慈愛に満ちて


9-1










「ねえ、どうなの〇〇ちゃん!恩人さんのこと好きなんじゃないのぉ?」

『えっ……』

「素直に言った方がいいよお?ほら、どうなのさあ!」

『う、えぇえ…?』




困った。本当に困った。こんなことになるとは。


いまなら知らない怪しい人から急に「時を戻しますか?」と言われても速攻で頷いていた。
時が戻せるなら数十分前の自分に戻って今日は今すぐ家に帰っていたのに。






とりあえず状況を整理したい。
遡ること数分前。私は今日もまた本社に訪れていた。



「あっ〇〇ちゃんじゃーん!」


そこでりりむ先輩と偶然会ったのだ。
そこまでは良かった。そう、そこまでは。



「あってかりりむ、〇〇ちゃんの切り抜き見たの!最近の、恩人さんについて話してるやつ!」

『恩人さん……あ、見てくれたんですね、ありがとうございます』



一瞬誰のことを指しているのか分からなかった。
不破くんは確かに私がコメントを拾った、「恩人さん」がリスナーの中で定着してあれからそう呼ばれていた。



「ねえ、実際恩人さんとはどうなの!?」



……?どういう事だ?

『どうなの、とは?』


「だからあ、付き合ってるの?って!!」


『つ、き!?付き合ってませんよ!!』






「ほんとにぃ?なんもないの?そんなことあって?りりむに詳しく話してよ!」




そして、冒頭に戻る。



「いいむあの話聞いた時、あれだけできゅんきゅんしちゃった!ねえ、本当に何も無いの?」


りりむだったらもう好きになってるね!なんて言っているりりむ先輩。




『…………いや、なんもないですよ、ほんと』

「それは何かある人の言い方じゃん!!」

あ!じゃあ、相手からは何かないの!?と聞いてくる先輩。いや、諦めてくれないのか……



「…………相手からは、好きだと言われ、ました」

『えーっ!!!きゅんきゅんするー!!』


めちゃめちゃ1人で盛り上がってる……





- 29 -

*前次#


目次に戻る