本日の夕食は
お風呂から上がった娘が湯冷めをして風邪をひいてしまわないようにしなければと思い、俺はドライヤーを片手にあおいの名前を呼んだ。
「あおいー、髪の毛乾かすからこっちこーい」
「はーい」
うさぎのパジャマを身にまとったあおいがパタパタと駆け寄ってくると俺の目の前にペタンと腰を下す。
その姿を確認して俺はドライヤーのスイッチを入れた。
最初は前髪に温風をあて、次に髪の根本にあてて乾かしていく。
「熱くないか?」
「うん、だいじょーぶだよ」
気持ちよさそうに目を細めるあおいに俺はあおいの髪に指を通しながら髪の毛全体がしっかりと乾いたのを確認してドライヤーのスイッチを切った。
「おし、もういいぞ」
「ありがとー!パパ」
俺のほうに振り向いたあおいはぎゅっと俺に抱きつくと毎回、俺の胸に額を擦り付けてくる。そんな娘の頭をよしよしと撫でるとパジャマについているうさ耳のフードを被せてやるとペタンとうさぎの耳が垂れる。
愛娘を持ち上げて立たせると頭の上にハテナを飛ばしたあおいに”晩御飯作ってくっからソファに座って待ってな”と言って立ち上がった。
あおいは”うん”と頷くとクマやウサギ、恐竜など様々なぬいぐるみが置いてあるソファに近づくとよいしょと小さな掛け声とともにそのソファによじ登りちょこんと座ると正面に置かれたテレビを見始めた。
それを確認すると俺はエプロンを手に取り、夕飯のオムライスの仕上げる。
炒めたチキンライスを溶いた卵で手際よくクルッと包む。娘が産まれて、あいつが俺たちの前から居なくなってから食事がしばらく適当だった。ある時そんな俺たちを心配したのか降谷が家に押しかけてきたことがあった。
その時あおいと俺の食生活が降谷にバレてぶん殴られた。そして目が覚めたんだ。それから少しでもあおいにはバランスの取れたものを食べさせなければと思うようになり自然と苦手な料理も出来るようになった。まあ、それでも降谷には一生勝てる気がしねぇが。
出来上がったオムライスを皿に乗せると同じようにもう一つ同じ大きさのものを作り上げ最後に一回り以上は小さいオムライスを仕上げるとテレビを見ていた娘に声をかける。
「あおい!もうすぐ出来っからあいつ呼んで来い。あとドアキーはいつもの所に入ってるから持って行けよ」
「はーい」
元気な声をあげて座っていたソファからぴょんっと飛び降りた娘は抱きしめていたぬいぐるみをソファに戻して母親の写真が飾ってあるスペースに駆け寄り、そのそばにある引き出しに手をかけてグッと力を入れて開けた。
その中にあったカードを一枚手にすると引き出しを押し込みキッチンとリビングを隔てる柱からひょこっと顔を出した。
「パパ、いってきまーす」
「気をつけろよ。起きなかったら蹴り飛ばしてかまわねぇからな」
「えー、けったらいたいってないちゃうよ」
「あいつは丈夫だから心配いらねぇよ。ほら行ってこい」
カードキーを持ったうさぎ姿の娘がリビングから姿を消してそのあとすぐに玄関を開ける音がしたのをその耳で拾いオムライスにケチャップで文字を書いていく。
隣に住むあいつと闘う娘を思いながらエプロンのポケットからスマホを取り出して耳と肩で挟み隣人に電話をかけた。
「けんちゃーん、ごはんだよ」
ピンポンピンポンピンポーン
「でない…むぅ」
ピッ、ロックを解除しました
「おじゃましまーす」
「zzzz…」
「けんちゃーん、おきろー」