慈愛に満ちて


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『きいてないよぉ…………』

「今言ったしな!!んあはは!かあい!」

『かわいくないです……』


「かわいいんよ、きみは」


かわいいとか、そんなの、会ったばかりの人間に何度も言うことじゃないのだ。

それこそ、すき、だなんて。


『でも、私はふわさんについてなんて詳しく知らないし、ふわさんも私について知らないじゃないですか』


混乱して『でも』『だって』を繰り返す私を宥めるように彼は言った。

「これから、しればいいんよ」

『そう、かな』

「そうよ、だからきみも、俺に詳しくなって。俺に君をおしえて。君が甘えるのは、おれがいいよ」

『あ、う……』

そんなこと、言われたのなんて初めてだった。

今後会うことは無いと思ったからこそ、本音を話したのだ。あの日、私は疲れていた。だから、話したのだ。


「んは、まあ突然言われても困るだろうから、連絡は、返してよ。」

『は、い』

「やっちゃあ。ん、じゃあそろそろ帰ろうか」

『いい逃げじゃないの、それ……』

「んはは!!なんとでも!!じゃあまた、連絡するね」


ずるいと、思った。自分だけこんなに困るなんて。照れさせられるなんて。だから。


『あ、の』

「なぁに」

『私が甘えたいと、漏らしたのは、あなたが初めてです、よ』

「は、」

『もう電車乗ってください!!!』

「!!!っくそっ連絡するから!!覚えとけよ!!!あと敬語!!!」

『なんとでも!!』


次の別れは、彼が電車に乗る番だった。

不思議と、嫌ではなかったのだ。

だって、自分が初めて本心をを晒した人。

だから、少し不破さんをからかってみたくて。



前回は、もう二度会うことなんて無いと思った。

だけれど今は、少しの願望と期待で心は埋まって。


多分、約束しなくても、また彼と会うんだろうと、そんな気がした。



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