迷子の愛うさぎ
すみれはポツンと一人迷子になっていた
大都会新宿で
五条に電話をかけても、虎杖に電話をかけても(ホントはダメだけど…死んでることになってるし)、夏油にかけても、伏黒にかけても…釘崎にかけても誰も出てはくれなかった
「むぅ…だれも出ない」
すみれは気づいていなかった
とある新宿の公園を中心に用途不明の帳が覆っていてすみれはその帳の中に知らず知らずの内に紛れ込んでしまっていることに
帳の中にいるすみれのスマホは圏外表示。圏外表示が出ている時、スマホが繋がらないということを知らないすみれはぷぅっと頬を膨らませてオリヴァーを背負い直すとテコテコと人波みを縫って歩き始めた
迷子になったとき、その場は動かないこと
五条や夏油、家入にそう言われていたこともすっかり忘れて
新宿の街を歩いてしばらく経った頃、すみれは公園の近くにあるパン屋の存在を思い出した
タッタッと駆け出してパン屋のドアに手をかけて引くもドアはビクともしない
「おねーちゃん!すみれだよ、開けて!」
トントンとドアを叩いても誰も出て来ることはなかった
人はたくさん歩いているのにその誰もがすみれのことが見えていないようだった
横断歩道を渡っているときトンっと誰かにぶつかってごめんなさいと謝ってもぶつかった人は何にぶつかったのかわからずに首を傾げるだけ
「なんで…みんなすみれが見えてないの?」
とぼとぼと肩を落として横断歩道を渡っていると反対側から見知った服を来た人が歩いて来るのが見えた
「っ!すぐる!!」
見知った服、僧衣を咄嗟にぎゅっと握る
…すぐるだ!すぐるがいた!
傑に会えた、そう思ったすみれが顔を上げると確かに顔は傑なのだが傑ではないダレかだった
傑だと認識していた顔はぐにゃりと歪めて全く違う顔が現れる
「すぐる…じゃない」
パッと掴んでいた僧衣を離したすみれを冷たい目で見下ろす夏油に似た誰かはすみれが掴んだ所をパンパンと叩いて僧衣を翻しながら人混みに姿を消した
「………ふぇ…」
…怖かった、すぐるだと思ったのに…すみれのこと睨んだ…
すみれはなんとか以前、五条と七海と一緒にパンを食べた見公園に辿り着くとベンチに座り膝を抱えて丸くなった
ひっくひっくと声を上げて泣いていると何かがすみれの隣に座った感じがした
「だぁれ?」
「遘√〒縺吶°?」
「うん」
「遘√′隕九∴繧九s縺ァ縺吶°」
「見えるよ」
「縺昴≧縺ァ縺吶°」
すみれの隣に座ったのは明らかにヒトとは違う何か。でもすみれがよく知る呪霊のナリとも違う、けどきっとコレも呪霊と呼ばれる類なのだろう
…そもそもすみれは呪霊=蠅頭という知識しかない
何を言っているのかはわからない。でもすみれの頭に直接語りかけてくる何かは一人ぼっちのすみれをとても安心させた
すみれの目尻に溜まった涙をその何かは優しい手付きで掬い取るとパクりと食べた
その行動にすみれは目を見開く。だってその涙から出来たアメは呪霊にとっては毒のハズだから。そしてすみれは自分の隣にいる何かが自分の知っている呪霊とは違ったが同じ呪霊なのだと感覚的に解っていた
「食べちゃったの」
「不思議な味ですね」
「!」
「あら、私の言葉が聞こえますか?」
うんうん、とすみれは頷く
「本来食べるべきではないとわかってはいましたがどうしても貴女と話がしたかったのです。
「めご?うさぎ?」
「はい、愛うさぎ」
「すみれ、うさぎって名前じゃないよ?」
「ふふ、わかってますよ。でも私とってはかわいいうさぎなのです」
「ふーん」
呪霊はすみれの頭に手を乗せると優しく撫でる。それから少しの間、呪霊はすみれと言葉を交わした。
ピクリと反応して呪霊が空を見上げる
「どうしたの?」
「そろそろお別れのようです。帳が上がります。きっと愛うさぎの仲間が迎えに来ますよ」
「名前、貴女の名前は?」
「私の…名前ハ…闃ア蠕。」
「???なんて?」
「闃ア蠕。」
「わかんない…聞こえないよ」
アメの副作用なのか、食べる前は何を言っているのかわからなかったけど頭に直接流れてきていた呪霊の言葉が今は聞き取ることも出来なければ頭に流れてきてもわからない
「また、会える?」
「莨壹∴縺セ縺吶h」
呪霊はポンっと小さな花を出してすみれの髪に挿した
「すみれ!」
「!」
名前を呼ばれて振り向くと五条が目元のマスクを取ってその綺麗な六眼を晒して脇目も振らずにこちらに駆けてきていた
「さとるっ!」
すみれは座っていたベンチからぴょんと飛び降りると五条に向かって駆け出す
「良かった…無事で」
「さとるっ」
すみれは五条に抱きついてぎゅうっと五条の衣服を握りしめる
その手が震えてることに気づいた五条はすみれを抱き上げると背中をトントンと優しく叩く
「さとる…」
「ここにいるよ、すみれ」
「さとる、すみれね。また一人ぼっちになっちゃったのかと思った。みんなねすみれのこと見えてないの…さとる、ちゃんとすみれのこと見えてる?」
「当たり前でしょ。じゃなきゃ僕、すみれのこと抱っこしてあげられないよ」
「んーー」
「ほら高専かえろ。傑も硝子も恵も、野薔薇も七海だってみんなすみれの帰り待ってるよ」
「ゆーじも?」
「もちろん、ゆーじもあの部屋で待ってるよ」
五条がすみれを抱き上げたまま公園を出ると伏黒と釘崎がそこにいた
「「すみれ!」」
「もー!すみれ、どこに行ってたの?!心配したでしょ」
「のばらー」
五条の腕からすみれを奪い取った釘崎はすみれをぎゅうっと抱きしめた
「まったく、無事でよかったわ。すみれまで居なくなったら私…」
「ん。のばら、すみれ此処にいるよ」
「ええ。あら?この花飾り誰に貰ったの」
「すみれのお友達ぃ〜」
「結局、この辺りに降りてた帳ってなんだったんですかね?」
「なんだろうね…すみれを隠された時は冗談抜きで心臓止まりかけたよ…それに」
「あの花飾りですよね」
伏黒と五条はすみれの髪に挿してある小さな花飾りを見る
「変な残穢だな、すみれにちょっかいを出したのは呪霊に間違いないんだけど…」
「他と違うんですか?」
「んー、なんて言ったらいいかな。悪意…負の感情が見えないんだよね。アレ。隠すのが上手いだけか?」
「そんなことがあるんですか?」
「いや、普通はあり得ない。だから変なんだよね」
「はぁ」
「ま、高専帰ってから調べるよって…あ!」
「…食べましたね、オリヴァー」
伏黒と五条の目に映ったのはすみれの髪に挿さっていた花飾りを無情にもむしゃむしゃと食べているオリヴァーだった
「こら!そこの呪骸!大事な証拠食べんな!!」
「花御!何処に行っていたのだ!」
「諢帙≧縺輔℃縺ョ縺ィ縺薙m縺ク」
「聞いた儂がバカだった、喋るな!脳に直接響く!」
「勝手に行動されると困るんだがね」
「縺ゅ↑縺溘↓縺ッ髢「菫ゅ≠繧翫∪縺帙s」