捕まっちゃった







バッグに入れていた買う物が書かれたメモを片手に早々にお使いを終わらせて家に帰った。
キッチンにお使いバッグを置き、母様にお兄の元へ行くことを伝えた。


「ハンカチと……ほら、ポーチも持って……ってあらあら、ウサギさんも持っていくのね?」
「うん、ありがとう!行ってきます」




§





ウエストポーチにうさぎのぬいぐるみを入れて裏の森を目指した。
裏の森は、門を出て真っ直ぐ南だったかな。

――……あ、そういえば門の外には魔物がいるって前に父様が言っていた気が……と、言ったそばから魔物が出てきた。


「ううう嘘、私何も持ってな―――」


その時、ポーチの中に入っていたうさぎのぬいぐるみが再び光りだした。
そして……またあの声が、聞こえた。
 

――ヨハンナ、これで、戦って!


「え……?!」


また、エイルの声……!
慌ててポーチからうさぎのぬいぐるみを取り出すと、それから溢れ出ていた光が一層強くなり私の手から離れて宙に浮き、形を変えて手元に戻ってきた。


「お、大鎌……?!」


これで、戦う……?


――大丈夫、貴方なら出来ますわ!


「え、う、……うん、やってみる!」
 

どこからか聞こえた夢の中の私――エイルの言葉を頼りに、魔物を倒していった。
生まれて初めて大鎌を持ったのに、何故か手に馴染む。
その何故かが分からないまま、魔物を倒しきった。


「……ふぅ、倒せた……倒せたよ、エイル!……エイル?」


倒しきると同時に大鎌も元のうさぎのぬいぐるみの形に戻り、私が何度問いかけてもエイルからの返事は無かった。


「そこのおまえ!」


突然、後ろから声が聞こえた。
周りには人間はいないし、おまえ、と呼ばれたのは私だろう。
恐る恐る振り向くと、鳥のような奇妙な仮面をつけた人が私を見ていた。


「おまえ、異能者……いや、転生者だな」
「え……?!」
「おまえを異能者捕縛適応法により逮捕し、転生者研究所に連行する!」
「え、ど、どういうこと?!ていうか貴方どちら様で―――」


その瞬間、私の意識は急に途切れた。


//2019.05.01
//2021.10.30 加筆修正
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