諸伏さん家の景光くんゲット

「すこ?」

「はは、おおきくなったなあ、あおいちゃん!」

木に寄りかかってギターを弾いていた男は降谷の幼馴染の諸伏景光。俺たちと同じ俳優養成所時代の同期で俺たちは養成所時代諸伏のことをスコッチと呼んでいた。

諸伏はなかなかの秘密主義だった。養成所で出会ったばかりのころは本名を明かさずスコッチと名乗っていたからだ。なんで本名じゃねぇんだって聞いた時は本名を知っている人たちに誂われるのが恥ずかしいっめ言っていたな。

ぶっちゃけ降谷はスコッチとは呼ばずヒロって呼んでいたからそんな感じの名前だろうなとは薄々感じていた。が、それは本人から直接聞いたわけじゃないし、本人が隠したがってるのに暴くのは野暮ってもんだ。

そして養成所を卒業し各々の事務所所属が決まった打ち上げの飲み会で初めて自身の本名は諸伏景光だと明かしてくれた。

結局スコッチと呼んでいた期間が長く、諸伏や景光など呼び方を模索してみたがイマイチしっくりこなくて俺は今でも俺はスコッチ呼びだったりする。たまに諸伏。

ちなみに兄貴が長野にいるらしいってことは知っている。

諸伏は持っていたギターをギターケースにしまうと、俺とすみれの前までやってきてあおいの目線にあわせるようにしゃがむとあおいの頭をなでた。

「???」

あおいは小さすぎて覚えてはいないだろうが今よりもずっと小さいころに諸伏と会っている。以前会ったことがあるにしても自分の記憶がない人間に頭をなでられたので泣き出すかと思ったが大丈夫そうだなと思ったその時だった。

「あおいちゃん、久しぶりだな。…って言っても覚えてないか。俺とあおいちゃんがあったのはあおいちゃんがもっと小さい時であおいちゃん、指を咥えていた頃だったもんな」

笑いながら話しかけてくる見覚えのない男に次第に娘の眉間にしわが寄ってくる。

「おい、スコッチ。あおいが覚えているわけないだろう。自己紹介した方がいいぞ。あおいが泣き出す前に」

俺が諸伏にそういうとそれもそうだなと言ってスコッチは一つ咳払いをした。

「改めて、初めまして。あおいちゃん。俺の名前は諸伏景光。みんなからはよくスコッチって呼ばれているんだ。あおいちゃんとは小さい時に会ってるんだけど降谷とあおいちゃんのパパ、松田とはお友達なんだ。よろしくな」

「パパとれーくんのおともだちなの?おじ…ちゃん?」

「ぶふっ!」

思わず吹き出してしまった俺は悪くない。諸伏にあって俺や降谷にはないものをみてどうやらあおいは諸伏を俺や降谷よりも年上の人間だと判断したようだ。

だからその髭辞めた方がいいて言ってやったのによ。

「おじ…アハハ、すみれちゃん。俺のことは景光って呼んでくれたら嬉しいな」

「ひろみつ?」

「うん、景光」

俺は諸伏のことをスコッチと呼んだ。

でも諸伏本人はあおいに本名である景光で呼んで欲しいと言っている。なんで名前が違うんだという顔で俺を見上げる娘の頭をなでて俺は“景光って呼んでやんな”と言った。

「ひろみつ・・・ひーくん!」

ぎゅんっと心臓を鷲掴みされた。なんだよ、ひーくんって。俺がパパ呼びじゃなくて名前呼びをさせていたらじんくん?…イイな。いやでもパパが最強だろうと思いながら諸伏の方を見たらアイツも結構な重傷だった。

「ひーくん、だいじょうぶ?いたいの?」

「いや、だ、大丈夫だよ」

お前、まったく大丈夫じゃねぇよな。死にそうだよな。その隠してる鼻の下、見せて見ろや。赤い何か垂れてたら容赦しねぇぞ。

まぁ…わかるぜ、あおいはめちゃくちゃ可愛いもんな。

うんうんと頷いていれば諸伏とあおいはいえーいと両手でハイタッチを交わしていてた。いや馴染むの早すぎだろう。さっきまで泣きそうにしていたあおいに子供の心をつかむ天才かよ、コイツと俺は思った。

「というかスコッチ。お前こんなところで何をしてんだよ」
「んー。今日はさ、この後ゼロと出かける用事があってさ、ゼロのバイトが終わるの待ってるんだ」

「ここで?」

「ここで」

時刻は正午を少し回ったくらいだ

つまり降谷のバイトが終わるまでは少なくてもあと数時間は待たなくてはいけないはず。それなのに諸伏はひたすらにここで降谷のバイトが終わるのを待っているという。

「なあ、スコッチ。今日ここに何で来てる?」

一種の期待を込めてスコッチに問うてみた。

「え?車だけど」

「よし!降谷のバイトが終わるまでまだあるだろう?ちょっと俺たちに付き合えよ!」

諸伏さん家の景光くんゲット
「あおい、スコッチ!行くぞー」
「あ、松田!行くってどこに?!」
「はーい!ひーくん!行こっ」
買い物の足ゲットできたわ、ラッキー

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