運命







――昔の私はとてもお転婆で、"冒険"と称してよく一人で街の中の至る所に出掛けたりしていた。
それで、一度だけベルフォルマ家に入った事がある。

綺麗に手入れされていたであろう高い生垣をよじ登ってベルフォルマ家の敷地の中に入った。
当時は、それがしてはいけない事だとは分からなかった。
敷地の中を2、3歩進むと、誰かに声をかけられた。


《あれ、おまえ、だれだ?》
《……へ?》


誰かに声をかけられるとは思っていなかった。
肩をビクリと震わせて声をかけられた方を見ると、私と同じくらいの歳の緑髪の男の子がこちらを不思議そうに見ていた。
その男の子とパチッと目が合った拍子に、私の中で何かが弾けたような音がした。

 
《あ!あの、えっと……わたし……》
《おれ、すぱーだ。すぱーだ・べるふぉるま!》


緊張であたふたしていた私にスパーダくんはそう言って私に手を差し出した。


《! わ、わたし、ヨハンナ・ミルダ!》


よろしく!と言い、差し出された手を握り返して握手をした。
あ!と、スパーダくんは私の頭に手を伸ばした。


《おまえ、きれいなかみだからあんまりよごさないほうがいいぞ》
《……あ、ありが、とう》


と、生垣をよじ登った時に付いたらしい葉っぱを取ってくれた。


《こんどからは、ここからじゃなくて、あっちのもんからこいよな》
《!うん!》


そう言って、ニコっと笑ってくれた顔が、今でも忘れられない。


――家に帰ったあと、父様に大目玉をくらって2度とベルフォルマ家に行けなくなってしまい、私達が会うことはなくなっていた。
 



§





――あれから、何年か経った末の思いがけない再会だった。
スパーダくんが覚えてないのが少し残念だけれど、それでも、嬉しい。


"運命"って、こういう事をいうのかな。


//2019.05.01
//2021.10.30 加筆修正
 ・ 
[back]