近寄っちゃイヤ!
七海はふと自身の身体が揺らされている感覚を感じ取りゆっくりを瞼を持ち上げた
パチパチと数回瞬きをした七海の目の前にはニンマリと笑った五条の顔あった
「七海ぃ〜おはよー」
「…」
「オイオイ七海ぃ〜無視すんなって」
「私としたことが…」
すみれさんと北海道のガイドブックを眺めていたはずなのだが気づけば二人してうたた寝をしていたらしい。五条さんに肩を揺らされるまで気づかなかった自分が情けなかった
「疲れてんだろ。ま、たまにはいいんじゃない?すみれ、ポカポカして温かかったでしょ?」
五条さんの言葉に視線を下ろすと自身に寄りかかったままスヤスヤと未だに寝息を立てているすみれさんがそこにいた
子ども体温とでも言うのだろうか、確かに五条さんの言うとおりすみれさんが寄りかかっている部分はほんのり温かいなと思っていた
「でさ、七海。明日からの北海道任務だけど」
「ホントにアナタも来るんですか?」
「行くよ〜。大事な話もあるしね」
「此処では出来ないんですか?」
「七海、察しろよ」
突然声を落として私の耳元で囁いた五条さんに訳あり案件か…これは面倒くさくなりそうだと腹を括ることにした
そんな五条さんは未だに寝息を立てているすみれさんを起こしにかかっていた
「すみれ〜。悟くんが迎えにきたよ〜」
「ん"〜」
ツンツンとふっくらとしたすみれさんの頬をつついてすみれさんを起こそうと声をかけ続ける五条さんにヤダと言わんばかりにすみれさんは顔を反らすと私の胸に顔を押し付けた
「さとる、うるさい…」
「おい、七海。そこ代われ」
「お断りします」
「すみれ〜。すみれがおかえりって言ってくれないと悟くん泣いちゃうよ」
「んむ…」
そのまま寝かせておいてあげればいいものをどうしても五条さんはすみれさんを起こしたいらしい
「すみれさん」
私がすみれさんの名前を呼ぶとすみれさんはぎゅっと目に力を入れて瞼を持ち上げた
すみれさんの紅い宝玉が私を映す
「…ななみん」
「おはようございます。五条さんが迎えに来ていますよ」
「さとる…」
寝ぼけ眼で五条さんを探すすみれさんに五条さんが顔を見せるとすみれさんは首を振って私に抱きついた
「や!さとる、や!」
「え?な、なんで?すみれ?」
「さとる、くさい…」
「え?!く、くさい?!嘘でしょ…。ねぇ!七海、僕くさい?!」
…知りませんよ、と一蹴してもいいかと思ったのですがあまりに必死な五条さんの姿に若干引きながらも五条さんが近づいて来るので仕方なくスンっと嗅いでみた
「特にくさいとは、思いませんが…」
「でしょ?そうだよね?自分じゃわかんないけどさ!」
「ちがうの〜。いつものさとるのにおいじゃない〜」
「いつもの僕の匂い…なにそれ…香水?変えてないよ?」
クンクンと自分の匂いを嗅いでは首を傾げる五条さんがそこにいた
「ふむ…あれじゃないか?悟」
「え?なに?傑、原因分かったの?」
今まで私達3人のやり取りを静観していた夏油さんは思い当たる節があるのか五条さんに話していた
「私達、此処にくるまで何処にいたか覚えてるかい?」
「はぁ?傑、オマエもうボケたの?どこって…ミカ…あ…」
「そういうことだよ。この様子だと悟だけでなく私も嫌われてそうだ」
「そうだよ!傑、オマエだけすみれに拒否られてないのズルい!!行け!」
「拒否されると分かっているのに近づかないだろう。普通」
会話から察するにどうやらすみれさんは上層部の匂いを嗅ぎ取ったらしい。部屋の匂いなのか考えたくはないが加齢臭なのかそれともその両方なのか、はたまた違うものなのかは私ではわからなかった
「すみれ、このにおいキライ…」
「はぁ…五条さんも夏油さんもココで言い争ってないで着替えてきたらいかがです?それで匂いは取れないと思いますが…」
「「はっ!」」
「すみれ、すぐ帰ってくるから待っててね!」
ガラガラと勢いよくドアを開け放ち出ていった五条さんを追いかけるようにゆったりとした動きで夏油さんも続けて部屋を出ていった
「すみれさん」
「なぁに?」
「五条さんが戻ってくるまでるるぶの続きでも見ますか?」
「うん!」
「すみれ!僕、もうクサくない?!」
「五条さん…アナタって人は…」
「さとる、びっちょりだからイヤー」
「すみれ」
「すぐるー!」
「ちょっ!すみれ!」
「すぐる、いいにおい」
「はは、良かったよ」