始まり







今すぐにでも荷物をまとめて持ってきて欲しい。とアスラ様に申し付けられたので、お父様の元へ一旦戻ることにした。
家に帰るとどうやら話はついていたようで、お父様が手入れセットと少量の荷物を渡してくれた。


「ありがとうございます、お父様」
「……たまには帰ってこいよ」
「ええ。もちろんですわ」


ぽんっとうさぎの姿になり、荷物を背負う。
本来のこの姿の方が走りやすいのだ。


「初めて出会った時、その姿だったな」
「覚えていてくださったのですね。嬉しい限りですわ」


行ってきます、とお父様に背を向けて走り出した。




§





本拠地の城に着くと、門番に止められてしまった。


「貴様、何者だ」
「わたしはエイルです、アスラ様に言われて…」
「エイル様?……失礼しました、お通り下さい」


わたしの名前を出すと、アスラ様が話を通してくれていたようですぐに通してくれた。
そして、アスラ様がいる場所まで案内される。


「……エイルか?」
「はい、エイルですわ。っあ、この姿がいけないのですね。少々お待ちを」


そう言ってぽんっと人間の姿に戻る。


「変身が、出来るのか?」
「ええ。本来は先程の姿なのですけど……色々面倒な事があるのでいつもはこの姿なんです。魔力はそれなりに使うのですけれど」
「そうか、覚えておこう。これからよろしく頼む、エイル」
「はい、こちらこそお世話になりますわ」


こうして、わたしのセンサスでの生活が始まった。


//2019.05.01
//2021.10.30 加筆修正
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