遭遇
あおいが綺麗にデザートを食べ終えた後、めでたく俺のブラックリスト入りを果たした降谷のバイト先であるポアロを出てあおいと手を繋ぎながらゆっくりと我が家への帰り道を歩いていた。
ポアロを出るとき降谷が”またね、あおいちゃん“とか言って手を振ってきたが無視だ無視。あおいはあおいでニコニコしながら手を振って”れーくん、またね”なんて言っていたが。
「サンドイッチおいしかった!ねぇパパ。こんどれーくんのサンドイッチつくってー」
「おう、パパに任せな」
降谷が作ったサンドイッチが余程気に入ったのか食べ終わったばかりだと言うのに次を強請る娘に俺は何が何でも降谷に作り方を教わろうと決意した。
とりあえずLINEでも飛ばしておけばいいだろう。
降谷のことだから素直に教えてくれる気が全くしないが娘の期待に満ちた瞳にひと肌だろうがふた肌だろが俺は脱ぐさ。
可愛い娘の頼みだからな。
そして俺はご機嫌なあおいの手をしっかりと握り次の目的地へのルートを頭の中で描いた。
次の目的地はスーパーだ。
食料調達ってやつ。冷蔵庫の中身が空っぽだったこともあって降谷のところに行ったからな。目的地のスーパーまではそこまで遠くはない。
ポアロと自宅の丁度中間くらいの場所にある。男一人と小さな子どもが一人なのでそこまで多くの食料は必要ないがどうせなら冷凍食品など保存期間が長めのものを買い込みたいなとふと思った。
だがもし買い込むなら車を取りに一度家に戻らなければならない。さてどうしたもんかなと考えているとクンっと腕が引っ張られる。見るとすみれが足をとめて公園の方に視線を向けていた。
「あおい?どうした」
「パパはきこえない?じゃーん。ジャーンっておとがするの」
俺と繋いでいる方とは逆の手を公園にむけている。たしかに耳を澄ませてみればかすかにあおいの言う通りなにか弦を弾くような音が聞こえるが本当に小さな音で普通の人ならば気づくことのない音だろう。
我が娘はどうやら耳が良いらしい。
「パパ、いこ?」
あおいの頼みも無下にできずに俺はあおいの手を握ったまま公園の中に足を踏み入れた。あおいの足取りは軽く迷うことなく公園の中を進んでいく。
まるで音に誘われているおとぎの国のお姫様のように。
俺はあおいに腕を引かれて足を動かした。だんだんと聞こえる音が大きくなってくると聞こえている音がギターによるものだということがわかった。
「この音、ギターか?」
「ぎたー?」
首を傾げるすみれにそうだと頷く。
「ぎたー!」
音が一際大きく聞こえる一角まで来た俺たちは相手側からは丁度死角になっているであろう位置からそっと顔を出した。
するとそこには帽子を被った一人の男が木に寄りかかりながらギターを奏でていた。なんだかどこかで見たことあるやつだと思うんだよな…てか知り合いじゃねぇ?なんて思いながらギターを弾いている奴ガン見しているとその男が俺たちの視線を感じたのかギターを弾く手を止めて顔をあげた。
「あ…」
「スコッチ?!」
「松田?!」
お互いに指をさして互いの名前を呼び驚きの声を上げた俺たちを不思議そうに見上げるあおいがいた。
「すこ?」
「久しぶりだな!松田!
もしかしてこの子…あおいちゃんか?!」
ギターを奏でていた怪しさ満点の男
降谷の幼馴染の諸伏景光
スコッチと呼ばれていた男だった。