手入れ







ある日、ゲイボルグの時と同様にわたしがデュランダルの手入れをしている時だった。


「……エイル、顔色が優れないようだが」
「大丈夫ですわ、気になさらないでデュランダル」
「睡眠が大事だと聞いた。しっかり寝ているのか、?」


デュランダルは何かとわたしを気にかけてくれる。
……ゲイボルグはそんなこと無かったから、なんだか新鮮な気分だ。


「……まぁ、それなりに寝ていますわ」
「……では食事はどうなのだ」
「もう、これじゃあどっちがお世話しているか分かりませんわね」


言動と行動が不一致すぎますわ、と笑う。
つられて、デュランダルも笑った。
あ、この感じ……懐かしい。


「よし、今日のところはこれでおしまいですわ。次の手入れはまた今度……」


デュランダルを箱に戻し、部屋から去る。
2、3歩離れたところでデュランダルに呼び止められ、振り向くと「ありがとう」と言われた。


「ふふ、どういたしまして」




§





自室に戻り、一息をつく。
……本当は、寝れてなどいない。
毎夜戦場に出ているから。
理由はひとつ―――……ゲイボルグの様子を見に。
あの日の出来事が、忘れられなくて。
嘘だったんだと、わたしが幻覚を見ていただけだったんだと思いたかった。
――でも、戦場に出向いて見る魔槍は間違いなくゲイボルグで。
何度、何度見ても同じだった。
見る度、わたしが彼を止められたらと何度願ったことか。
でもわたしには、そんなチカラはない。
この癒しのチカラも、相手の怪我の傷は治せても気持ちを変えることは出来ない……。
――故に、無力なのだ。わたしは。


「救ってあげられなくてごめんなさい……ゲイボルグ」




//2019.05.01
//2021.10.30 加筆修正
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