悠仁と恵と秋葉原

「ゆーじー!あーそーぼー」

「んあ?すみれ?五条先生はどったの?」

「さとるどっかいったー」

オリヴァーを抱えたすみれが学生寮の俺の部屋のドアを叩いた

「あっ!ならさ俺、ちょっと行ってみたいとこあんだけどすみれ一緒に行かね?」

「いくー!」

「虎杖、お前ら出かけんのか?」

俺とすみれが部屋の前で喋っていると隣の部屋の伏黒が頭をかきながら出てきた

…絶対コイツ今まで寝てたな

「俺さ、東京に来たときからアキバに行ってみたかったんだよなー。銀座とか六本木とか渋谷とかそういう場所じゃなくてさ」

「何か欲しいモンとかあんのかよ。たぶんマンガとゲームと家電ぐらいしかねーぞ。あそこ」

「ねーよ、観光。テレビとかで見てるとさやっぱりアキバって東京って感じしなくてさ、どこか異世界ファンタジーって感じしね?」

「そういうもんか?」

「すみれとかアキバにいそう。レアキャラで」

五条先生も日本人離れした容姿だけどすみれも人間離れした容姿の持ち主だし、なんかどこかの世界から紛れ込んだキャラって言われた方がしっくりくる

…まぁ実際五条先生曰くすみれは人間じゃねぇからあながち間違いではないと思う

そうして俺と伏黒とすみれの3人で秋葉原にやってきた

「ゆーじー。ココがアキバ??」

「すげぇ…」

駅から出て電気街を少し歩いただけなのに圧倒されるほどのゲーセンの数、グイグイ話しかけてくるメイド姿の女の人、ちょっとアレなゲームやその広告看板。ありとあらゆるものが俺の好奇心を刺激した

「やべぇ…伏黒っ!やべぇって!!」

「うるせぇな!!!…って、おいっ、虎杖!すみれ何処いった?」

「え?すみれ?一緒にいな…っていない?!うっそ、はぐれた?マジで??」

俺の隣を歩いたはずのすみれが忽然と姿を消していた。五条先生にはすみれを外に連れ出すのは構わないけど絶対に目を離すなと言われてた

「伏黒、ヤバい。俺たち五条先生に殺される」

「はあ?」

伏黒に事情を説明すると伏黒の顔からも血の気が引いていった

「なんで目を離したんだよ!バカっ!」

「まさかはぐれるなんて思わないだろっ!」

「ゆーじー、めぐみー!みてー!」

ヤバいヤバいと慌てて二人でそれぞれ別々の方向に駆け出そうとしたその時だった。すみれの声が後ろから聞こえたのだ

「すみれ!ってなんだその格好?!」

すみれの声に振り向けばどこぞのお姫様みたいな格好に変わっていて背負っていたオリヴァーはすみれに抱えられていた

「あのおねーさんがやってくれた!」

「え?!」

すみれが手を振っている先に視線をやるとブンブンと手を振ってる人がいた。サービスよ〜という野太い声が聞こえたのは気の所為だと思いたい

「すみれ、かわいい?かわいい?」

「めっちゃかわいい…な!伏黒」

「俺に振るなよ…ま、いいんじゃないか」

「じゃお手をどうぞ。お姫様」

すみれの手を取って再び伏黒と3人で秋葉原の街を歩いていく。その度に道行くメイドやコスプレイヤーと呼ばれるような人たちからめっちゃ声をかけられた。すみれが

…かわいい〜兄妹ですか?

…親戚の子ッス、めっちゃかわいいっしょ?

…お兄ちゃんと一緒でいいね〜

…写真撮ってもいいですか?

…SNSには上げないでもらえますか?

「いや〜、伏黒がついてきてくれて良かったわ。この辺ごちゃごちゃしてるしすみれと二人っきりだったら間違いなく迷子だな。現にすみれと1回はぐれたし」

「新宿よりマシだろ。というかすみれがはぐれたのは虎杖がちゃんとすみれと手を繋いでないからじゃねぇか」

「そういう東京感覚さらっと押し付けんなって。自販機が軒並み電子マネー使えるとか、店先にペッパー君立ってるとかそういうの東京だけよ?すみれに関しては俺が悪いけど」

「いやペッパー君はそんなに頻繁に立ってねぇよ」

「ねぇ、ゆーじ。ぺっぱーくんってなに?」

「んー。ロボット!なんか白くて人間みたいなやつ。仙台だと人工温泉とぽすぐらいでしかみたことねぇけど」

「地元ローカルの店名を当たり前のように出すな。どこだよそれ」

「スーパー銭湯」

「スーパー銭湯にペッパー君居る方が文明レベルやばくねぇか」

「ま、なんにせよ伏黒が居てくれて助かったわ。俺、未だに地下鉄とか苦手だし」

「すみれ電車乗らないからわかんない」

「な!」

「ねー」

「山手線内で迷う奴いるか?」

「あー!出たよ都民感覚」

「実際もうそこまで迷わないだろオマエ。連日あちこちどこかに行ってるじゃねぇか。すみれは別だけど」

伏黒がブツブツと何かを言っていたが俺は鼻孔を擽られたある匂いにとっさに反応した

「あ、伏黒ケバブ食おうぜ!ケバブ。すみれも食べるだろ」

「けばぶ?ゆーじが食べるならすみれも食べるー」

「会話をしろ!オイっ!」

俺は伏黒の声を無視してすみれの手を引いてケバブの路上販売車の前にくるとケバブを1つ注文した

すると店員がすみれをみてオジョウチャンカワイイネ!コレサービス!といって小さめのケバブをすみれに渡していた

「ありがと」

「サンキュー」

食べ歩きもどうかと思ったので道の端に寄ってすみれと買ったケバブに齧り付いた

「おいひー」

「うまっ!」

ケバブをもしゃもしゃと食べきった俺たちを待っていたのは伏黒とはぐれたという事実だけだった

悠仁と恵と秋葉原
「伏黒いねぇな」
「めぐみ、まいごー?」
「いや、迷子はどっちかっつーと俺たちだな」
「ゆーじまいご!」
「言っとくけどすみれもだからね!」
「すみれもまいごー!」

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