再び







フラフラとした足取りで、やっとの思いで鍛冶場に戻った。


「――名はデュランダル。その名を刀身に刻め」


ああ、新しい家族が出来たんだな。
いつもならどんな家族だろうとそばに駆け寄っていたけれど、今はとてもそんな気になれない。
お父様が新しい家族……デュランダルに話しかけているのを横目に自室へと戻ろうとした。
……けれど、少し、話が気になった。


「私はお前の前に一本の槍を造った。
この世界で最も強い槍となるように、そしてどんなものでも貫くようにと願いながらな。……でもそれは間違いだったのだ」


あの時、確かにお父様はそう願いながらゲイボルグを造った。
でもそれが、間違い?


「……強さとは人を制する事。人を制し、場を制し、時を制する。この“影響力”を強さというのだ」
「……解らぬ。楯を貫き、鎧を砕き、相手の魂を裂く。それが武具の本分ではあるまいか?」
「確かに武具の本分としては正しい。だがそれは所詮武具の優劣に過ぎん、使い手には関係の無い事。
誤った強さを求めた槍は、狂気に目覚めた。
その威力は使い手を血に酔わせ、敵味方の区別なく命を奪うようになる。あの槍は過ちの産物。
『強さ』を履き違えた、愚かな鍛冶師の、愚かな作品なのだ」
「……その槍の名は」

「――魔槍、ゲイボルグですわ」



気付くと、口にしていた。
口を挟むつもりは無かったのに。


「……!エイル!帰っていたのか」
「エイル……?」
「初めまして、えっと……デュランダル。わたしはエイル。ここに住ませてもらっていますの」


……このデュランダルも、戦場へ出たらゲイボルグのように殺戮に目覚めてしまうんじゃないだろうか。
そんな不安がある。


「我は、多くの者を生かすために生まれた。魔槍のようにはならない」
「なっ、!?」


心を……読んだ?


「エイル、頼みがある」
「は、はい……なんですの?」
「“あの時”と同じように……使い手が見つかるまで、手伝ってくれるか?」
「え、ええ、もちろんですわ」


//2019.05.01
//2021.10.30 加筆修正
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