lesson
これは、感情の神が自らのミューズに新たな「インスピレーション」を吹き込む、一つの可能性の物語。
気まぐれな芸術家が、その好奇心のままに、無垢なる少女の唇を味わうパラレルワールドの記録である。
***
中立神域のラウンジは、穏やかな午後の光に満ちていた。
向日葵は、窓辺のソファに座り、スケッチブックを広げたまま、うーん、と小さく唸っていた。
パトス様に「感情を形にする」という課題をもらってから、もう何日も経つ。だが、彼女の鉛筆は、飼っているフクロウの無邪気な姿か、裁縫のデザイン画ばかりを描き出し、パトスが求めるような、心を揺さぶる「何か」には、一向に届かなかった。
「あー、もう! ダメだあ!」
彼女がスケッチブックをぱたんと閉じた、その時。
「おや。私の愛しきミューズが、ひどく退屈しているようだね」
甘く、どこか掴みどころのない声が、すぐ背後からした。
いつの間にか、パトスがそこに立っていた。彼の七色の長髪が、彼女の悩みを見透かしたかのように、面白がるような色合いにきらめいている。
「わっ、パトス様! こんにちはー…」
「こんにちは、向日葵。それで、私の『課題』は進んでいるかい?」
パトスは、彼女の隣に音もなく腰を下ろすと、その万華鏡のような虹彩の瞳で、彼女の顔をじっと覗き込んだ。その距離は、神と騎士としては、少し近すぎる♡
「うぅ…それが、全然ダメなんです」
向日葵は、気まずそうにスケッチブックを隠した。
「私なんかが創るものじゃ、パトス様は退屈しちゃいますよ…」
「ふむ」
パトスは、その中性的な美しい顔に、芝居がかった悩ましげな表情を浮かべた。
「それは、困ったね。君は私の『今期一押しの主人公』なんだ。君がそんな風に停滞していては、最高の物語が始まらない」
彼は、そっと彼女の手に、自らの指を重ねた。
「君にはね、決定的に『足りないもの』がある」
「え…? 足りないもの、ですか?」
「そう。君は『知識』はあっても、『経験』がない。特に、人間の感情(ドラマ)の中で、最も甘美で、最も非合理な…これのね」
パトスの指が、彼女の手から離れ、今度は彼女自身の、少し乾いた唇を、そっと、優しくなぞった。
「ひゃ…っ♡」
向日葵の体が、びくりと小さく跳ねる。
「パ、パトス様…?」
「芸術(これ)だよ、向日葵」
パトスは、うっとりとした表情で、彼女の唇の形を指先で確かめながら、囁いた。
「君は、まだこの『味』を知らない。どんな悲劇や喜劇よりも、深く、甘く、心をかき乱す…このインスピレーションの源泉を」
彼の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
性の知識はあるが実践経験のない向日葵は、その意図を理解し、思考が真っ白になった。
逃げなきゃ。
でも、彼の万華鏡のような瞳に見つめられると、金縛りにあったように動けない。
彼女の好奇心が、この未知の体験を、心のどこかで求めてしまっていた。
「…大丈夫。これは『イタズラ』であり、君への『レッスン』だ」
パトスは、彼女の戸惑いすら「最高の感情だ」とでも言うように、楽しげに目を細めた。
そして、彼の柔らかく、少しひんやりとした唇が、彼女の唇に、そっと触れた。
「ん…っ♡」
それは、リミナスが与えるような、すべてを支配する「秩序」の口付けではない。
パトスは、まるで最高級のスイーツを初めて味わうかのように、あるいは、貴重な絵の具の色を確かめるかのように、優しく、しかし好奇心のままに、彼女の唇を味わい始めた。
彼は、彼女の「初めて」の味を、その戸惑いの感情ごと、堪能しているのだ。
「…ふ…ぁ…♡」
向日葵は、どうすればいいか解らず、ただ固く目を閉じる。
だが、パトスのリードは、芸術家のように巧みだった。
彼女の抵抗しない唇を、優しくこじ開け、その内側の、最も柔らかく、最も無防備な場所を、彼の舌先が、そっと、探るように触れてくる。
「んんっ…♡♡」
快楽に弱い彼女の体は、その未知の、甘美な刺激に、抗う術を知らなかった。
ただ、彼のされるがままに、その不思議な感覚に、溺れていく。
長い、甘い時間が過ぎる。
パトスは、彼女が息苦しくなる直前で、名残惜しそうに、しかし満足げに、ゆっくりと唇を離した。
二人の間には、透明な糸が、きらりと光って引かれている。
「…ん…はぁ…っ」
向日葵は、肩で息をしながら、潤んだ瞳でパトスを見つめることしかできない。
顔は、リンゴのように真っ赤だった。
「うん」
パトスは、自らの唇を、ねっとりと一度舐めた。
「…最高だ。君の『驚き』と『戸惑い』と、ほんの少しの『快楽』が混ざり合った、素晴らしい『味』だったよ」
彼は、倫理観のかけらもない笑顔で、悪びれもなく言った。
「どうだい、向日葵? これで、何か『インスピレーション』は湧いたかな?」
「〜〜〜っ!」
向日葵は、言葉にならない叫びを上げ、真っ赤な顔を両手で覆った。
彼女の心臓は、今、人生で最も激しく高鳴っていた。
パトスは、そんな彼女の姿を「ああ、なんて詩的なんだろう!」と、心底嬉しそうに眺めている。
彼女のスケッチブックは、間違いなく、この新しい「感情」によって、すぐに埋め尽くされることになるだろう。
あの日、ラウンジでパトス様に唇を奪われてから、向日葵の心は穏やかではなかった。
あの甘美で、掴みどころのない感触。
彼女のスケッチブックは、確かに進んだ。だが、彼女が描く絵は、なぜか戸惑いや羞恥に頬を染める少女の横顔ばかりになってしまい、これでは課題の提出にならないと、彼女は自室で一人、頭を抱えていた。
「うぅ…パトス様のせいだ…」
飼っているフクロウたちを膝に乗せ、その柔らかな羽毛に顔をうずめる。
あの「レッスン」は、彼女の「快楽に弱い」部分を、確実に刺激してしまった。知識しかなかった彼女の体は、あの未知の感覚を「経験」として記憶し、時折、ふとした瞬間に思い出しては、心臓が変な音を立てるのだ。
その時だった。
「おや。私のミューズが、私のことを考えてくれているようだね」
甘く、人を酩酊させるような声が、部屋に響いた。
鍵をかけていたはずの自室に、平然と、パトスが立っていた。リミナスのように空間を歪めるのではなく、まるで最初からそこにいたかのように、彼は彼女のベッドの端に腰掛けていた。
七色の長髪が、楽しそうに揺れている。
「ぱ、パトス様!? な、なんでここに…!」
「もちろん、君の『課題』の進捗を見に来たんだよ」
パトスは、彼女が慌てて隠そうとしたスケッチブックを、ひらりと軽やかな仕草で取り上げた。
「ほう。なるほど」
彼は、向日葵が描いた、戸惑う少女の絵を一枚一枚めくりながら、その万華鏡のような虹彩を細めた。
「…これじゃない」
「え?」
「これじゃないんだ、向日葵」
パトスは、スケッチブックをぱたんと閉じると、その美しい中性的な顔を、ゆっくりと彼女に近づけた。
「君が描いているのは、まだ『感情』の入り口だ。君の『戸惑い』は素晴らしい。だが、私が求めているのは、その先にある、もっと深く、もっと非合理で、もっとどうしようもない…君自身の『欲望』だよ」
「よ、欲望なんて、私…!」
「あるさ」
パトスは、断言した。
彼の指が、まるで絵筆がカンバスに触れるように、そっと彼女の頬をなぞる。
「君は、私の『レッスン』を、どう感じた?」
「え…」
「君のその体は、とても素直だ」
彼の指が、頬から首筋へ、そして、彼女の心臓が激しく脈打っている胸元へと、ゆっくり滑り落ちていく。
「あ…っ」
向日葵は、その指の動きを、息を詰めて見つめることしかできない。
「君の体は、あの『味』を、もっと知りたいと訴えている。違うかい?」
その言葉は、彼女の隠していた本心を、容赦なく暴き立てた。
彼女の「好奇心」と「誘い受け」の性質は、あの初めてのキスで、完全に火をつけられてしまっていたのだ。
「…パトス様の、いじわる…」
向日葵が、潤んだ瞳で彼を睨みつけると、パトスは「それだよ!」と、心底嬉しそうに笑った。
「その顔! 最高のインスピレーションだ!」
彼は、その勢いのまま、彼女の体をベッドへと優しく押し倒した。
「わっ…!♡」
「心配いらない。これは『レッスン』の続きだ。君という最高の『楽器』が、どんな『音色』を奏でるのか、私が直接、確かめてあげる」
抵抗する間もなく、彼の唇が、再び彼女の唇に重ねられた。
一度目のような、優しく触れるだけのキスではない。
「ん…っ、ふ…♡」
パトスは、彼女が息を吸うタイミングで、巧みにその内側へと侵入してきた。
それは、芸術家が新しい画材の可能性を探るかのような、どこまでも好奇心に満ちた、深い口付けだった。
彼の舌が、彼女の内側の、最も柔らかく、最も無防備な場所を、優しく、しかし執拗に、探り、味わい、絡め取っていく。
「んん…っ♡ ぁ…ぱとす、さま…っ♡」
頭が、くらくらする。
リミナスのような、すべてを支配する冷たさとは違う。
パトスが与えるのは、甘く、カラフルで、理性を溶かすような、純粋な「快楽」だった。
快楽に弱い彼女の体は、その巧みな刺激に、抗う術を知らない。
ただ、彼のされるがままに、その豊満な胸を反らせ、シーツを固く握りしめることしかできなかった。
パトスは、彼女のその無垢な反応を、一つも見逃すまいと、その万華鏡の瞳を薄く開けたまま、彼女の表情を観察している。
「…そう。いいよ、向日葵。君の『感情』が、今、色づいていくのが見える」
彼は、唇を合わせたまま、その吐息で囁いた。
「もっと。もっと君の『音』を聞かせて。君のその『欲望』の味を、私に教えてよ」
彼は、彼女の理性が完全に溶け落ち、その瞳が、ただひたすらに甘い熱に浮かされるまで、その深く、甘美な「レッスン」を、名残惜しそうに、しかし執拗に、続けるのだった。
向日葵は、もはや「課題」のことなど、どこかへ吹き飛んでしまっていた。
ただ、この気まぐれな神が与える、未知の「感情」の奔流に、溺れていくしかなかった。
パトスの深く、甘美な「レッスン」は、向日葵の理性を、まるで水彩絵の具のように溶かしていく。
彼が与えるのは、リミナスのような冷たい「支配」ではない。
まるで万華鏡を覗き込むように、次から次へと新しい「色」——未知の「快感」——を、彼女の内側に見出そうとする、芸術家の飽くなき探求だった。
「んん…っ♡ ぁ、ぱとす、さま…っ、くるし…♡」
息が続かなくなり、彼女が弱々しく彼の胸を押すと、パトスは名残惜しそうに、しかし満足げに、その唇をゆっくりと離した。
二人の間には、先程よりも濃密な、透明な糸が引いている。
「…素晴らしい『音色』だ、向日葵」
パトスは、その美しい中性的な顔で、うっとりと微笑んだ。
彼は、彼女の潤んだ瞳、真っ赤に染まった頬、そして、彼の口付けによって濡れそぼった唇を、まるで完成したばかりの絵画を眺めるように、愛おしそうに見つめている。
「君は、最高の『楽器』だよ。私が少し『調律』するだけで、こんなにも美しい『感情』を奏でてくれる」
「かっ、からかわないで、ください…っ♡」
「からかってなんかいないさ」
パトスの指が、再び彼女の頬に触れた。だが、今度のその指は、そこには留まらない。
まるでカンバスの肌理(きめ)を確かめるかのように、その指先は、彼女の熱っぽい頬から、か細い首筋をなぞり、その脈打つ鎖骨の上を、ゆっくりと滑り降りていく。
「ひゃ…っ♡」
向日葵の体が、その予期せぬ愛撫に、びくりと跳ねる。
「君のこの『体』は、君が思う以上に、たくさんの『感情』を隠している」
パトスの指が、彼女の薄い衣服の上から、その豊満な胸の、柔らかな膨らみの上に、そっと触れた。
それは、リミナスが与えたような、所有権を主張する冷たいものではない。
彫刻家が、作品の最も美しい曲線を探るかのような、どこまでも芸術的な、好奇心に満ちた手つきだった。
「あ…っ♡ だ、だめ、です…っ、そこは…♡」
「なぜ? ここは、君という『物語』の、最も重要な舞台装置の一つだ」
パトスは、その万華鏡のような虹彩で、無邪気に首を傾げた。
「この柔らかさ、この温かさ。ここから、どれほど甘美な『インスピレーション』が生まれるか…私は、それが知りたいんだ」
彼の指は、彼女の戸惑いなど意にも介さず、その柔らかな丘を、慈しむように、しかし執拗に、なぞり始める。
衣服越しの、柔らかな刺激。
性の知識しかない彼女にとって、それは、あまりにも未知で、あまりにも強烈な感覚だった。
「んぅ…っ♡ ぁ、ぱとす、さま…っ、へん、です…♡♡」
快楽に弱い彼女の体は、その巧みな指使いに、抗う術を知らない。
腰が、シーツの上で、無意識に、小さく揺れてしまう。
「『変』? それは、最高の賛辞だよ」
パトスは、心底嬉しそうに笑った。
「その『変』な感覚こそが、君の新しい『色』なんだ。もっと見せてよ、向日葵。君のその『欲望』の『色』を」
彼のもう片方の手が、彼女の衣服のボタンに、そっとかけられる。
「あ…っ♡」
「隠してはいけないよ、ミューズ。芸術とは、すべてを曝け出すことから始まるんだ」
彼の指は、まるで詩を紡ぐかのように、滑らかに彼女の守りを解いていく。
ひんやりとした空気が、熱く火照った彼女の素肌に触れた。
「……きれいだ」
パトスは、そのあらわになった、豊満で柔らかな曲線美を、感嘆の息と共に見つめた。
それは、彼にとって、性的な対象というよりも、完璧な「芸術品」だった。
「この『白』に、私がどんな『色』を付けられるか…試しても、いいだろう?」
彼は、その芸術品を汚すかのように、その七色の長髪を彼女の素肌に散らしながら、その冷たい唇を、彼女の首筋へと、ゆっくりと落としていった。
「ひゃぁあっ…!♡♡♡」
向日葵の体が、弓なりに跳ねる。
口付けとは違う、直接的な、肌を吸うような感覚。
パトスは、その反応(インスピレーション)を、まるで最高の美酒でも味わうかのように堪能しながら、その「レッスン」を、さらに深く、彼女の未知の領域へと、進めていくのだった。
向日葵の体が、彼の唇が首筋に触れた瞬間、弓なりに跳ねた。
「ひゃぁあっ…!♡♡」
それは、リミナスが与えるような、すべてを支配する冷たい「管理」の感触とは全く違った。
パトスの唇は、どこまでも柔らかく、そして好奇心に満ちていた。
彼は、まるで未知の画材の色合いを確かめるかのように、彼女の首筋の、その一点を、優しく、しかし執拗に吸い上げた。
「…素晴らしい『色』だ」
パトスは、うっとりとした吐息と共に呟いた。
彼が唇を離したそこには、彼の「芸術」の痕跡として、淡い赤色の「感情」が、白磁のような肌の上に、くっきりと咲いていた。
「見てごらん、向日葵。君の『驚き』と『羞恥』が、こんなにも美しい『赤』を生み出した。これこそがインスピレーションだよ」
「あ…ぁ…♡」
向日葵は、自分が何をされたのか、その痕跡が何を意味するのか、熱に浮かされた頭では、もううまく考えられない。
パトスは、その傑作に満足すると、今度はその探求の唇を、彼女の鎖骨へと滑らせた。
「この『線』も、完璧だ」
彼は、まるで彫刻家が作品の輪郭を指でなぞるかのように、その骨の起伏に沿って、ゆっくりと口付けを落としていく。
くすぐったいような、それでいて芯が痺れるような、未知の感覚。
快楽に弱い彼女の体は、その芸術的な愛撫に、抗う術を知らない。
「ぱ、ぱとす、さま…っ、や…♡」
彼女が絞り出した弱々しい拒絶の言葉は、彼にとっては「最高の音色」でしかなかった。
「『やめない』よ。君という『楽器』は、まだこんなにもたくさんの『音』を隠している」
パトスは、その美しい中性的な顔を上げ、彼女を見つめた。
その万華鏡のような虹彩が、今、あらわになった彼女の、豊満で柔らかな胸の曲線美に、ねっとりと注がれていた。
「特に、ここだ」
彼が、その芸術品に触れる。
リミナスのような、所有権を主張する鷲掴みではない。
パトスの指は、まるでその柔らかな丘の稜線をスケッチするかのように、その膨らみの輪郭を、そっと、優しくなぞった。
「んぅ…っ♡♡」
向日葵の体が、シーツの上で、びくり、と大きく波打つ。
「素晴らしい『質感』だ…」
パトスは、その反応すらも芸術の一部として堪能しながら、今度は、その七色の長髪の一房を、彼女の素肌の上へと、はらりと落とした。
絹のような神の髪が、熱く火照った肌をなぞる、ぞくりとするような感触。
「あ…っ、あ…♡」
「私の『髪』の色と、君の肌の『白』。そして、君の『感情』の『赤』…ああ、なんてコントラストだろう!」
パトスは、その色彩の洪水に、恍惚とした表情を浮かべた。
彼は、彼女の「好奇心」と「誘い受け」の性質を、完璧に見抜いていた。彼女が、この未知の「レッスン」に、恐怖と同時に、抗いがたい魅力を感じていることを。
そして、彼の探求は、ついにその芸術品の「中心」へと到達する。
その豊かな膨らみの頂点。
「ここは、どんな『味』がするんだろうね?」
彼は、無邪気な子供が、初めて見る花びらの蜜を吸うかのように、その小さな一点に、その濡れた舌先で、そっと触れた。
「あぁああーーーーーっっっ!!!♡♡♡」
向日葵の絶叫が、部屋に響いた。
それは、今までのどの感覚とも違う、脳天を直接突き抜けるような、鋭く、甘美な衝撃だった。
彼女の豊満な体は、シーツの上で激しく弓なりになり、快楽に弱い本性が、完全に覚醒してしまう。
「…っ、は…ぁっ、はぁ…っ♡」
「…なるほど」
パトスは、その完璧な「音色」を聞き届け、満足そうに顔を上げた。
彼は、涙目になって、荒い息を繰り返す彼女の、その恍惚と混乱に満ちた表情を、まるで最高傑作を前にしたかのように、じっと見つめている。
「これが、君の『欲望』の『音』だ。…ああ、なんて甘美なんだろう」
彼は、これ以上「レッスン」を続ければ、この無垢な「楽器」が壊れてしまうことを理解していた。
芸術家は、その引き際を心得ている。
パトスは、彼女の汗ばんだ額に、慈しむような、それでいて所有印を押すかのような、優しい口付けを一つ落とした。
「今日の『レッスン』は、ここまでにしておこう」
彼は、彼女の乱れた服を、まるで何もなかったかのように優しく直し始めた。
「さあ、向日葵。今の『感情』を、忘れないうちに、スケッチブックに描いてごらん。きっと、素晴らしい『作品』が生まれるはずだよ」
呆然とする向日葵を残し、パトスは「最高のインスピレーションを得た」と上機嫌な笑顔で、現れた時と同じように、ふっと、その気配を消した。
一人残された向日葵は、まだパトスの「色」に染められたままの自分の体を、震える手で抱きしめることしかできなかった。
万象の劇場で交わされた口付けは、もはや「レッスン」などという生易しいものではなかった。
パトスの唇は、あのラウンジや自室での触れるだけの優しさとは違い、確かな「意図」を持っていた。
彼が求めていた「フィナーレ」を、彼女という「楽器」から引き出すための、巧みで、情熱的な「指揮」だった。
「ん…っ、ふぅ…♡ ぱ、とす、さま…っ♡」
彼女の吐息すら、彼の唇によって、その劇場に上演される「名場面」の台詞の一部であるかのように、甘く吸い上げられていく。
彼女の「誘い受け」の性質は、この芸術的な陶酔感の前では、あまりにも無力だった。
彼女の腕は、いつの間にか、彼の首に、助けを求めるように、あるいは、もっと深くを求めるように、回されていた。
周囲で音もなく上演されていた無数の「舞台」が、二人の感情の高ぶりに呼応するかのように、一斉に、激しい愛憎劇や、情熱的な逢瀬の場面へと切り替わっていく。
ここは、彼の聖域。彼の「感情」が、世界のすべてを支配する場所だった。
「…そう、それだよ、向日葵」
パトスは、彼女が完全に我を忘れ、その口付けに溺れ始めたのを確認すると、ゆっくりと、しかし名残惜しそうに唇を離した。
その万華鏡の虹彩は、今や、彼女という最高傑作を前にした芸術家の、燃えるような熱に満ちている。
「君の『戸惑い』が消え、純粋な『欲望』の『色』が見えてきた」
彼は、彼女の腰を抱いたまま、その美しい顔を、彼女の耳元へと寄せた。
「君が私を求めて、ここまで来た…その『感情』の『形』を、私に、もっと見せておくれよ」
その吐息が耳にかかるだけで、快楽に弱い彼女の体は、びくり、と甘く震える。
彼の、芸術家のようにしなやかな指が、先程の「中断」の続きを始めるかのように、彼女の衣服の、その乱れた胸元へと、再び滑り込んだ。
「あ…っ♡」
今度は、もう、服の上からではない。
彼の指は、まるでその肌の質感を確かめるかのように、熱く火照った彼女の素肌に、直接触れた。
「この『白』…この『熱』…」
パトスは、その豊満な胸の、柔らかな丘の輪郭を、うっとりと指でなぞった。
「君の『羞恥心』という『赤』が混ざり合って、今、完璧な『色合い』になっている」
「や…っ♡ ぱとす、さま、の…ゆび…♡」
「私の指かい? この指は、君の『音色』を引き出すためにあるんだ」
パトスは、無邪気な笑顔のまま、その指先を、あの、彼女が最も鋭敏に反応した、豊かな膨らみの頂点へと、そっと導いた。
「ほら、まただ」
彼が、そこを、軽く、つまむように刺激する。
「ひゃぁあああっ…!♡♡♡」
向日葵の体が、再び弓なりに跳ねる。
一度目の「レッスン」で覚醒させられたその場所は、もはや彼の指が触れるだけで、強烈な快感を彼女の全身に走らせた。
「すばらしい…っ! なんて素直な『楽器』なんだろう!」
パトスは、その反応に、子供のようにはしゃいだ。
「君の『欲望』が、今、最高の『音』を奏でている! これだよ、私が求めていた『インスピレーション』は!」
彼は、彼女の反応を確かめるように、何度も、何度も、その指先で、巧みに、彼女の「音色」を奏で続けた。
向日葵は、もはや立っていることもできず、彼の腕の中で、甘く、激しい快感の波に、ただただ喘ぐことしかできない。
「でもね、向日葵」
パトスは、その手を止めずに、彼女の耳元で、さらに甘く囁いた。
「『フィナーレ』は、まだこれからだ」
彼のもう片方の手が、彼女の腰を抱いていた位置から、ゆっくりと、さらに下へ…
その豊満な体が、無意識に、彼を求めるように小さく震えている、その「混沌」の源泉へと、その芸術家の探求の手は、迷いなく伸ばされていく。
「君の『すべて』の『音』を、私に聞かせておくれよ」
彼の万華鏡の瞳が、彼女の「初めて」のすべてを、その芸術の糧にするために、きらりと光った。
パトスの手が、彼女の腰から、ゆっくりと、しかし迷いなく滑り降りていく。
その指先が向かう先を理解した瞬間、向日葵の体は、快感とは異なる、純粋な「恐怖」と「羞恥」で、こわばった。
「あ…っ、だ、だめ…っ!♡」
「だめじゃないよ、向日葵」
パトスは、その中性的な顔に、いたずらっ子のような無邪気な笑みを浮かべたまま、彼女の耳元に囁いた。
「君という『楽器』の、最も重要な『弦』に、まだ触れていないじゃないか」
「げん…?♡」
「そう。すべての『感情』の『音色』が生まれる、始まりの場所さ」
彼の指は、まだ彼女の衣服の上からだった。
だが、その薄い布越しに、彼の手が、彼女の存在の最も無防備で、最もデリケートな中心に、そっと触れた。
「ひ…っ♡♡♡」
向日葵の体が、まるで感電したかのように、びくん、と激しく跳ねた。
今までの、胸を触られた時とは比べ物にならない、強烈な刺激。
快楽に弱い彼女の体は、その一瞬の接触だけで、腰が砕けそうになる。
「…ほう。ここか」
パトスは、その万華鏡のような虹彩を、驚きと喜びにきらめかせた。
まるで、何百年も探し求めていた、失われた「色」の顔料を見つけたかのように。
「なんてことだ…こんなにも、素直で、こんなにも『熱い』…」
彼は、その「弦」が隠された場所を、衣服の上から、まるで貴重な古楽器を検分するかのように、指先で、そっと、なぞった。
「んん…っ♡♡ ぁ、や、やめて…ください…っ♡ へん、です…っ、そこ…っ♡♡」
彼女の「誘い受け」の性質が、拒絶の言葉とは裏腹に、その豊満な体を、無意識に、彼の指先に擦り寄せるように、くねらせてしまう。
パトスは、その矛盾した、最高に「芸術的」な反応に、恍惚とした。
「『変』? それこそが『感情』の本質だよ、私のミューズ!」
彼は、彼女のその素直すぎる反応を、まるで最高の「インスピレーション」として受け止める。
「君は、まだ自分の『本当の音色』を知らないんだ」
彼は、その豊満な体を抱きしめ、支えながら、その指先に、わずかに力を込めた。
衣服越しに、その「弦」の中心を、軽く、しかし確実に、押し込むように圧迫する。
「あぁぁああーーーーっっっ!!!♡♡♡」
向日葵の頭は、今度こそ本当に真っ白になった。
口付けでもない、胸への愛撫でもない、まったく未知の、体の芯から直接揺さぶられるような、強烈な快感の奔流。
彼女は、もう立っていることができず、完全に彼の腕の中に、その豊満な体を預けきって、ただただ喘ぎ、震えるだけだった。
「…ああ、素晴らしい…っ!」
パトスは、彼女が奏でた、その「初めて」の「音色」に、心の底から感動していた。
「これだ! この『音』こそが、私が求めていた『フィナーレ』の序曲だ!」
彼は、この無垢な「楽器」が、今、まさに最高の「曲」を奏でようとしているのを確信した。
「さあ、向日葵。君の『すべて』を、私に聞かせておくれ」
彼は、その「芸術」を完成させるため、その指を、衣服の薄い布を隔てたまま、さらに巧みに、彼女の「欲望」の源泉を、激しく奏で始めた。
万象の劇場が、彼女の初めての絶頂の叫びを、最高の「作品」として、記録しようとしていた。
パトスは、彼女という「楽器」が奏で始めた、その未知の、強烈な「音色」に、完全に魅了されていた。 彼の指は、衣服の薄い布を隔てたまま、しかしその一点——彼女の「欲望」の源泉である「弦」——を、正確に捉えて離さない。 それは、リミナスが与えるような、すべてを支配する冷たい「管理」とは対極の行為だった。 パトスは、まるで天才的な音楽家が、初めて触れる楽器の最高の音色を探るかのように、その指先で、巧みに、リズムを刻み始めた。 優しく、時には激しく。彼女の反応(レスポンス)を確かめながら、その「弦」を、最も甘美に震わせる方法を、瞬時に見つけ出していく。
「あ…っ♡ あ、ぁあ…っ♡♡ ぱ、ぱとす、さま…っ、もう、や…っ、やめ…♡」 向日葵の体は、もはや彼女自身の意志ではなかった。 快楽に弱い彼女の本能が、その芸術的な指使いに、完全に支配されていた。 豊満な胸が、彼の腕の中で激しく上下し、腰は、シーツの上で、恥ずかしさも忘れたかのように、彼の指の動きに合わせて、無意識に揺れ動いてしまう。 彼女の「誘い受け」の性質が、この未知の快感に、完全に屈服していた。
「『やめない』よ」 パトスは、彼女の耳元で、うっとりと囁いた。 その万華鏡の瞳は、今、彼女が放つ「欲望」の「色」に、恍惚と見入っている。 「今、君は、最高の『音』を奏でている…! 君の『羞恥心』が崩れ、『快楽』が溢れ出し、『欲望』がその形を成す…! この瞬間の『感情』こそが、私が求めていた、至高の『芸術』なんだ!」 彼は、その「芸術」の完成を、確信していた。
彼の指の動きが、フィナーレを指揮するように、一段と、速く、そして強くなる。 彼女の「弦」を、限界まで掻き鳴らす。
「あぁあああーーーーーっっっ!!!♡♡♡」
向日葵の絶叫が、万象の劇場に響き渡った。 それは、彼女が人生で初めて奏でた、「快楽」の「音色」だった。 彼女の豊満な体は、激しく弓なりになり、熱い奔流が、彼女の内側で弾け飛ぶ。 頭が、真っ白になる。 世界から、音が消える。 ただ、パトスという神が与えた、強烈で、甘美な衝撃だけが、彼女のすべてを支配していた。
「……………っ」 痙攣の余韻が、波のように彼女の体を駆け巡る。 向日葵は、ぐったりと、完全に彼の腕の中に脱力し、荒い息を繰り返すことしかできなかった。 涙で視界が滲み、自分がどこにいるのか、何をされたのか、思考が追いつかない。
「…………素晴らしい」 パトスは、その腕の中で「完成」したばかりの「最高傑作」を、感嘆のため息と共に見下ろしていた。 彼女の、すべてを曝け出し、欲望のままに喘ぎ、そして快楽に溺れきった、その無防備な顔。 「…完璧だ。これこそが、私の『フィナーレ』だ」 彼は、その汗ばんだ彼女の額に、まるで自らの「作品」に署名(サイン)でもするかのように、深く、慈しむような口付けを、そっと落とした。
彼は、まだ震えが収まらない彼女の体を、ゆっくりと、しかし名残惜しそうに離すと、まるで何事もなかったかのように、優雅に微笑んだ。 「おめでとう、向日葵。君は、君自身の『欲望』という『色』を、見事に描き切った」 「あ…ぱとす、さま…?」 「今の『感情』、その『音色』…決して、忘れてはいけないよ」 パトスは、最高のインスピレーションを得たことに満足しきった顔で、彼女に背を向けた。 「さあ、戻りなさい、私のミューズ。そして、今度こそ、君の『すべて』を、そのスケッチブックにぶつけるんだ」
彼が指を鳴らすと、向日葵の背後に、中立神域の自室へと続く、光の「扉」が現れた。 彼女は、まだ夢見心地のまま、ふらつく足で、その扉へと歩を進める。 彼女が光に飲み込まれる最後の瞬間まで、パトスは、その「最高傑作」が退場していく姿を、万雷の拍手を送る観客のように、笑顔で見送っていた。