よわっちくて悪かったな
虎杖のいる秘密部屋を出たすみれは釘崎や伏黒を探して校舎内をタタタと音を立てて走っていた
「すくなー。のばらとめぐみはどこにいるかな」
「カナヅチ娘は知らんが伏黒恵なら外にいる」
「ありがと」
宿儺の呪力の一部が入り込んだ呪骸を抱きながらすみれは校庭へ出るために踵を返す
「小娘」
「なぁに?」
「小僧は死んだことになっているんだろ?」
「うん、さとるがナイショって言ってた」
「俺が喋っていると小僧が生きているとバレかねんからな。外に出たら俺を呼ぶな。いいな」
「!わかった」
すみれが校庭に出てキョロキョロと辺りを見渡していると後ろからすみれの名前を呼ぶ声がした
「すみれ?」
「!」
すみれがその声に反応して振り向くと高専の制服からジャージに着替えたのかチャックを上げながら伏黒がすみれの前までやってきた
「めぐみ!」
ぎゅっと伏黒に抱きついたすみれの頭を伏黒はポンポンと優しく叩いた
「めぐみ、どこ行ってたの?」
「…虎杖が助けようとした人の家に行ってきた。アイツは最後まで諦めなかったからな」
伏黒は先程会ってきた女性を思い出していた
-自分たちが現場に着いたときには既に息子さんは亡くなっていました-
-正直自分は少年院の人たちを助けることに懐疑的でした-
-でも仲間たちは違います-
-成し得ませんでしたが息子さんの生死を確認した後も遺体を持ち帰ろうとしたんです-
-(残念ながら遺体は特級の生得領域と共に消滅してしまった)-
-せめて、これを-
-息子さんを助けられず申し訳ありませんでした-
-いいの…謝らないで-
-あの子が死んで悲しむのは私だけですから-
「めぐみ?」
「わるい、禪院先輩達の所に行くけどすみれも行くか?」
「行く!めぐみ!あのね、すみれのコレかわいい?」
「そういえばいつもと髪、違うな。どうしたんだ?」
ツインテールを両手で掴んで伏黒に見せるすみれはニコニコとしながら言った
「これね、たかだちゃんのまねしたの」
「タカダチャン…誰だ」
「すみれもね、知らなかったけどね、テレビでね、みたの。あいどる?なんだって。かわいかったからね、やってもらった!」
「ふーん」
伏黒に手を引かれてすみれはグラウンドまでやってきた。そんな2人の気配を感じ取ったのか伏黒が話しかける前に真希は振り返った
「おっせぇよ、恵。何してた」
「なんでもいいでしょ」
「あ?オマエもついてきたのか。悟のコドモなんだって?あのバカ目隠しが父親だったとはな。知らなかったわ」
真希はすみれの前に腰を下ろしてすみれと視線を合わせるとすみれのアタマを少し強めに撫でた
「?さとるはすみれのパパじゃないよ?」
「は?」
「さとるはすみれのパパじゃない。すみれにパパはいないよ」
「おい、恵」
「…」
真希は後ろを振り返って伏黒にどういうことだと視線をぶつけたが伏黒は慣れたようにふいっと視線を逃した
「禪院先輩は…」
伏黒は視線を逸したままポツリと呟いた
「呪術師としてどんな人たちを助けたいですか?」
「あ?別に私のおかげで誰が助かろうと知ったこっちゃねぇよ」
「聞かなきゃよかった」
「あ"ぁ?」
真希の答えは伏黒の期待していた答えではなかったためか伏黒はすみれを抱き上げてパンダと釘崎がいるグラウンドへと続く階段を降りると伏黒とすみれの名前を釘崎が呼んだ
「伏黒ぉ!すみれ!」
「のばらー」
「なに、面接対策みたいな質疑応答してんのよ!交代!もう学ランはしんどいっ!可愛いジャージを!買いに行かせろ!!」
途切れ途切れに叫ぶ釘崎はパンダにぶんぶんと振り回されていた
「にぎゃあああああ!」
「あの2人は何してんですか?」
愛玩動物代表であるパンダに女子高生が放り投げられている光景に伏黒は隣に降りてきた真希に問いかけた
「オマエらは近接弱っちいからな。まずは私らから一本取れ。話はそれからだ」
ヒュンヒュンと真希は薙刀(もちろん刃は外してある)を身体の一部のように扱い伏黒を挑発するようにクイっと手を動かすとそれに応えるように伏黒も抱えていたすみれを下ろして構えたのだが…ピクッと反応してあとバッと振り返った
伏黒の行動にすみれも真希も首を傾げた
「めぐみ?」
「どうした?」
「今、とてもイラッとしました」
「あ"?」
「いや先輩じゃなくて」
「まあいい。交流会まで一月半、ボサボサしてんなよ」
そういうと真希は手にしていた長ものを伏黒に投げ渡す。パシッと危なげなく手にした伏黒はクルクルと長ものを回して構えた
「…意外としっくりきますね」
「めぐみすごーい」
パチパチと手を叩くすみれの頭をガシッと誰かが掴んだ
「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…伏黒ぉ。無視すんな、コンチクショー」
「のばら」
「もう…ムリ。交代よ交代。ジャージ取ってくるから伏黒、アンタあのパンダの相手頼んだわ」
フラフラとよろけながら学生寮へと戻っていく釘崎の背中を伏黒とすみれが見送っているとノシノシっと足音が近づいてきてすみれに陰が覆い被さった
「?」
「お?選手交代か?パンダさんはまだまだイケるぞ」
「パンダぁ」
「すみれ、今日は随分と可愛い髪型してるな。悟にやってもらったのか」
「これねーたかだちゃんのマネしたの。すみれカワイイ?」
「カワイイぞ」
ひょいとすみれを抱き上げたパンダはそのまま木陰にすみれを運んでストンと腰を下ろした
「すみれは色んな意味でよわっちそうだからな。オレと此処で見学だ。おーい棘ー!オマエもコッチコイ! 」
「よし、子守はパンダに任せてやるぞ、恵」
「はい」
「パンダ、パンダ」
「ん?どした?」
「ふふ、パンダ。ふっかふかー」
「しゃけ、しゃけ」
「しゃけ?とげはおにぎり好きなの?」
「しゃけ、おかか」
「すみれはねツナマヨが好き」