2日目

 2日目。
 
 恐れていたことが起きた。
 
 「あえ……ここは?」
 
 アダナ姉ちゃんが記憶を失った。
 
 様子を見に、アダナ姉ちゃんの部屋にノックをしてから入ったところ、こうだ。
 
 「あなたは?」
 
 「お、俺は小太郎」
 
 「こたろう! わたし、アダナ!」
 
 正直、今までのアダナ姉ちゃんのイメージとは全く違うのでギャップ萌えを感じざるを得ない。
 
 そしてこの年相応の喋り方に素直に萌えを禁じ得ない。
 
 「向こうにまだ仲間がいるんだ。 行こう?」
 
 前日に皆でもしアダナ姉ちゃんが記憶を失っていたらのイメージトレーニングをしておいて良かった。
 
 「うん!」
 
 行こう行こう!と俺の手をギュッと握って催促をする。
 
 うぅわっ……生きてて良かった。
 
 
§

 
 「アダナ姉ちゃ……アダナ、ちょっとここで待っててくれる?」
 
 メインルームの一歩手前でアダナ姉ちゃんを止めた。
 
 一応、先に皆に知らせておかないとね。
 
 「うん!アダナ、まってる!」
 
 いい子だね、と言って頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに微笑んだ。
 
 いつも撫でられる側だから、何だか良い気分。
 
 プシューとメインルームの扉を開けると、既に皆集合していた。
 
 「小太郎、アダナは」
 
 「やっぱり、記憶を失ってた」
 
 ああ……と落胆の声。
 
 「皆の事も忘れてるから自己紹介して欲しいのと、思ってた以上に衝撃的だから心の準備もしておいて」
 
 オッキュー、と皆が言うのを確認して、アダナ姉ちゃんをメインルームに呼び込んだ。
 
 「ほあよー!」
 
 一瞬の静寂。
 
 後に、グァッとかヴッとかグギィとかいう音が聞こえた。
 
 「わたし、アダナ! よろしく!」
 
 それからは、ラッキーから順番に自己紹介をしてもらった。
 
 「舌っ足らずな所を見ると、小太郎よりもずっと若いんじゃない? まずいよ……犯罪だよ……」
 
 本部にはどうやって説明しよう……と司令が震えた。
 
 「アダナ、7歳だよ!」
 
 「10歳くらい若返ってるぅー!」
 
 「ちゃんと喋れるよ!」
 
 「喋れるのかーい!」
 
 ノリは変わらないようだね……とさっき変な音がした腰をさすりながら司令が言う。
 
 「アダナちゃん、お腹が空いたでしょう?朝ごはんにしよう」
 
 「スパーダの料理は美味いぞ!」
 
 「そうなの!?わーい!」
 
 
§

 
 朝ごはんが来るや否や、ぺろりと平らげるアダナ姉ちゃん。
 
 「すーんごく美味しい!スパーダ天才!」
 
 お店やった方が良いよ!と大絶賛。
 
 「あはは、アダナちゃんは僕の料理を初めて食べた時もそう言ってくれたね」
 
 ありがとう、とスパーダがぽんぽんと頭を撫でると、えへへ〜と気の抜けた返事をした。
 
 ……かわいい。
 
 「どうしよう兄貴、俺心臓もたない」
 
 「……同感だ」
 
 「兄貴は犯罪臭しかしないんだけど」
 
 「うるさい、元々の方は俺の方が近かったんだ」
 
 アダナ姉ちゃんが元に戻るまで、あと5日。
 
 兄貴には負けられない、と痛感した日だった。


//2018.06.10[back]