慈愛に満ちて


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まあ、そこからは、お察しの通り。


彼が落ち着いた頃には、もう一本電車は通り過ぎていた。

早く、帰りたいと思ってたんだけどなあ、


『落ち着きました?』

「ぁ、ほんと、すみませ……」

『いえ、大丈夫です』

「ぃや、袋と、水までくれたのに、みんなとか言っちゃったし」

『見られたい人なんて少数だと思うし、いいんですよ』


まあ、まだ電車はこのあとも走っているしこれでよかった、気がする。

とても謝っているし、悪い人ではない、はず。派手だけど。

「はぁ、ほんと、失敗した……」


『……お酒の、失敗ですか?』

少しだけ、自分と関わりのないような人種のことに、興味が湧いた。


さっきまで焦っていて気づかなかったけど、
この人はかなりの香水とお酒の匂いがする。
きっと、夜のお仕事、なんだろうな。

「ぁ、そう、っす。自分ホストやってて、今日は、ちょっと失敗しちゃった、感じ、すね……」


へらっと笑った彼にも、色々な事情があるのだと思った。彼の顔に、疲れたと書いてあるような気もする。
まあ、今吐いてしまったからかも、しれないが……


ホストとは、吐くほどお酒を飲むお仕事なのだろうか。私はホストの知識なんてないから分からないけど、そういうものなのだろうか。



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