図書館/r





中立神域の図書館は、神々の叡智の集積所だ。
あらゆる世界の歴史、魔法、芸術、そして医学の書物が、天井まで届く書棚に静かに眠っている。

向日葵は、その一角で少し難儀していた。
「うーん……もうちょっと、なんだけど」
彼女が探しているのは、古代世界の猛禽類に関する稀少な生態図鑑。趣味であるフクロウたちのために、何か新しい情報がないか調べていたのだ。
だが、目当ての本は一番上の棚にあり、彼女の身長ではどうしても届かない。

(エルドさんかダリアンさんなら、すぐ取ってくれるんだけどな……)

背伸びをして、指先を懸命に伸ばした、その時。
ふわりと、影が彼女を覆った。
同時に、背後から馴染みのある、落ち着いた声が鼓膜をくすぐる。

「そんな小さな体で背伸びをしても、無駄骨というものだ」

「ひゃっ!?」
驚いて振り向くと、すぐ間近にセレスの整った顔があった。
彼はいつものように、真意の読めない笑みを浮かべている。
「セ、セレスさん! もう、脅かさないでくださいよ〜♡」
「ふふ。君が夢中になっているのが悪い」
セレスは、向日葵が苦戦していた図鑑を、いとも簡単そうに抜き取った。

「はい、どうぞ。君のお友達(フクロウ)のための研究か?」
「そうです! ありがとうございます♡」
向日葵が図鑑を受け取ろうと手を伸ばす。
だが、セレスはわざと本を高く掲げ、彼女の手から遠ざけた。
「……もう、セレスさん、意地悪しないでください♡」
「おや? 礼を言うなら、それ相応の態度があるだろう」
「えー…?」
向日葵が小首を傾げると、セレスは楽しそうに目を細めた。

彼は、静寂が支配する図書館に響かないよう、声を潜めて囁く。
「あの夜、俺が君に教えた『挨拶』は、忘れてしまったのか?」
「……っ!」
向日葵の顔が一気に赤くなる。「あの夜」という単語だけで、体の奥が疼くように熱くなるのを、彼女はもう知ってしまっていた。

ここは図書館だ。いつ、他の騎士や、それこそ気まぐれな神々が訪れるか分からない。
そのスリルが、向日葵の心臓を早鐘のように打たせる。
彼女は、周囲を素早く見渡すと、意を決してセレスの胸元に顔を寄せた。
そして、彼の頬に、軽く口づけを落とす。

「……これで、いいですか?♡」
上目遣いで尋ねる彼女に、セレスは満足そうに微笑んだ。
「ふふ。及第点、といったところだな」

彼は図鑑を渡すと、今度は彼女の手を自然な動作で掴んだ。
「!」
「静かに。誰かに見られたいのか?」
セレスはそう言うと、彼女の手を引いて、高い書棚の陰へと誘う。
そこは、閲覧用の机が置かれた、少しだけ開けた場所だった。
彼は向日葵を椅子に座らせると、自分もその隣に腰を下ろす。

机の上では、何事もないように図鑑を開く。
だが、机の下では。
セレスは、掴んだ向日葵の手を決して離さなかった。
それどころか、まるで薬の調合を確かめるかのように、彼女の指の一本一本を、自分の指でゆっくりと撫で、絡めていく。

「な……っ、や……♡」
「シー……」
セレスは口元に人差し指を当て、悪戯っぽく笑う。
「図書館ではお静かに、だ。子猫」

人目があるかもしれないという緊張感と、机の下で行われる愛撫。
その背徳的な刺激に、向日葵はもう、図鑑の内容などまったく頭に入ってこなかった。
快楽に弱い彼女の体は、こんな些細な接触だけでも、あの夜の記憶を呼び覚ましてしまう。

「君は、本当に分かりやすい。……もう、こんなに手が熱くなっている」
セレスは、絡めた指に力を込める。
「さて。この図鑑の研究は、もう終わりか?」
「え……あ、う、うん……♡」
「そうか。では……」

セレスは立ち上がると、彼女の耳元に、今度こそ熱の籠もった声で囁いた。
「俺の部屋に戻って、もっと別の、『二人だけの研究』の続きをするとしよう。……君の体という、いくら探求しても飽きない書物を、な」
その誘いに、彼女が否と答えるはずもなかった。
カチリ、と。
セレスの自室の扉が閉まり、鍵が掛けられる音が、静かな室内に小さく響いた。
中立神域の公的な空間から切り離された、二人だけの空間。
昼間とは違う、夜の気配を帯びた薬草の濃密な香りが、向日葵の理性を甘く麻痺させていく。

「さて。……これで、誰にも邪魔は入らない」
セレスは、扉に彼女の背を預けさせたま、ゆっくりと振り返った。
その薄紫の瞳は、図書館で見せた悪戯っぽい光ではなく、獲物を前にした獣のような、熱を帯びた独占欲に濡れていた。

「セ、セレスさん……♡」
「図書館では、随分と可愛らしい顔をしていたな」
彼の指が、彼女の頬を撫でる。
「だが、足りない。……あんなもので、俺が満足できるとでも?」
「だって、あそこは、みんなが……っん!」

言葉は、深い口づけに遮られた。
公の場での焦らすようなものではない、全てを奪い尽くすような、貪欲なキス。
向日葵はあっという間に思考を奪われ、彼の胸元を掴む手に力が入る。快楽に弱い彼女の体は、もうこの「処方」の味を知ってしまっている。

「ふふ……息をするのを忘れるな、子猫」
唇が離れ、銀の糸が引く。セレスは、彼女の耳元に唇を寄せた。
「君という『書物』は、何度読み返しても新しい発見がある。……特に、この柔らかな『頁(ページ)』はな」
彼の大きな手が、彼女の腰を掴み、そのまま服の上からゆっくりと、その丸みを確かめるように撫で上げる。
「ひゃ……♡ だめ、そこ……♡」
「なぜ? 君は、俺にこうして触れられるのが、好きなんだろう?」

彼は、彼女の弱点をすべて知り尽くしている。
向日葵の体が、期待に微かに震え始めるのを、彼は見逃さなかった。
「おや。もう体が、俺の『治療』を欲しがっている」
「だっ、て……セレスさんが、意地悪するから……♡」
「そうだな。意地悪だ」

セレスはあっさりと認めると、彼女の体をいとも容易く横抱きにした。
「きゃっ♡」
「図書館で、あの無防備な姿を他の奴らに見られる危険を冒したんだ。……その分の利息は、きっちりと付けて返してもらうぞ」

数歩でベッドへと運ばれ、シーツの上に優しく、しかし有無を言わさず降ろされる。
彼がその長身で覆いかぶさってくる。
「さあ、『二人だけの研究』の続きだ」
セレスは、医学書を紐解くかのように、彼女の服の合わせ目に、その器用な指をかけた。
「今日は、君がどんな『音』を奏でるか……朝まで、じっくりと聞かせてもらう」

その妖艶な宣告に、向日葵は、甘い諦めと共に、喜んで身を委ねるのだった。
セレスの指は、まるで精密な外科手術を行うかのように、向日葵の服の合わせ目をゆっくりと解いていく。
その指先が、焦らすように素肌に触れるたび、彼女の体は甘く震えた。

「ん……♡」
「声を出すなとは言わない。むしろ、もっと聞かせろ」
服がはだけ、月明かりに彼女の白い肌が晒される。
セレスは、すぐには彼女を貪らなかった。
彼はまず、その「書物」の序文を読むかのように、彼女の鎖骨に唇を落とした。

「ひゃ……♡」
「ここは、相変わらず反応がいいな」
彼の唇は、薬を塗り込むようにゆっくりと下へ、その柔らかい胸の膨らみへと移動していく。
そして、その頂点を、わざと焦らすように舌先で転がした。

「あ……っ!だ、だめ、セレスさん……そこは……っ♡」
「『ダメ』、か」
セレスは、彼女の反応を楽しみながら、その顔を覗き込む。
「君の言う『ダメ』は、俺にとって『もっとやれ』という意味にしか聞こえないが?」
彼はそう言うと、今度は容赦なく、深く吸い上げた。

「ああっ……♡♡」
向日葵の体は、もう完全に彼のものだった。快楽に弱い彼女の本能が、彼の「治療」を、その「研究」をもっと求めている。
「ふふ……もう、こんなにも準備ができている」
セレスは、彼女の体の最も湿った部分に触れ、その指を見せつける。
「君は、俺が触れるだけで、これほどまでに甘い蜜を出す。……本当に、極上の薬だ」

彼は、もう我慢の限界といった様子の向日葵を見下ろし、ゆっくりと自らの熱を彼女に押し当てた。
「さあ、向日葵。昨夜の復習だ。……俺という『薬』の味を、忘れたとは言わせない」

彼がゆっくりと体を沈めると、向日葵は痛みではなく、灼けるような快感に息を呑んだ。
「んん……っ♡ せれす、さん……♡ だいすき……♡」
「ああ。ちゃんと、奥まで届いているな」
彼は、彼女の体内で自らの存在を確かめると、深く、重く、律動を始めた。

セレスは、彼女の反応を一つも見逃さないように、その瞳をじっと見つめながら続けた。
「ここを突けば、君はこうして震える。……ここを擦れば、甘い声が出る」
「あ、あ、だめ……っ♡ そこ、ばっかり……やっ♡」
「ああ、ここが君の弱点か。……それは、素晴らしい発見だ」

彼は、医術師が最適な処方を見つけたかのように、その一点を集中的に、容赦なく突き続けた。
向日葵の頭は真っ白になり、ただ彼に与えられる快楽の波に溺れるしかなかった。
「い、く……!いっちゃう……っ♡♡」
「いいだろう。俺も、もう限界だ」

セレスは、彼女の体を強く抱きしめ、最も深い場所で、自らのすべてを解き放った。
「……ふぅ……っ」
荒い息を繰り返す彼女の額に、彼は汗を拭うようにキスを落とす。

「……これで、終わりだと思ったか?」
「え……?」
余韻に浸る向日葵が、とろんとした目で見上げる。
「言ったはずだ。『朝まで』、じっくりと研究すると」

セレスは、まだ震える彼女の体を抱き起こすと、妖艶に微笑んだ。
「次は、君が上だ。……君からも、俺を『研究』してみるといい」
その瞳は、彼女を手放す気など微塵もないことを、雄弁に物語っていた。
セレスは、まだ余韻でとろけている向日葵の体を、まるで羽根のように軽々と抱き起こした。

「え……あっ」

抵抗する間もなく、彼女の体は反転させられる。
彼がベッドに背を預け、今度は向日葵が彼の上にまたがる形にさせられた。
「『研究』だと言っただろう。今度は君からだ」

その体勢は、彼女の柔らかな肌、豊かな胸の膨らみ、そして二人が結合していた証である蜜で濡れた秘所まで、すべてを彼の視界に晒すものだった。
向日葵は、その恥ずかしさに身をよじったが、セレスの大きな手が彼女の腰を掴んで逃がさない。

「ふふ……素晴らしい眺めだ。熟した果実が、自ら蜜を垂らしている」
彼は、まだ熱く硬いままの自身を掴むと、その先端を彼女の入り口に押し当てた。
「さあ、自分で受け入れてみろ。君のその柔らかな体で、俺を包んでみせろ」

向日葵は、恥ずかしさと、すでにぶり返してきた熱に顔を真っ赤にしながら、促されるまま、ゆっくりと腰を沈めた。

「あっ……んぅ……っ♡♡」

先ほどよりも深く、直接的に彼の存在が体内に差し込まれる感覚に、彼女は背を反らして甘い悲鳴を上げた。
「ふかっ……♡ おくまで、きてる……♡」
「ああ。……いいぞ。その締まり具合……実に、そそる」

セレスは、彼女の腰を掴んで固定すると、今度は下から容赦なく突き上げた。
「ひゃあっ!?♡ ま、まって……!」
「待たない。君が教えてくれたんだろう。君は『快楽に弱い』と」
「あ、あ、あ……っ♡♡」

彼女の柔らかな胸が、彼の突き上げるリズムに合わせて、艶かしく揺れる。その姿は、セレスの独占欲をさらに煽った。
「もっとだ、向日葵。もっと、欲しがれ。俺なしでは、もうイけない体に、してやる」

彼は、彼女が最も感じる一点を、再び、今度は彼女自身の体重をかけて、執拗に突き続けた。
「だめ、だめぇ……!♡ も、また、いっちゃう、から……!♡♡」
「ああ。俺もだ。……一緒に、果てろ」

セレスは彼女の腰を強く引き寄せ、二度目の絶頂を、その体の奥深くに叩き込んだ。
「んんっ……♡♡♡」
向日葵は、彼の肩に顔を埋めたまま、ビクビクと体を痙攣させた。
セレスは、その愛らしい獲物を抱きしめ、満足そうに微笑んでいた。