恐れていたことが起きた。
「あえ……ここは?」
アダナ姉ちゃんが記憶を失った。
様子を見に、アダナ姉ちゃんの部屋にノックをしてから入ったところ、こうだ。
「あなたは?」
「お、俺は小太郎」
「こたろう! わたし、アダナ!」
正直、今までのアダナ姉ちゃんのイメージとは全く違うのでギャップ萌えを感じざるを得ない。
そしてこの年相応の喋り方に素直に萌えを禁じ得ない。
「向こうにまだ仲間がいるんだ。 行こう?」
前日に皆でもしアダナ姉ちゃんが記憶を失っていたらのイメージトレーニングをしておいて良かった。
「うん!」
行こう行こう!と俺の手をギュッと握って催促をする。
うぅわっ……生きてて良かった。
§
「アダナ姉ちゃ……アダナ、ちょっとここで待っててくれる?」
メインルームの一歩手前でアダナ姉ちゃんを止めた。
一応、先に皆に知らせておかないとね。
「うん!アダナ、まってる!」
いい子だね、と言って頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに微笑んだ。
いつも撫でられる側だから、何だか良い気分。
プシューとメインルームの扉を開けると、既に皆集合していた。
「小太郎、アダナは」
「やっぱり、記憶を失ってた」
ああ……と落胆の声。
「皆の事も忘れてるから自己紹介して欲しいのと、思ってた以上に衝撃的だから心の準備もしておいて」
オッキュー、と皆が言うのを確認して、アダナ姉ちゃんをメインルームに呼び込んだ。
「ほあよー!」
一瞬の静寂。
後に、グァッとかヴッとかグギィとかいう音が聞こえた。
「わたし、アダナ! よろしく!」
それからは、ラッキーから順番に自己紹介をしてもらった。
「舌っ足らずな所を見ると、小太郎よりもずっと若いんじゃない? まずいよ……犯罪だよ……」
本部にはどうやって説明しよう……と司令が震えた。
「アダナ、7歳だよ!」
「10歳くらい若返ってるぅー!」
「ちゃんと喋れるよ!」
「喋れるのかーい!」
ノリは変わらないようだね……とさっき変な音がした腰をさすりながら司令が言う。
「アダナちゃん、お腹が空いたでしょう?朝ごはんにしよう」
「スパーダの料理は美味いぞ!」
「そうなの!?わーい!」
§
朝ごはんが来るや否や、ぺろりと平らげるアダナ姉ちゃん。
「すーんごく美味しい!スパーダ天才!」
お店やった方が良いよ!と大絶賛。
「あはは、アダナちゃんは僕の料理を初めて食べた時もそう言ってくれたね」
ありがとう、とスパーダがぽんぽんと頭を撫でると、えへへ〜と気の抜けた返事をした。
……かわいい。
「どうしよう兄貴、俺心臓もたない」
「……同感だ」
「兄貴は犯罪臭しかしないんだけど」
「うるさい、元々の方は俺の方が近かったんだ」
アダナ姉ちゃんが元に戻るまで、あと5日。
兄貴には負けられない、と痛感した日だった。
//2018.06.10[back]