一覧に伊地知の名前が増える
「いじち!いじちの名前が増えたっ!」
「はい、大丈夫そうですか?」
「うん!ありがと!いじち!」
「では、虎杖君たちを迎えに行きましょうか。シートベルト締めてくださいね」
「はーい!あ、ちょっと待って!すみれ、後ろがいいのっ」
「かしこまりました」
靴を脱いで運転席と助手席の間を器用にすり抜けたすみれが後部座席に座り、シートベルトを締めたことを確認すると伊地知はゆっくりと車のアクセルを踏んだ
「ゆーじたちとも早くお友達になりたいなぁ
あ、いじち!あとでスタンプってやつも教えてね」
「かしこまりました」
…………………
「あれ…すみれのやつ、もしかして高専出た?」
「私と連絡先を交換した時は一人だったけど?
というか悟…
なんですみれが外に出たってわかるんだい?」
「なんでって、すみれには僕の眼があるから」
「やっぱりあの宝石には仕掛けがあったのか」