お買い物withひーくん
「パパ、おかしえらんできたー」
諸伏と一緒にお菓子を選びに行っていた愛娘が片手に諸伏の手を、もう片方にはお菓子が入っている袋を抱えて俺のもとに戻ってきた。
「おぅ、好きなの選んできたか?」
娘の手から選んできたお菓子を受け取りカゴに突っ込んだとき、あおいが2つしか持ってきていないことに気が付いた。
「あおい、2つしかないぞ?いいのか?」
コクンと頷いた娘に俺は不思議に思いつつもあおいがそれでいいならと思っていると娘の後ろに立っていた諸伏が俺が持つカゴにさきいかの袋を入れようとしているのがチラッと見えた。
「あ?んだこれ、スコッチ、お前は自分で買いな」
ちゃっかりカゴに入れようとしている諸伏に待ったをかけると、諸伏が持っていたさきいかの袋を娘が代わりにカゴの中に入れた。
「あおい?」
「いいの、パパ。あおいがひーくんにいいよっていったの」
俺が諸伏を睨むとアイツはどこ吹く風という顔であおいちゃんがいいって言っているんだからいいだろ?と開き直っていた。
「ちっ、しゃーねーな。あおいに免じて今回だけだからな」
「いやいや、松田!俺!車出してるから!」
「会計は松田家の財布だ」
「えー、ケチだな、松田は」
「あ?」
「パパー、ひーくんもはやくー」
一足先にレジ列に並んでいる娘のもとに足早で向かった。後ろで諸伏がなにか言っているようだが知らねぇ。無視だ。
会計を済まし買った食材やら日用品やらを袋に詰め込むと隣でボーっと突っ立ていた諸伏に袋を押し付ける。
「え?」
「お前も持て、スコッチ」
イヤそうな顔をする諸伏に俺は真下にいる愛娘に視線を向ける。ちいさな身体には少し大きいトイレットペーパーを両腕で抱えてふらふらと歩くあおいを見て諸伏はおとなしく俺から袋受け取った。
「あおい、あぶねーからこっちの小さい袋持ってくれねぇか?」
「んー。イヤ!あおいがおトイレペッパーもつの!」
ぎゅっとトイレットペーパーを抱きしめて離そうとしない娘に俺はまあ仕方ねぇかと思いあおいの頭をなでた。
「んじゃ、それは頼んだぜ」
「うん!」
嬉しそうにうなずいた娘に俺や、隣にいた諸伏の頬はきっとだらしないくらい緩んでいたに違いない。
それから、諸伏の車で自宅まで送り届けてもらい、茶の一つでも出してやろうかと諸伏に声をかけた。
「おい、スコッチ。茶でも飲んでいくか?」
「んー、その誘いは嬉しいんだけどさ、ゼロのバイト終わったみたいなんだ。だから俺は戻るよ」
「案外、早かったな。降谷のやつ」
「客足が少ないからって早上がりさせてもらったみたいだ」
「ふーん、ま、助かったわ。ありがとうな」
「ひーくん、ありがとう」
諸伏があおいの目線に合わせるようにしゃがむと優しいてつきですみれの頭をなでいる。そんな諸伏に俺は再度声をかけた。
「そうだ、スコッチ。お前、降谷との用事が終わったら家に来いよ」
「おいでー」
「そうしたいのは山々なんだけどな、今日の用事はちょっとワケありでさ、こっちに戻ってくる時間読めないんだ。すまん」
誘ってみたものの諸伏と降谷の用事は中々にヤバそうなやつのようだ。断られてしょんぼりしてるあおいにたった数時間で良くここまで懐いたものだと感心しつつも仕方ないと割り切ってすみれの頭をポンっと叩く。
「しゃーねーな。じゃあ連絡寄こせよ、同期で飲みに行こうぜ」
「ああ、わかった。連絡するよ」
そう言って車に乗り込んで走りさった諸伏を俺と娘は見えなくなるまで手を振って彼とその車を送り出した。
「パパー!おトイレペッパーしまってきたよ」
「おう、ありがとな」
「どういたしましてー」