『え、ええ、急に言われたって……心の準備というものが、あるんだよ……』
「んあはは!!…………だめぇ?出来れば呼び捨てがいいかにゃ〜〜〜なぁんて」
『ぐぅ、』
そ、んな甘い声で言うな!!!なんなんだこの人は本当に。
この人に出会ってから、助けて、助けられて、振り回されて。忙しくてしょうがない。
でもそれが、どうしようもなく楽しかったりもする。
『注文、多くないか……』
「んは、そう?」
『そうだよぉ……』
「はは!!やっぱダメかぁ……」
でも、でも。なんだか彼の言うことは聞きたくなってしまうのだ。自分が押しに弱いということは理解しているけれど、不破さんの言うことは特に。
なんだかんだ、やだやだ言って既に毒されているような気がする。
ああもう、なんだか負けたような気分だけれど。1度しか、言わないんだからね。
『…………み、なと、くん』
呼び捨てはキツかった。言い訳をしよう。でも、呼んであげた。
「エッッ、アッ、スゥ……ぁ、いい、っすねぇ……」
ガタン!と何かが倒れたような音がしてから、戸惑いの声が聞こえた。それから。
この世の全ての甘いものを煮つめたような、声が聞こえて。
『っっっばいばい!!』
電話を切った。逃げたのだ。ついでにLINEもしておこう。「今日いっぱいは返事返しません返せません」
よしこれでいいだろう。
直後からとんでもない速度で通知が飛んできている。きっと不破さんだろうし電源を切ろう。
腰掛けていたソファに顔を下にして横になる。
ああ、だれか、私の顔の熱を、冷ましてはくれないだろうか。
だから、忘れていたのだ。不破さんに何を言おうと思ったのか。何を言いたかったのか。
でも、それに気づくことは、なかった。