わたしの創造主/r





そこは、パトスが司る聖域「万象の劇場」。 あらゆる世界の「名場面」が、巨大な舞台(スクリーン)に、常に上演され続けている円形劇場。 パトスは、いつものように、観客席の最上段、彼専用の豪奢な長椅子に寝そべり、その「物語」をうっとりと鑑賞していた。

「――ああ、素晴らしい! 絶望からの逆転! なんて陳腐で、なんて美しい『勇気』の輝きだ!」

彼は、まるで極上のワインでも味わうかのように、ため息をついた。 その時だった。

「パトス様は、本当に『見る』のがお好きなんですね」

不意に、背後から、聞き慣れた声がした。 パトスが、芝居がかった仕草でゆっくりと振り返ると、そこには、いつの間にか向日葵が立っていた。 だが、いつものような、無邪気な笑顔ではない。 彼女は、どこか挑戦的で、それでいて、全てを見透かすような、不思議な笑みを浮かべていた。

「おや! 我が愛しのミューズ!」
パトスは、その「新しい表情」に、瞬時に歓喜の声を上げた。
「どうしたんだい、そんな顔をして! まるで、秘密のイタズラでも企んでいるようだ! 素晴らしい! それもまた、実に『芸術的』な表情だ!」

「ふーん」
向日葵は、彼のその反応にも動じなかった。 彼女は、ゆっくりと、一歩、また一歩と、寝そべる神(パトス)へと近づいていく。
「でも、見てるだけって、退屈じゃないですか?」

「退屈?」 パトスは、心底おかしそうに、目を見開いた。
「君が、あの堅物のダリアンを本能に変え、あの秩序の顔を歪ませる、その『物語』の、特等席だというのに?」

「だって」
向日葵は、ついに、彼が寝そべる長椅子の、すぐ目の前まで来た。 そして、彼を、じっと、見下ろした。 観客席の神を、舞台の上の主人公が、見下ろしている。 その、倒錯した構図。

「『見てる』だけじゃ、本当の『感情』は、分からないんじゃないかなって」
「ほう?」

パトスの万華鏡のような瞳が、面白そうに、きらめいた。
「では、我がミューズは、私に何をしろと?」

「たとえば……」
向日葵は、大胆にも、その長椅子に、片膝を乗せた。 寝そべる彼の、すぐ真横に。 そして、彼に、ゆっくりと、覆いかぶさるような体勢をとった。

「……っ!?」
さすがのパトスも、この「脚本にない」展開には、わずかに息を呑んだ。 彼の、いつも余裕綽々だった顔が、初めて「驚愕」に染まる。 向日葵は、その反応を見て、満足そうに、笑った。

「あなたが、いつも『物語』を欲しがるなら……」
彼女は、その七色に輝く、美しい神の髪を、ひと房、そっと、すくい上げた。
「……あなた自身が、『物語』の『登場人物』になればいいのに♡」

「……」
「私に『恋』をしたら、どうなるんだろう?」
「……」
「私が、こうして、あなたに触れたら……」

彼女の指が、その髪から離れ、彼の、美しい神の顔の輪郭を、ゆっくりと、なぞっていく。
「……あなたの『感情』は、どうなるの?」

パトスは、笑っていなかった。 彼の万華鏡の瞳は、今、目の前で起きている「予測不能」な『現実』を、ただ、じっと、見つめていた。 彼は、初めて、「観察者」の席から、引きずり降ろされようとしていた。

「ねえ、パトス様」
向日葵は、その唇に、自分の唇が触れるか触れないかの、ギリギリの距離まで、顔を近づけた。 彼女の、甘い息が、神の顔にかかる。

「あなたは、いつも、私の『感情』を欲しがるけど……」
「……」
「もし、あなたが、私に『欲望』したら?」
「……」
「もし、その完璧な顔が、『快感』に歪んだら……?」

彼女は、悪魔のように、囁いた。

「……それって、きっと、最高の『芸術』になると、思いませんか?♡」

パトスは、もはや、何も答えなかった。 彼は、ただ、ゆっくりと、その手を伸ばし……。 彼女の、その大胆な挑発を続ける、腰へと、回した。

「……ほう」
彼の唇が、ようやく、かすかに、動いた。 その瞳は、もはや「鑑賞者」のものではない。 未知の「快楽」を前にした、「当事者」の、熱を帯びていた。

「……それは……」
「……私が、まだ、知らない『物語』、だな……」
その手が、彼女の腰を、強く、引き寄せた。
「……私が、まだ、知らない『物語』、だな……」

パトスの、その掠れた呟きは、万象の劇場に響く、どんな英雄譚よりも、向日葵の耳を強く打った。 彼の手が、彼女の腰を掴んでいる。 観客が、舞台に手を伸ばした。 その、絶対的なルールの「違反」。

向日葵は、自分が、神の聖域で、神の衝動そのものに火をつけたのだと、その手の熱さで理解した。 だが、もう、後戻りはできない。 彼女は、その「挑発」を、最後までやり遂げるために、笑みを深めた。

「だったら……♡」
彼女は、その掴まれた腰を、あえて、ぐ、と彼に押し付けた。
「……その『物語』の『最初の一頁』を、今、始めませんか?♡」

そして、彼女は、その七色の髪の神に、ゆっくりと、唇を重ねた。
「…………っ」

パトスの、万華鏡のような瞳が、至近距離で、カッ、と見開かれた。 時が、止まった。

向日葵の唇が触れた、その瞬間。 パトスは、生まれて初めて、自らが「鑑賞」する側ではなく、「体験」する側に回ったことを、脳髄で理解した。 唇から伝わる、柔らかな熱。 彼女の、甘い吐息の匂い。 そして何より、彼女の「好奇心」と「挑発」という、強烈な『感情』が、ダイレクトに、彼に流れ込んでくる。

(……ああ)
(……これが)
(これが、彼らが、命を懸けてまで、求め合う……)

一秒。 二秒。 三秒目。

「―――――アハハハハハハハハハハ!!!!」

パトスは、雷に打たれたかのように、彼女を抱きしめたまま、哄笑した。 その笑い声は、歓喜に満ち、劇場全体を震わせた。
「素晴らしい! 素晴らしい! ああ、実に、実に、素晴らしいッ!!」

「え……っ、きゃ……!?」
次の瞬間、世界が反転した。 彼が、彼女の腰を掴んだまま、その神の力で、寝そべっていた体勢から、一瞬で、二人を反転させたのだ。 ドン、と。 今度は、向日葵が、その豪奢な長椅子の、柔らかなクッションに背中を打ち付けられ、パトスが、彼女の上に、覆いかぶさっていた。

「パ、パトス様……!?」
「『主人公』は、君だけだと思っていたかい? 我がミューズよ!」
彼の、七色の髪が、カーテンのように、彼女の顔の周りに降り注ぐ。 その万華鏡の瞳は、もはや、冷静な「観客」のものではない。 自らが「物語」の渦中に飛び込むことを決めた、「当事者」の、狂信的なまでの「熱」に、きらめいていた。

「君は、言ったな。『私が欲望したら、どうなるか』、と!」
パトスの、美しい神の顔が、ゆっくりと、彼女に近づいてくる。
「……ああ、知りたかった! 私も、ずっと、知りたかったんだ!」

彼は、彼女が、彼にしたのと同じように。 その指で、彼女の、震える唇の輪郭を、そっと、なぞった。

「ダリアンのような『渇望』でもない」
「リミナスのような『秩序』でもない」
「セレスのような『遊戯』でもない」
「アルティオスのような『衝動』でもない」

「この、私だけの『感情』が……!」
彼の指が、彼女の唇から離れ、その薄い服の合わせ目へと、ゆっくりと、滑り落ちていく。

「……君という、最高の『楽器』を、どう、奏でるのか……!」
「ひ……っ♡」

「さあ、見せてくれ、向日葵!」
パトスは、その整った唇で、妖艶に、笑った。
「君が、始めたんだろう?」

「君という『物語』に、私という『感情』が、加わった時……」
「……一体、どれほど、美しい『音』が、鳴り響くのか……!」

彼の指が、彼女の服の、その「境界」を、ゆっくりと、解き始めた。 神が、ついに、自らの「芸術」に、その手を、染めた瞬間だった。
「君という『物語』に、私という『感情』が、加わった時……」
「……一体、どれほど、美しい『音』が、鳴り響くのか……!」

その、恍惚とした宣告。 パトスの指が、向日葵の服の、その「境界」を、ゆっくりと、解き始めた。 それは、ダリアンのように、力ずくで引き裂くのではない。 リミナスのように、冷たく「解錠」するのでもない。 まるで、稀代の彫刻家が、作品を覆う最後のヴェールを、一枚、また一枚と、名残惜しそうに、取り払っていくかのような。 そんな、ひどく、芸術的で、焦らすような手つきだった。

「ひ……っ♡」
向日葵の、さっきまでの「挑発」の余裕は、もう、どこにもなかった。 自分が、神の「好奇心」という、最も予測不能なスイッチを押してしまったことを、肌で感じていた。 冷たい聖域の空気が、彼の指が暴いた、柔らかな素肌に触れる。

「……ああ……!」
パトスは、その白い肌が、彼の視線に晒されただけで、ぶる、と震えるのを見て、歓喜のため息を漏らした。 「……素晴らしい……! なんて、正直な『反応』だ!」 彼の、七色の髪が、彼女の頬をくすぐる。 その、万華鏡のような瞳が、今、この世で最も美しい「芸術品」を見るかのように、彼女の肌を、舐めるように見つめていた。

「君の肌は、'恐怖'に震え」 彼の指先が、彼女の鎖骨のくぼみを、そっと、なぞる。 「'羞恥'に、熱を持ち」 指が、ゆっくりと、彼女の胸の膨らみへと、滑り落ちていく。
「そして、'期待'に、その頂点を、硬くしている……!」

「んんっ……!♡♡」

彼は、その小さな突起を、まるで、貴重な楽器の「弦」でも弾くかのように、親指の爪先で、軽く、ピン、と弾いた。

「んあああああっっ!!!♡♡♡」

向日葵の背中が、長椅子のクッションの上で、ビクンッ!と激しく弓なりになった。
「アハハハハ! なんて声なんだ、向日葵!」
パトスは、子供のように、無邪気に笑った。
「なんて、なんて、澄んだ『音色』だ! これこそが、私が聴きたかった、『感情』の『旋律』だ!」

「あ……っ、あ……っ♡♡」
「だが、足りない! まだだ! こんなものでは、ないだろう!?」
パトスは、その美しい神の顔を、彼女の顔に、再び、近づけた。 その瞳は、もはや、好奇心ではない。 自らが「創造」する、新しい「芸術」に対する、狂信的なまでの「情熱」に、燃え上がっていた。

「君が、私に、火をつけたんだろう?」
「……」
「だったら、見せてくれ! 君の『物語』の、本当の『クライマックス』を!」

彼は、彼女の、潤んだ唇に、覆いかぶさった。 今度のキスは、さっきの、彼女が仕掛けたような、可愛らしいものではない。 彼女の、その甘い「音色」の源である、その吐息ごと、その「感情」ごと、すべてを、味わい尽くそうとするかのような。 深く、貪欲な、神の「口づけ」だった。

「ん……っ! んんぐ……っ♡♡」
(だめ……っ、パトス様の、ぜんぶが、入ってくる……っ♡)
彼女の思考が、彼の「感情」の奔流に、飲み込まれていく。

パトスは、彼女の唇を貪りながら、その手を、彼女の体の、さらに奥深くへと、進めていった。
「さあ、聴かせてもらうぞ、我がミューズ!」
彼の指が、彼女の、最も「曖昧」で、最も「熱い」境界線へと、触れた。

「君という『楽器』が、奏でる、最高の『絶頂(フォルティッシモ)』を……!」
その宣告と共に、彼の指が、彼女の、未知の「旋律」を、奏で始めた。

その宣告は、狂喜に満ちていた。 パトスの指が、向日葵の、最も「曖昧」で、最も「熱い」境界線へと、触れた。 そこは、彼女の挑発によって、すでに、彼への「期待」と「恐怖」の蜜で、じっとりと濡れそぼっていた。

「……ああ……!」
パトスは、その指先に触れた「熱」に、まるで禁断の果実に初めて触れたかのように、恍惚としたため息を漏らした。
「……これが! これが、君という『物語』の、始まりの『一文』か!」

彼の指が、その濡れた秘裂の縁を、まるで貴重な詩集の頁をめくるかのように、そっと、なぞった。

「ひぃ……っ♡♡ あ、あ、あ……!」
「素晴らしい! 指先だけで、これほどの『悲鳴(ソプラノ)』が! なんて豊かな『感情』の『源泉』だ!」
パトスは、その反応に、心の底から感動していた。 彼は、ダリアンのように、力ずくで奪うのではない。 リミナスのように、冷たく「解析」するのでもない。 彼は、彼女の体を、世界で唯一の「楽器」として、その「音色」を、一つ一つ、確かめているのだ。

「だが、まだだ! もっと、奥を! その『物語』の『核心(コア)』を、私に見せてくれ!」

彼の、美しい神の指が、何の躊躇もなく、彼女の、その熱い「源泉」の奥深くへと、ゆっくりと、差し入れられた。

「んふあああああっっ!!!♡♡♡」

向日葵の体が、長椅子のクッションの上で、激しく弓なりになった。 熱い。 彼の指は、リミナスのように冷たくはない。 だが、それは、生身の男の熱とも違う。 まるで、純粋な「好奇心」と「芸術的衝動」そのものが、形を持って、彼女の内側を、かき乱しているかのようだった。

「……ああ……っ!♡♡」
「すごい……! なんという『響き』だ! 君の内側は、こんなにも熱く、私を……私の『指』という『筆』を、締め付けてくるのか!」
パトスは、彼女の内部で、その指を、ゆっくりと、動かした。
「ここを、こうして、撫で上げると……」

「あ、あ、ああっ……!♡♡♡」
「『歓喜』の音がする!」
「……ここを、強く、押してみると……」
「ひぃ……っ!♡♡」
「『哀願』の音がする!」

パトスは、狂った指揮者のように、笑っていた。
「素晴らしい! 素晴らしいぞ、向日葵! 君は、まさしく、最高の『楽器』だ! 喜怒哀楽、全ての『音色』が、この小さな体の一つに、詰まっている!」

「あ……っ、パトス、さま……♡♡」
向日葵は、もう、自分が何をされているのか、分からなかった。 ただ、神の指によって、未知の「旋律」を、強制的に、奏でさせられている。 その、あまりにも芸術的で、執拗な「愛撫」に、彼女の体は、もう、限界だった。

「あ、あ、あああっ……!♡♡ もう、だめ……っ♡ い、いっちゃ……!♡♡」
「……おや?」
パトスの指が、ピタリ、と止まった。 彼は、彼女の、絶頂の寸前で潤んだ瞳を、ゼロ距離で、覗き込んだ。
「……これが、『クライマックス』か?」
「は……っ、は……♡」
「ああ、なんと美しい……! 絶望と、歓喜と、羞恥と、快感が、すべて、その瞳の中で、渦を巻いている……!」

パトスは、その「完璧な瞬間」を、永遠に留めんとするかのように、うっとりと、見つめた。
「……そうだ。これだ。これこそが、私が、ずっと、追い求めていた『芸術(アート)』だ!」

彼は、そう叫ぶと、止めていた指を、今度は、彼女の、最も感じやすい一点へと、正確に、突き立てた。 そして、それを、激しく、かき鳴らした。

「い、い、い、ああああああああっっ!!!♡♡♡♡」

向日葵の頭は、真っ白になった。 彼女の体は、ビクンッ、ビクンッ!と激しく痙攣し、その「楽器」は、今、出せる限りの、最も甲高く、最も甘い「絶頂(フォルティッシモ)」の『音色』を、万象の劇場に、響き渡らせた。

「―――――ブラヴィッシマ!!!!」

パトスは、その「演奏」の成功に、心の底から叫んだ。 彼は、まだ痙攣の余韻で震える彼女の体を、愛おしそうに、抱きしめた。
……ああ……なんて、美しい……」 彼は、その汗で濡れた彼女の額に、そっと、口づけを落とした。
「……素晴らしい『演奏』だったよ、我がミューズ」

「は……っ、は……♡」
向日葵が、まだ、虚ろな目で、彼を見上げる。
(おわ……った……?)

だが、パトスは、その美しい神の顔で、妖艶に、笑った。
「……だが、ね」
彼の、彼女の内側をかき鳴らしていた指が、まだ、そこに、ある。 それどころか、彼は、ゆっくりと、自らの服の合わせ目に、手をかけた。

「……今のは、まだ、『序曲』に過ぎない」
「え……?」

「最高の『楽器』を見つけたんだ。……『指揮者』が、その『楽器』と、『一体』になりたいと思うのは、当然の『感情』だろう?」
パトスの、万華鏡の瞳が、今、この世で最も純粋な「欲望」の色に、染まった。

「さあ、第二楽章を、始めようじゃないか」
「……私という『感情』が、君という『物語』と、本当の意味で、一つになる……」
「……『共同創作(コラボレーション)』を、ね」
神が、自ら「芸術」になることを決めた。 その、狂信的なまでの「創造」の熱が、今、彼女を、完全に、飲み込もうとしていた。
「え……?」

向日葵の、潤んだ瞳が、信じられない、というように彼を見上げた。
(まだ……『序曲』……? じゃあ、さっきのは……?)

彼女が、その言葉の意味を理解するよりも早く。 パトスが、自らを覆っていた、優雅だが非現実的な神の装束を、ゆっくりと、解き放った。 それは、ダリアンのような、生々しい「獣」の肉体でも、リミナスのような、冷たい「秩序」の顕現でもなかった。 まるで、ルネサンスの巨匠が、その魂のすべてを込めて彫り上げた「芸術品」。 完璧な均衡と、流れるような筋肉。 だが、その中心で。 彼が「指揮棒(タクト)」と呼んだものは、彼が自ら火をつけた「感情」の熱によって、神々しいほどの熱量を持って、昂然と、彼女という「楽器」を、待ち構えていた。

「ひゃっ……!♡」
向日葵は、その、あまりの「美しさ」と「熱量」に、小さく悲鳴を上げた。
「パ、パトスさま……♡ ま、まって……♡」

「『待つ』? ああ、それも、素晴らしい『間(ま)』だ!」
パトスは、その彼女の「怯え」という『音色』すら、楽しそうに味わうと、その美しい神の顔を、彼女の耳元へと、ゆっくりと近づけた。 その瞳は、今、この世で最も純粋な「創造」の熱に、燃え上がっていた。

「さあ、我がミューズよ。君という『楽器』に……」
彼は、その昂りの先端を、彼女の、すでに蜜で濡れそぼった、熱い「源泉」の入り口に、そっと、押し当てた。
「……私という『指揮棒(タクト)』を、受け入れる準備は、いいかい?♡」

「あ……っ♡ あ……っ♡」
向日葵は、その、あまりにも強烈な「存在感」に、ただ、首を、小さく横に振ることしかできない。 だが、パトスは、その「拒絶」という『音色』すら、最高の「前奏」として、受け入れた。

「アハハ! いいぞ! その『戸惑い』! その『恐怖』! それこそが、最高の『物語』の、始まりだ!」

彼は、そう叫ぶと、その神々しい熱を、ゆっくりと、しかし、一切の躊・・・躇なく、彼女の、その熱い「楽器」の、奥深くへと、沈めていった。

「あああああっっ!!!♡♡♡」

向日葵の背中が、長椅子のクッションの上で、激しく弓なりになった。
「い……っ、いた……♡ いたい、けど……あ、あ、あああっ……!♡♡」
(パトスさまの、ぜんぶが……っ♡ わたしの、なかに……っ♡)

「……っ! あ……ああ……!」
パトスが初めて、苦悶とも歓喜ともつかない、熱い息を漏らした。
「……すごい……! なんという『不協和音(ディソナンス)』だ! 『痛み』と『快感』が! 『受容』と『拒絶』が! 君の、この熱い『奥』で、今、一つになっている……!」

彼は、彼女の内側が、その神の熱を受け入れ、熱く、熱く、彼を締め付けてくるその「感覚」に、心の底から打ち震えていた。 「観る」のとは、違う。 「創る」のとも、違う。 「一つになる」という、この、どうしようもない「感情」の、奔流……!

「ああ、そうだ……これだ! これこそが、私が、ずっと、知りたかった『感情』だ!」 パトスは、そう叫ぶと、ついに、その腰を、動かし始めた。 それは、ダリアンのような、荒々しい「衝動」ではない。 リミナスのような、冷たい「解析」でもない。 まるで、壮大な「交響曲」を奏でるかのように。 ゆっくりと、深く、彼女の「音色」を確かめるかのように。 そして、次第に、熱を帯び、激しく、彼女の最も感じやすい「旋律」を、追い求めるかのように。

「あ、あ、あああっ……!♡♡ パトスさま……!♡ はや、い……っ♡♡」
「もっとだ! もっと聴かせてくれ! 君の、その、甘い『音』を!」
彼が先ほど指で「発見」したその一点を、今度は、彼の「本体」が、容赦なく突き上げた。

「ひゃあああああんっ!!!♡♡♡ そ、そこ、だめ、だめぇ……っ♡ あ、あ、あ、あああっ……!♡」
「『ダメ』! なんて、なんて、甘美な『響き』だ! それが君の『主題(モチーフ)』か!」
パトスは、狂ったマエストロのように、その一点だけを、執拗に、激しく、奏で始めた。

「も、むり、むりぃ……!♡♡ パトスさま、いっちゃ、う……!♡ いっちゃいま、すぅ……!♡♡♡」
「ああ! いいぞ! それだ! 最高の『クレッシェンド』だ! さあ、私と共に、その『音』を、世界に、響かせるんだ!」

パトスは、彼女の体を強く抱きしめると、その神の昂りを、彼女の「楽器」の最奥へと、叩きつけた。 そしてその「すべて」を、彼女の内側へと、注ぎ込んだ。

「―――――ブラヴィッシモ!!!!」

「は……ぅ……♡ あ……♡ は……♡」
向日葵は、完全に力の抜けた体で、長椅子の上で、ただ、小さく、可愛らしい息を繰り返すだけだった。 パトスは、その汗で濡れ、涙で潤み、快感に蕩けた、完璧な「作品」となった彼女を、愛おしそうに、抱きしめた。

「……ああ……」
彼は、その汗で濡れた彼女の額に、そっと、口づけを落とした。
「……なんて、完璧な……『共同創作(コラボレーション)』だったんだろう……」
「……我が、最高の……ミューズよ……」
その万華鏡の瞳は今、この世の誰よりも純粋な「満足」の色に、輝いていた。